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無修正少年効果 ※BL※

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創作BL短編集。徐々にUP予定。
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記事一覧

山賊の女房 ※BL/R18※

山賊の女房 ※BL/R18※

㈠因縁

 十三夜の月下、十一は息を殺した。一帯の笹籔が、山が真っ黒なバケモノじみてざわめく。初めて夜の山に入った日は、小便をちびるかと思った。今はそんなことはない。いや、今でも少しおっかない。けれど、そんなそぶりを見せようものなら、笑われる。斜めまえに相棒の夷虎がいる。風よりも微かにささやく。
「来たぜ」
 じゃん、じゃん、じゃん……どこかできいた鉄の音。月よりも眩しい提灯。二つの灯影が、竹林

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無修正少年 ※BL/R18※

無修正少年 ※BL/R18※

1通目(便所小町)

 月曜日。寒風吹きすさぶグラウンドを三十周走らされるのが嫌で、着替えの野郎連中を尻目に島津は教室を出た。坊主に近い短髪を、ざらりと撫でる。こんなときは便所でタバコでも吸うべ。
 北校舎一階の職員用便所へ行った。そこはめったに人が来ない。念のため、島津はドアを押さえて、様子をうかがった。誰かの荒い息づかい、粘着質に濡れた音。えっ、と思った。あきらかに卑猥な感じの気配なのだ。使用

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浅煎りの恋人 ※BL/R15※

浅煎りの恋人 ※BL/R15※

1杯目(伝書鳩とコーヒー豆)

「アカボシ。ちょっと」
 火曜日、放課後の二年六組の教室。クラス担任の小栗がいった。卓の名字は赤星と清音で、けっしてアカボシではなかった。けれど、卓は訂正しなかった。小栗にまちがわれたのは本日五度目だったので。
「マユズミチカゲ、知ってるよな」
 黛千景。小学校が同じだった。ただ、とくべつ親しかったわけでもなく、顔もうろおぼえだ。肌が浅黒かったような……。
「一応、

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雨は正しき者にも正しからざる者にも ※BL/R18※

雨は正しき者にも正しからざる者にも ※BL/R18※

It Rains for a Right Person and the Who isn`t Right

⒈師走の斜めの雨んなか

 遠雷、冬の雨の第一滴が頬を打った。私は舌打ちする。横浜駅西口からドブ川を越えた繁華街、電線と看板と人波。次第に繁くなる雨に、夕べの通りが傘に華やぐ。傘が、無い。手にしていたはずの傘は、どこへ置いてきたのだろう。先の根岸線の車内か。もう、取り戻せまい。構わない。買い

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死にたがり屋のやり方 ※BL/R18※

死にたがり屋のやり方 ※BL/R18※

⒈片恋

 警報機の音に、くすんだローファーが駆けだす。薄鼠のズボンに、紺のブレザー。晩秋の風に、その手の白いレジ袋ががさがさと鳴る。駅前商店街のはずれの踏切、夕方はいったん遮断機がおりたらあかない。少年の眼前で黒と黄のバーがおりる。少年はいらだったふうにパーマの長髪を掻きあげる。左耳に光るシルバーピアス。
 踏切の内でも、別の少年がバーの通せんぼに遭っている。同じ学校の紺ブレザー、アディダスのシ

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黒山羊は香辛料を処方する ※BL/R15※

黒山羊は香辛料を処方する ※BL/R15※

 父ゆずりの水銀色の髪に、母ゆずりの西地海色の目。そして、ありあまるほどの好奇心。父が市場に行く日を見はからって、ぼくは村を抜けだした。もう半分大人だ、と思っていた。五月、ぼくは十歳で、きみにいわせれば餓鬼だった。
 ぼくの足で山村を三時間も下ったところに、梅拉格蘭納塔の市場はあった。甃につらなる露店は粗末ながら、村にない活気にあふれていた。異国の焼き菓子、山盛りの果実、色とりどりの花々、生きた牛

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