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詩創作

24
掴めない世界
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夏が恋しいのは青が無邪気に明るいからだ

夏が恋しいのは青が無邪気に明るいからだ

夏が恋しいのは青が無邪気に明るいからだ。

全部、大正解だと言ってくれてるような晴朗な眺め。
今までの人生の後悔なんてどこ吹く風。

そうして飛ばされて、
行き着く海と空があの時のこころの全部だった。

沖つ潮風を感じ、心地よさに口元が緩む。

澄んだ瞳で遠く遠くどこまでも遠くを見つめる。
太陽がどこまでも、
ずっと先まで照らしてくれている気がするから。

あの海の向こう、
あの空の向こうから声が

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ゴキゲンな人

ゴキゲンな人

僕はゴキゲン。

今日もゴキゲン。
退屈なんてない、ない、ない。

僕はゴキゲン。

今日もゴキゲン。
後悔なんてない、ない、ない。

僕はゴキゲン。

明日もゴキゲン。
おもしろがるのが上手いのさ。

僕はゴキゲン。

明日もゴキゲン。
人の優しさに気づくのさ。

僕のゴキゲン。

あなたのゴキゲン。

跳ねるうさぎをみて思う。

月のコップ

月のコップ

今日は月の光が手の中によく映っている。

光があるべき場所へ還ってきているように思う。

夕べともなれば恋しき昼間の暖かさ、
過ぎ去った1日の記憶、

それらをマグカップの中のなかの
ココアが想い出させる。

満月は記憶の水面を抱え、
ゆらゆらと揺蕩っている。

月の石でできているこのマグカップは、
その光をさらに受け、きらきらしている。

明日はどんな温かい日にできるだろうか。

そう思って一口

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木漏れ日を躱し裾は振れる

木漏れ日を躱し裾は振れる

何かにつけて言葉にしたがっていた。

思い出す。

「言わぬが花」といえども私は、
その花すらどんな花であったのかを言葉にしたがっていた。

花も、言の葉も同じ水を飲んで育ってるんだからいいと思う、と私はあなたに話した。

するとあなたは、

微笑みながら共感した様子で、
土を一度ほぐしてあげるといいわよ、
と教えてくれた。

それはまるで雨水のごとき私の言葉をぜんぶ吸ってくれるあなたが、
あな

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パノラマ

パノラマ

目を閉じることを忘れていないだろうか。

空。

夜の静けさのなかで、
光の喧騒を追いかけてしまっていないだろうか。

空。

窓の向こうで星空は広がるのに、川は流れるのに、
文字の放つ、
疑いや迷いというものに絆されていないだろうか。

この空の全てを見た人と、
何ひとつも見なかった人は、
どちらが想像力があるのだろうか。

空想に耽けることができるのは、

空を見た人なのか。

空っぽの人なの

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水面のBackSpaceキー

水面のBackSpaceキー

水に指をいれてみる。

指の周りに感じる水。

水の指輪。

皮膚がゆっくりと蚕食されていくように。

体温と同じあたたかさの水。
しばらくすると体に溶けていく。

だから目の前にあるその液体が、
だんだんと自分の裸のように思えてきたのだ。

嘘ひとつつけず震えているのが分かる。

映るのは鼓動で、

しばらくしたら落ち着いた。

柔らかく呼吸するように揺蕩う水面を見ていたら、
瞼が重くなってきた

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僕は先に夜を迎えて

僕は先に夜を迎えて

どんな最期を迎えたいか。
最期を迎えるならどこがいいか。

どこだっていい。

どこでだって白いお花を咲かせられる。

そうやって逝くことができるくらいに、
この世界の彩りを手に掬って生きたい。

きっと僕は先に夜を迎える。
山の上からお月さまを望む。

あなたがちょうど眠りにつくころに、
僕は来世を迎えるのかもしれない。

僕は目覚めたときは白いお花となって——

空が曇った日。

あなたは遅れ

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微笑みの声で全て救われる

微笑みの声で全て救われる

波打ち際。
水にそっと触れた僕を見て、
微笑んだ声がきこえる。

パフェにのったモンブランを、
満足気な顔で頬張る僕を見て、
微笑んだ声がきこえる。

潮風の涼しい縁側、
空咲く大輪に目を丸くしながら振り返る僕を見て、
微笑んだ声がきこえる。

できあがった指輪のことを、
愛おしそうに見つめる僕を見て、
微笑んだ声がきこえる。

心の全てが救われる優しい声。
見つめた先に温もりをとらえているのがわ

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フルニトラゼパム

フルニトラゼパム

肩を並べると泪がでた。
小指が触れると笑みがこぼれた。

そのまま僕らは眠りについた。
夢の中に沈んだ——

限られた命の中でできてしまった、
腐った詩を読み返す。

煤けた一文字、脆い一文字、穢い一文字を、
隣で優しく掬ってくれた。

そしてハンカチで優しく撫でていた。

そうやって目が覚めたとき、
泪がおさまっていた。

肩が温かい。

乾いた光

乾いた光

空気は音に戻り、

あの音を求めている。
色は光に戻り、

あの色を求めている。



鳴り輝いた雷のあくる日。

濡れた地面から溢れる光。
きらきら揺れる。

朝が終われば、
蒸発してしまう光たち。

空気へ還る足音と一緒に。



指先でそっと撫でようとした一筋の光。
乾いた木に響く、6弦の音色。

形も変えずに真っ直ぐ揺れる。
それはなぜ。

耳を潤す。



晴れた夜。
海上の空。

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しらゆりの記憶

しらゆりの記憶

この記憶、萎れることはなくってよ。

珍しく1枚も花びらが落ちることがない日だった。
わたしの心かと思った。

翌朝、
ていねいに椅子が机の下に戻されているのが、ベットから見えた。
あなたの心かと思った。

普段より多い、乾いた食器たちを戸棚に戻すとき、
台所に見えた色たちに潤いがあった。
私の心かと思った。

昨日は落ちることがなかった白百合は、
今朝、1枚散った。
でも床には落ちず、コップの水

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轆轤で奏でるミュージック

轆轤で奏でるミュージック

あなたの指はカートリッジだった。

体温が伝わった柔らかな土がまわり始める。

潤いを与えながら、
あなたの手が回り始めたターンテーブルへ落ちる。

なり始めた音楽は自在な音に聞こえた。
どんな音にもなれるような音が聞こえた。

何かを、誰かを想う手がそれを鳴らしていた。

すぼめたり、広げたり、膨らませたり、
波を打たせたり、リズムをつけたり、ひねったり。

器のかたち、模様が決まる。

抱きし

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僕の声を教えてください。

僕の声を教えてください。

僕は歩く。
ずっと歩く。走ることもない。

足を止めることもない。
同じ歩幅で、同じリズムで。

曲がることも知らない。
一言も発することをせず、
ただ、何もない道に足跡がつく。

この足跡は雨が降ったらどうなる。
いままで僕が歩いてきた道は雨に染まる。

やっと自由だ。

やっとの想い、雨の中で叫ぶ。
雨が降ったら、歌う。歌う。歌う。

歌う目的はひとつだけでいい。
歌う。歌う。

さて、僕の声

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時にかわる人

時にかわる人

寒い日と暑い日と、
代わる代わる。変わる変わる。

おとなしくすわっていようと、
木陰のベンチに想いを馳せる。

ありもしないよ木陰なんて、
あったのは閑寂さだった。

人々の服の摺れる音に耳を澄ませて目を閉じる。

動いている人がいる。

意志を持った人々は、
まじわった川。わかれた川。

長る流る。
しまいには海。

頭の痛み忘れるほど、
きれいな雨が降っていた。

せき止められない、扉こじ開

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