記事一覧
科学記事の誤訳:ショウジョウバエ vs ミバエ
Fruit flyを機械的にミバエって訳すのやめてもらえませんか、という話。
分子生物学の入門書やら新聞記事を読んでいるとたまに、Fruit flyをミバエと訳しているものが目にとまる。このFruit fly、ややこしいことに日本語ではミバエとショウジョウバエという異なる2種に対応している。どちらも果物に群がる小さいハエなのであるが、れっきとした別種であり分類学でもそれなりに離れている。
例え
いんよう!第250回の補足という名の論文紹介
いんよう!の第250回で、曜先輩が上げておられたZygotic Genome Activation (ZGA)の論文。たしかに2022らしからぬ発見でワクワクして論文を読んでみた。
Zygotic genome activation by the totipotency pioneer factor Nr5a2
https://www.science.org/doi/10.1126/scienc
カエルの子は1/4ぐらいカエル
我が子がついこのあいだ3歳になった。3歳ともなるとずいぶんと個性や主張が出てきた。面白いんだけれどこれまでと違う大変さも出てきて、一方的な保護ではなく互いのやりとりの中で育てなければならなくなってきた。
ところで我が子の顔は僕に全然似ていない。妻の子供の頃の写真にそっくりなのである。遺伝学におけるN=1なんて何の意味もなさないのは重々承知の上で、それでもずいぶんと中央値から外れてきたなという印象
時差と同時性の話、あるいは地球が丸いという話。
去る日曜日の未明からアメリカでは夏時間が始まった。時計を1時間早めることで活動中の日照時間を長くするのである。11月まで続くのでどちらかというとこれがデフォルトであり、冬時間が用意されているといった方が自然ではある。広い国土のおかげで国内でも時差があるし、年に二回時計が動くので、つくづく時刻というのが人間の定めたものなのだというのを実感する。日本にいた頃はあまり味わうことのなかった感覚である。
進化学と優生学の話、Coten Radioの感想。
Coten Radioのダーウィン〜優生学の話に関する感想と雑記を書く。
愛聴しているCoten Radioでここ最近は障害の歴史をやっていて、進化と優生学についての回が今週配信された。遺伝学を仕事にしていると進化は必然的に触れざるを得ない分野であり、僕も世間の人よりはそれなりに勉強している。していなければ怒られる。すごい進化ラジオの言うところの進化リテラシーはそれなりにある。そういうバックグラ
生物学的にありえないことはありそうにないという話
生物学的におかしい。生物学的にありえない。常套句である。現実の生物学者以外とフィクションにおける生物学者が使う。時折、マイノリティに対して差別的に使われるのを見たことがある。
生物学的におかしいとはなんなのだろう。生物学に限らず自然科学というのは観察から始まる。見たものを説明するために実験し考察する。ということは目の前にある生物は生物学的におかしくないのである。生物学は観察した生物現象に従属する
ジャーナルクラブのこだわりの話
ほかの領域のことはよく知らないけれど、生物系のラボではだいたい週1程度の頻度で論文紹介、いわゆるジャーナルクラブを持ち回りでやる。新しいめの論文を1本選んで、背景も紹介したりしつつみんなで論文について議論する。基本的には全員が主論文を読んでいる前提で進む。
どういう論文を選ぶかというところに個人の特性が出る。話題重視のひと、自分の関連分野だけを紹介しつづけるひと、果ては自分の仕事の関連で読んだ論
サイエンスコミュニケーションの話。あるいは2022年の反省。
今年は実験中にひたすらゆる言語学ラジオを聴いていた。書き物や読み物中に会話を聴けない質なので、いいポッドキャストがあるとたくさん実験したくなる。論文書きに忙しかったはずの2022年だけれども、たくさんポッドキャストに逃げていたとも言える。スピンオフ企画のゆるコンピュータ科学ラジオは言語学より少し前提がわかるのでこれも楽しい。
言語学やコンピュータ科学を面白おかしく話していくのを聴きながら、いつも
発生/遺伝学者、父になる
妊娠初期とつわりの話
まだ安定期前ではあるものの、妻が妊娠。現在7週目。
妻は絶賛つわりと格闘中。主に吐き気と倦怠感、脱水症状。
日本から妻が取り寄せた育児本には非常に分かりやすく妊娠と胎児の変化が記されていた。現在7週目はマウスでいうところのE14.5を過ぎたあたりだろうか。発生生物学者だった頃にさんざん見てきたE13.5も過ぎ、ほぼヒトの形をしたちいさな生き物が妻の中にいるらしい。
胎児