生物学的にありえないことはありそうにないという話

生物学的におかしい。生物学的にありえない。常套句である。現実の生物学者以外とフィクションにおける生物学者が使う。時折、マイノリティに対して差別的に使われるのを見たことがある。

生物学的におかしいとはなんなのだろう。生物学に限らず自然科学というのは観察から始まる。見たものを説明するために実験し考察する。ということは目の前にある生物は生物学的におかしくないのである。生物学は観察した生物現象に従属する。観察が先、考察が後。生物学的におかしいものというのは今まで観察されたことのない、そして金輪際観察されないことに他ならない。これはけっこう難しい。我々と同系統にならぶ生物、地球上の炭素生物に限って言えば、地球の直径を超えているとか水素原子より小さいとかは生物学的にありえない。とはいえそんな極端な話をしてもしょうがない。100℃を超える熱水鉱床にだって生物はいる。極限環境に耐える多細胞生物だって多く知られている。

宇宙のどこかにいるかもしれない生物を加えるともう話が発散してしまう。結局は生物の定義によるのだけれど、定義をした上で定義から外れたものをあらためて除外する行為に意味があるとは思えない。スタニスワフ・レムの「ソラリス」をぜひ読んでほしい。

生物学的にありえないという意見はつまるところ、目の前の事実から目を逸らしているだけなのだろう。


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