カエルの子は1/4ぐらいカエル

我が子がついこのあいだ3歳になった。3歳ともなるとずいぶんと個性や主張が出てきた。面白いんだけれどこれまでと違う大変さも出てきて、一方的な保護ではなく互いのやりとりの中で育てなければならなくなってきた。

ところで我が子の顔は僕に全然似ていない。妻の子供の頃の写真にそっくりなのである。遺伝学におけるN=1なんて何の意味もなさないのは重々承知の上で、それでもずいぶんと中央値から外れてきたなという印象である。父親の僕から確実に受け継がれたものなんてY染色体ぐらいだ。そんなY染色体なんてリピート配列ばっかりで、機能的な因子なんて性別を決めるSRYぐらいしかないから受け継いだところで大して形質に寄与しない。たまに脱落したりするし。もっとも、Y染色体に生存に重要な遺伝子があったらXXの女性はどうやって生きていくんだという話になるので当たり前なのだけれど、こんなちっぽけな染色体が男系の象徴だというのはなんとも皮肉めいている。天皇の男系を支持する話でY染色体が受け継がれて云々という意見をたまに聞くけれども、こんな飾りみたいな染色体にあなたの信条を託さない方がいいですよとお節介なことを考えてしまう。ミトコンドリアDNAのほうがよっぽど形質に寄与するんじゃないかな。

常染色体だけに限っても、どうせ片方の親から受け継がれるのは半分のゲノムでしかない。大雑把にすべての形質がメンデル形質かつすべてヘテロな遺伝子型だと見なせば、片方の親と子供で共通するような顕性の遺伝型は1/4しかない。残りは潜性になる。もちろん実際のところは量的形質やエピジェネティクス、アレル頻度を考慮しないといけないんだけれど、親子で1/4ぐらい似る、という説明は案外腑に落ちる数字だなと思ってしまう。父親母親から似たところを1/4ずつもらって、あとは両親の表面に出ていなかったものを1/4ずつもらう。親子の遺伝的関係性を大切にしつつも、子供の遺伝的独自性にも光を当てるいいバランスである。

そう思って我が子を改めてじっくり見てみるが... 1/4も似ていない。妻の顔である。脱力したときに口が三角形になるところもそっくりだ。まぁ、くるぶしの形とか腎臓の色なんかが僕に似ているのかもしれない。形質なんて大量にあるのだ。


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