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聖書と信

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聖書はひとを生かすもの、という思いこみだけで、お薦めします。信仰というと引かれそうですが、信頼などの信として、ひとや世界を大切にする思いが、少しでも重なったらステキだな、と思いつ…
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2021年5月の記事一覧

口先と実践のバランスの狭間で

口先と実践のバランスの狭間で

「ジャイアンってひどいよな。のび太をいじめてる。」「そうだな。」
 
言っていることは間違いないとする。しかし、決してジャイアンのそばに近づかないままにこれを言うとなると、「俺は正しいことを言っている」という自負だけが残り、のび太は何の変化もない。のび太を助けよ、と密かに口にしたところで、のび太の情況は何も改善されない。正義の声がいつかジャイアンに響いて、ジャイアンが改心するのを期待しているという

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「殺せ」と命じる神

「殺せ」と命じる神

旧約聖書には、残酷なシーンが多い。新約聖書だと、イエスの十字架の場面だけは厳しいものがあるが、あとは手紙も含めて、比較的平和的である。もちろん、黙示録はまだ酷いものがあるが、旧約聖書の比ではない。旧約聖書はとにかく人を殺すことについての記述が多いし、露骨な表現も多々ある。
 
特に問題とされるのが、主なる神自身が、「殺せ」「滅ぼせ」と命じて迫る場面である。これが並々ならぬほどに次々と出てくる。これ

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たとえ知り尽くせなくても

たとえ知り尽くせなくても

ハンナ・アーレントの『人間の条件』を読書中である。まだこの本全体をどうなどと言うことはできない。ただ、前半のほうで、「私的」と「公的」の概念について詳しく紹介されているところで、教えられるものがあった。
 
と言っても、たんに私が無知だっただけなのだろうとは思うが、はっとしたのだ。その議論を全部ご紹介するつもりはないことをご了承願うが、いわゆる「プライバシー」なる語の原義が「うばわれたもの」から来

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祈ります

祈ります

大阪での新規感染者の増加が著しかったが、その数字が各地方へ飛んでいる模様です(大阪に住む方々が安心できるようになることを願っています、いえ、どこででも)。人の動きがある限り、新型コロナウイルスの感染拡大は、簡単にはなくならないように見えます。
 
大阪では、亡くなる方が多いことで心が痛みます。苦しかったことでしょう。また、その家族な身内の方々の苦悩と悲しみも、想像を絶するものがありましょう。高齢の

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命ある説教であるために

命ある説教であるために

「お説教」となると何か叱られることかと思うが、「説教」だとどうだろうか。キリスト教の礼拝で牧師などが語る話を「説教」と呼ぶ。仏教なら「法話」と呼ばれることが多いだろうか。瀬戸内寂聴さんの『般若心経』というかつてのベストセラーの法話集を最近読んだが、実に面白くて、その法話には説教と通じるところが多々あるように思われてならなかった。いや、これは失礼な言い方である。そもそも「説教」という言葉自体、仏教由

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コロナ禍を乗りこえる心

コロナ禍を乗りこえる心

コロナ禍の中で、聖書は何を叫ぼうとしているだろうか。そんなことを考える。聖書の中にも疫病は幾度か登場する。新旧約全体で66節に登場するが、エレミヤ書とエゼキエル書に多く目立ち、それはむしろこれから悪をなすと疫病で死ぬ、というような呪いめいた言い方のようである。しかし旧約の書のあちこちに出てくる単語であるから、古来人類を悩ませるもの、好ましからざるものとして、人間がしかも太刀打ちできないものとして捉

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