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本とのつきあい

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本に埋もれて生きています。2900冊くらいは書評という形で記録に残しているので、ちびちびとご覧になれるように配備していきます。でもあまりに鮮度のなくなったものはご勘弁。
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#現代思想

『現代思想04 2024vol.52-5 特集・<子ども>を考える』(青土社)

『現代思想04 2024vol.52-5 特集・<子ども>を考える』(青土社)

曲がりなりにも教育を生業としている以上、「子ども」が特集されたら、読まねばなるまい。「現代思想」は、多くの論者の声を集め、内容的にも水準が高い。そして同じことを何人もが述べるのではなく、多角的な視点を紹介してくれる。「こどもの日」ということで、こどもへ眼差しを向けてみよう。
 
確かに多角的だった。全般的な対談に続いては、「家族」「法律」「制度」「学び」「未来」といった概略に沿った形で、論述が進ん

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『現代思想 10 2023 vol.51-12 特集 スピリチュアリティの現在』(青土社)

『現代思想 10 2023 vol.51-12 特集 スピリチュアリティの現在』(青土社)

時折購入する「現代思想」。多くの人が文章を連ねている。ずいぶんと思い切った論調も好きだ。なにより、世の中のメジャーな宣伝では運ばれてこない、だが非常に重要な視点を提供してくれるところが気に入っている。今回も、特集の「スピリチュアリティ」に惹かれて購入したが、執筆者の中には「占星術研究家」なる人もいて、しかもその文章が非常に面白かった。
 
オーソドックスに、スピリチュアリティについての背景や歴史を

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『現代思想2023vol.51-10 9月臨時増刊号 総特集 関東大震災100年』(青土社)

『現代思想2023vol.51-10 9月臨時増刊号 総特集 関東大震災100年』(青土社)

1923年9月1日の正午1分半前、推定神奈川県を震央とする巨大地震が発生。関東全般を呑み込み、犠牲者は、これも推定であるが、10万人以上であったといわれる。このため、いまもなお「防災の日」は、この9月1日に定められている。
 
2023年は、それから百年の記念すべき年である。直接知る人は殆どいないけれども、この震災は、大きな意義をもって見つめられている。その後「震災」と呼ぶものとしては、阪神淡路大

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『現代思想2023vol.51-5 総特集 鷲田清一』(青土社)

『現代思想2023vol.51-5 総特集 鷲田清一』(青土社)

失礼だが、これだけ大きな特集をされるとなると、まさか亡くなられたのでは、と錯覚しそうだった。現代の哲学者としての第一人者であり、大阪大学総長まで務めるという教育者であり経営者でもあった。現象学を学び、それを「現場」で生かす「臨床哲学」という分野をもたらした。とくにファッションというものを哲学から読み取り、またそうした必要性を哲学のために生かした功績は大きい。文章の巧さも光っており、論文もなんだか「

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『現代思想2022年8月 vol.50-10 特集・哲学のつくり方』(青土社)

『現代思想2022年8月 vol.50-10 特集・哲学のつくり方』(青土社)

面白かった。そもそも哲学とは何か。そんなベタなことを問う企画が、近年殆ど見られなかった。あるのは、100年前に生まれたような方々の、真面目な人生論が問いかけて、哲学とは、と語るようなものばかりだった。ポストモダンすら歴史的産物となったような中で、もはやかつての哲学などという姿とは無縁な思想状況となっているようだ。互いに通じない言語を用いてあれこれ論評するかのようなものが、なんだかファッショナブルに

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『現代思想2020年11月号 特集・ワクチンを考える』(青土社)

『現代思想2020年11月号 特集・ワクチンを考える』(青土社)

様々な論者が力のこもった文章を載せてくれる「現代思想」、テーマに関心が強ければ時々買うことにしている。新型コロナウイルスの感染拡大の年の秋に編まれたそのテーマは、ズバリ「ワクチン」。その後、ワクチンが供給され始めた頃に私がこれを読みたいと思い、手配した。が、実はこの編集がなされたときには、ワクチンが本当に接種されるのかどうか、未定だったのだ。それは常識的にはそうである。あまりにも治験期間が短すぎる

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自由意志

自由意志

「現代思想」という月刊誌があって、毎回ひとつのテーマを特集して、それに関して様々な論者にその分野から論じた文章を集めている。先頃の特集は「自由意志」であった。
 
カントを少しでも学んだ者としては、これは聞き捨てならないテーマである。これが内としたら、カント哲学はすべて崩壊する。自由意志論があるとすると、反対するのは決定論というところであろうか。
 
この特集には、副題がついていた。「脳と心をめぐ

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『現代思想2021 vol.49-4 教育の分岐点』(青土社)

『現代思想2021 vol.49-4 教育の分岐点』(青土社)

共通テストや35人学級というふうに大きく変化を見た昨今の教育界。さらに、2020年春からの新型コロナウイルスの感染拡大に伴う一斉休校という、前代未聞の事態を経験して、教育の現場はどうなっているのか。一種の雑誌であるから、全体としてまとまりがあるわけではないが、多岐にわたる声が集められる。特別な主張を手を変え品を変え出してくるのではないが、編集の方針というものはあるだろうから、一定の方向性を保ちつつ

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