松本脩

短編小説を投稿します。 納得いくものを作りたい、ただそれだけ。

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記事一覧

コンビニの駐車場

仕事柄、お昼時にコンビニに立ち寄ることが多い。 平日の12時台のコンビニは駐車場の取り合いだ。 田舎になればなるほどこの傾向が強いようで、郊外の取引先に出向くつい…

松本脩
5日前
20

心に巣食う悪魔

人生の中のいくつかのタイミングで魔が差してしまうことが何度かあった。 小学校の冬休み。友人の家に集まって、ニンテインドー64の大乱闘スマッシュブラザーズを遊んで…

松本脩
6か月前
29

瞬間移動の平和的利用方法

ここは魔法と剣のファンタジー世界。 青年アレフは神託を受け、瞬間移動のスキルを得た。瞬間移動は2種類存在し、自分が思い描いた土地に移動する能力と、術者に危険が迫る…

松本脩
11か月前
48

夏祭り花火大会

「だぁーーーーーー」 「どうしたんだよ、壊れた自動販売機みたいな声出して」 「いや・・・長くないっすか?夏休み」 「そりゃ夏休みだからな」 「暇なんすよ、めちゃくち…

松本脩
11か月前
57

蝉の遠吠え

「いやぁ〜・・・今日も暑かったな」 「暑かったですね。見てください、Tシャツびしょびしょ」 「着替え持ってきといて正解だったな。牧田なんて途中からTシャツ脱いでやっ…

松本脩
11か月前
38

アングラの王子様

彼と初めて会ったのは大学の講義室だった。 初めて会ったといっても遠巻きに彼を見ているだけだった。 「あれが今井ホールディングスの御曹司?結構イケメンじゃん」 「ち…

松本脩
1年前
53

雨と路地裏と少女 2

なかなか立ち去らない少女に痺れを切らせた俺は言った。 「お前がそこにいたら、ここに隠れてるのがバレちまう。さっさとよそへ行ってくれ」 俺の言葉に少女は頬を膨らま…

松本脩
1年前
33

【業務連絡】創作大賞

今年は創作大賞に応募しようと思ってます。 と、計画的な雰囲気を醸し出していますが、創作大賞の存在を昨日知りました。 それで急いで何か創作しようかと思ったのですが…

松本脩
1年前
45

雨と路地裏と少女

朝から振り続けている雨がコートを濡らした。 傘を持たずに飛び出してきたのは、それどころではなかったからだ。 路地裏の隅にかがみ込んで脱いだコートを頭から被った。 …

松本脩
1年前
43

【随筆】モーニングルーティン

3月下旬から続いている平日のモーニングルーティンがある。 6:30に起床。 トレーニングウェアに着替えて部屋を飛び出し、近所を3kmほどランニングをする。 家に帰るとシャ…

松本脩
1年前
45

デッドオアライト 26

それから久代は、白木、三島哲也の助けもあり、徐々に記者として名を上げていった。 久代の独自ルートの情報網は久代ルートとも呼ばれ、その情報の出どころは業界で話題に…

松本脩
1年前
45

デッドオアライト 25

久代の言葉に二人は黙り込んでしまった。 テーブルの上のチョコレートパフェがゆっくりと溶けていくのを久代はじっと見つめている。 店内には流行りのJ-POPが流れていて、…

松本脩
1年前
47

デッドオアライト 24

「どうされましたか・・・?」 しばらく無言で考え込んでいた久代を心配した白木が声をかけた。 久代は我に帰って白木と三島哲也の方を見る。 2人とも心配そうに顔色を伺…

松本脩
1年前
37

【随筆】筆が進まない

お気づきの方も多いと思うが、デッドオアライト の執筆が行き詰まっている。 緊迫感のあるサスペンスもののラストだけあって、締めくくりが難しい。 自由に描けばいいと…

松本脩
1年前
58

デッドオアライト 23

黙り込んだ三島哲也の横で、今度は白木が何かに気が付いたような顔で言った。 「でも、奴らと取引できたんだったら、なんで俺達だけを助けたんですか?これから誰も殺さな…

松本脩
1年前
34

デッドオアライト 22

「奴らの手口は三島さんの言った通りです。そして、僕はこの事実を知った時、奴らの行動を止めることがいかに難しいかを理解しました」 「え・・・?久代さんは記者なんで…

松本脩
1年前
36
コンビニの駐車場

コンビニの駐車場

仕事柄、お昼時にコンビニに立ち寄ることが多い。

平日の12時台のコンビニは駐車場の取り合いだ。

田舎になればなるほどこの傾向が強いようで、郊外の取引先に出向くついでに立ち寄ったコンビニもほぼ満車状態だった。

かろうじて一台の駐車場スペースを見つけ、駐車の体制に入った瞬間、すごいスピードでコンビニに入ってきた車がその枠を占領したのである。

唖然、呆然といった具合で口を開けていると、車内からも

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心に巣食う悪魔

心に巣食う悪魔

人生の中のいくつかのタイミングで魔が差してしまうことが何度かあった。

小学校の冬休み。友人の家に集まって、ニンテインドー64の大乱闘スマッシュブラザーズを遊んでいたときのことだ。友達の家にはコントローラーが2個しかないから、それぞれ自宅からコントローラーを持ち寄った。その日友人の家には私を含め5人の男児が集まった。ゲームは4人対戦まで可能なもので、当然、1人余る。4人が対戦している時には1人はそ

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瞬間移動の平和的利用方法

瞬間移動の平和的利用方法

ここは魔法と剣のファンタジー世界。
青年アレフは神託を受け、瞬間移動のスキルを得た。瞬間移動は2種類存在し、自分が思い描いた土地に移動する能力と、術者に危険が迫ると自動的に回避する能力があった。その日アレフはどちらの能力も手にしたのだった。

能力の有効活用について一晩考えたアレフは立ち上がり、とある場所へと瞬間移動した。
「え?ちょ、人間?」
魔王の城の最新部、魔王の間である。
突然現れた人間に

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夏祭り花火大会

夏祭り花火大会

「だぁーーーーーー」
「どうしたんだよ、壊れた自動販売機みたいな声出して」
「いや・・・長くないっすか?夏休み」
「そりゃ夏休みだからな」
「暇なんすよ、めちゃくちゃ」
「暇って言ってもお前、練習があるだろ」
「練習、練習、練習・・・・・・俺らの青春それだけすか」
「まあ、そう言うな。ほれ、あれ見ろ」

先輩が部室に貼られたポスターを指差す。

「夏祭り花火大会・・・」
「そう、この町のビッグイベ

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蝉の遠吠え

蝉の遠吠え

「いやぁ〜・・・今日も暑かったな」
「暑かったですね。見てください、Tシャツびしょびしょ」
「着替え持ってきといて正解だったな。牧田なんて途中からTシャツ脱いでやってただろ?あれ接触する時嫌なんだよ」
「わかります。汗がダイレクトに当たってヌメってなるやつ」
「そうそうそう。マジでやめて欲しいわ、あれ」

先輩がボディシートを後輩に差し出す。

「あざす」
「なんか思い出したらサブイボ立ってきたわ

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アングラの王子様

アングラの王子様

彼と初めて会ったのは大学の講義室だった。
初めて会ったといっても遠巻きに彼を見ているだけだった。

「あれが今井ホールディングスの御曹司?結構イケメンじゃん」
「ちょっとユミ!聞こえるよ」

ユミは大学内の情報に精通している。
新入生なのにこのサークルの先輩がカッコイイだとか、学食には裏メニューがあるだとか、ありとあらゆる噂を取り揃えていた。
いろんなサークルの新歓コンパを渡り歩いて情報収集してい

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雨と路地裏と少女 2

雨と路地裏と少女 2

なかなか立ち去らない少女に痺れを切らせた俺は言った。

「お前がそこにいたら、ここに隠れてるのがバレちまう。さっさとよそへ行ってくれ」

俺の言葉に少女は頬を膨らませる。

「・・・いかない」

4〜5歳だろうか。
普段子供と接する機会がないので細かい年齢は分からない。
この年頃の娘の聞き分けの悪さに舌打ちしたくなるのを堪えて聞いた。

「なんでだ?」

少女は頭を振った。
聞いておきながら「しま

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【業務連絡】創作大賞

今年は創作大賞に応募しようと思ってます。

と、計画的な雰囲気を醸し出していますが、創作大賞の存在を昨日知りました。

それで急いで何か創作しようかと思ったのですが、創作大賞にもジャンルがあるようですね。

私が書く作品には、あんまり当てはまらないものばかり。

今、書き始めたものも何のジャンルになるのやら・・・。

しかし、募集要項をよくよく読んでみると、過去の作品の再投稿でもいいと書いてるでは

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雨と路地裏と少女

雨と路地裏と少女

朝から振り続けている雨がコートを濡らした。
傘を持たずに飛び出してきたのは、それどころではなかったからだ。
路地裏の隅にかがみ込んで脱いだコートを頭から被った。
降り注ぐ雨がゆっくりとコートに染み込んでいく。
水滴が額から頬を伝い、汗と混じり気持ちが悪い。
サイレンの音が鳴り響く。
すぐ近くに警察がいるらしい。
ここがバレるのも時間の問題だ。
懐に忍ばせた拳銃を手に取る。
拳銃には一発分の銃弾が仕

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【随筆】モーニングルーティン

3月下旬から続いている平日のモーニングルーティンがある。

6:30に起床。
トレーニングウェアに着替えて部屋を飛び出し、近所を3kmほどランニングをする。
家に帰るとシャワーを浴び、朝食をとる。
それからコーヒーを淹れ、読書。
客観的に見て、優雅な朝である。

8:00ぐらいになると自転車を漕いで会社に向かう。
自転車は渋滞なんて関係ないので気楽なものだ。

思えば私は、何かそういう習慣のような

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デッドオアライト 26

デッドオアライト 26

それから久代は、白木、三島哲也の助けもあり、徐々に記者として名を上げていった。
久代の独自ルートの情報網は久代ルートとも呼ばれ、その情報の出どころは業界で話題になるほどだった。
久代はハッカーだが、ハッキングで手にした情報は記事には書かない。
白木、三島哲也から入手した生きた情報は、時にユーモアに溢れ、時に時代の先を行く内容だった。

白木も芸人として順調に人気を伸ばしていた。
M-1の準決勝で惜

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デッドオアライト 25

デッドオアライト 25

久代の言葉に二人は黙り込んでしまった。
テーブルの上のチョコレートパフェがゆっくりと溶けていくのを久代はじっと見つめている。
店内には流行りのJ-POPが流れていて、斜向かいに座っているカップルがその曲が起用されているドラマの話をしている。
それに対していい歳をした男三人が雁首揃えて無言で考え込んでいる様は、どこから見ても異様だった。
三島哲也は溶けてしまったチョコレートパフェをスプーンですくった

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デッドオアライト 24

デッドオアライト 24

「どうされましたか・・・?」

しばらく無言で考え込んでいた久代を心配した白木が声をかけた。
久代は我に帰って白木と三島哲也の方を見る。
2人とも心配そうに顔色を伺っている。

「あの、答えにくいことだったら別に答えなくても大丈夫ですから。久代さんにも何か事情があってのことだったんでしょうし」
「いえ・・・少し考えごとをしてしまっただけです。白木さんのご指摘通り、僕は奴らに今後一切、誰も殺さないよ

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【随筆】筆が進まない

【随筆】筆が進まない

お気づきの方も多いと思うが、デッドオアライト の執筆が行き詰まっている。

緊迫感のあるサスペンスもののラストだけあって、締めくくりが難しい。

自由に描けばいいというのが、私の性分だが、なんだか詰将棋みたいにロジックが絡み合って雁字搦めになっている。

そのロジックについては自分の中で出来上がっているものの、それを説明するのが難しい。

というか、小説で説明すること自体ナンセンスなんじゃない?な

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デッドオアライト 23

デッドオアライト 23

黙り込んだ三島哲也の横で、今度は白木が何かに気が付いたような顔で言った。

「でも、奴らと取引できたんだったら、なんで俺達だけを助けたんですか?これから誰も殺さないように忠告することもできたはずじゃ・・・」

白木の言葉に久代は目を見開いた。
三島哲也もまた、はっとした顔をしている。
白木は、予期せず核心をついていた。

久代は顎に手を当てて、返す言葉を選んだ。
もちろん、白木が言ったことも考えな

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デッドオアライト 22

デッドオアライト 22

「奴らの手口は三島さんの言った通りです。そして、僕はこの事実を知った時、奴らの行動を止めることがいかに難しいかを理解しました」
「え・・・?久代さんは記者なんですから確かな情報を集めて発表したらいいんじゃないですか?」

白木の指摘に久代は首を振った。

「もちろんそれも考えましたが、どうも気が咎めましてね。第一、そんな情報、週刊誌が発表したとして、信じる人がどれぐらいいるのかわかりません。それに

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