松本脩

短編小説を投稿します。 納得いくものを作りたい、ただそれだけ。

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最近の記事

心に巣食う悪魔

人生の中のいくつかのタイミングで魔が差してしまうことが何度かあった。 小学校の冬休み。友人の家に集まって、ニンテインドー64の大乱闘スマッシュブラザーズを遊んでいたときのことだ。友達の家にはコントローラーが2個しかないから、それぞれ自宅からコントローラーを持ち寄った。その日友人の家には私を含め5人の男児が集まった。ゲームは4人対戦まで可能なもので、当然、1人余る。4人が対戦している時には1人はそれを観戦しており、4人のうち最下位だった者が観ていた1人と入れ替わる。そのような

    • 瞬間移動の平和的利用方法

      ここは魔法と剣のファンタジー世界。 青年アレフは神託を受け、瞬間移動のスキルを得た。瞬間移動は2種類存在し、自分が思い描いた土地に移動する能力と、術者に危険が迫ると自動的に回避する能力があった。その日アレフはどちらの能力も手にしたのだった。 能力の有効活用について一晩考えたアレフは立ち上がり、とある場所へと瞬間移動した。 「え?ちょ、人間?」 魔王の城の最新部、魔王の間である。 突然現れた人間に魔王は驚きを隠せない様子だ。 「ふいに現れて申し訳ございません。人間のアレフです

      • 夏祭り花火大会

        「だぁーーーーーー」 「どうしたんだよ、壊れた自動販売機みたいな声出して」 「いや・・・長くないっすか?夏休み」 「そりゃ夏休みだからな」 「暇なんすよ、めちゃくちゃ」 「暇って言ってもお前、練習があるだろ」 「練習、練習、練習・・・・・・俺らの青春それだけすか」 「まあ、そう言うな。ほれ、あれ見ろ」 先輩が部室に貼られたポスターを指差す。 「夏祭り花火大会・・・」 「そう、この町のビッグイベントだ」 「夏祭り花火大会・・・・」 「どうした?」 後輩は顎に手を当てて考え

        • 蝉の遠吠え

          「いやぁ〜・・・今日も暑かったな」 「暑かったですね。見てください、Tシャツびしょびしょ」 「着替え持ってきといて正解だったな。牧田なんて途中からTシャツ脱いでやってただろ?あれ接触する時嫌なんだよ」 「わかります。汗がダイレクトに当たってヌメってなるやつ」 「そうそうそう。マジでやめて欲しいわ、あれ」 先輩がボディシートを後輩に差し出す。 「あざす」 「なんか思い出したらサブイボ立ってきたわ」 腕を入念に拭いている先輩を見ながら、後輩の手が止まる。 「どした?」 「

        心に巣食う悪魔

          アングラの王子様

          彼と初めて会ったのは大学の講義室だった。 初めて会ったといっても遠巻きに彼を見ているだけだった。 「あれが今井ホールディングスの御曹司?結構イケメンじゃん」 「ちょっとユミ!聞こえるよ」 ユミは大学内の情報に精通している。 新入生なのにこのサークルの先輩がカッコイイだとか、学食には裏メニューがあるだとか、ありとあらゆる噂を取り揃えていた。 いろんなサークルの新歓コンパを渡り歩いて情報収集しているらしい。 「玉の輿を狙って多くの女子生徒が彼の周りを取り巻いているって噂、本

          アングラの王子様

          雨と路地裏と少女 2

          なかなか立ち去らない少女に痺れを切らせた俺は言った。 「お前がそこにいたら、ここに隠れてるのがバレちまう。さっさとよそへ行ってくれ」 俺の言葉に少女は頬を膨らませる。 「・・・いかない」 4〜5歳だろうか。 普段子供と接する機会がないので細かい年齢は分からない。 この年頃の娘の聞き分けの悪さに舌打ちしたくなるのを堪えて聞いた。 「なんでだ?」 少女は頭を振った。 聞いておきながら「しまった」と思う。 どうせこの年頃の小娘の行動・言動に理由などないのだ。 その理由を

          雨と路地裏と少女 2

          【業務連絡】創作大賞

          今年は創作大賞に応募しようと思ってます。 と、計画的な雰囲気を醸し出していますが、創作大賞の存在を昨日知りました。 それで急いで何か創作しようかと思ったのですが、創作大賞にもジャンルがあるようですね。 私が書く作品には、あんまり当てはまらないものばかり。 今、書き始めたものも何のジャンルになるのやら・・・。 しかし、募集要項をよくよく読んでみると、過去の作品の再投稿でもいいと書いてるではありませんか。 それならば、と。 アングラの王子様を#恋愛小説部門で再投稿し

          【業務連絡】創作大賞

          雨と路地裏と少女

          朝から振り続けている雨がコートを濡らした。 傘を持たずに飛び出してきたのは、それどころではなかったからだ。 路地裏の隅にかがみ込んで脱いだコートを頭から被った。 降り注ぐ雨がゆっくりとコートに染み込んでいく。 水滴が額から頬を伝い、汗と混じり気持ちが悪い。 サイレンの音が鳴り響く。 すぐ近くに警察がいるらしい。 ここがバレるのも時間の問題だ。 懐に忍ばせた拳銃を手に取る。 拳銃には一発分の銃弾が仕込まれている。 コートの隙間から外を覗き見る。 ここに警察が入ってきたらまずいだ

          雨と路地裏と少女

          【随筆】モーニングルーティン

          3月下旬から続いている平日のモーニングルーティンがある。 6:30に起床。 トレーニングウェアに着替えて部屋を飛び出し、近所を3kmほどランニングをする。 家に帰るとシャワーを浴び、朝食をとる。 それからコーヒーを淹れ、読書。 客観的に見て、優雅な朝である。 8:00ぐらいになると自転車を漕いで会社に向かう。 自転車は渋滞なんて関係ないので気楽なものだ。 思えば私は、何かそういう習慣のようなものをいきなり始めることが多い。 noteに小説を書き始めたのもそうだ。 星新一

          【随筆】モーニングルーティン

          デッドオアライト 26

          それから久代は、白木、三島哲也の助けもあり、徐々に記者として名を上げていった。 久代の独自ルートの情報網は久代ルートとも呼ばれ、その情報の出どころは業界で話題になるほどだった。 久代はハッカーだが、ハッキングで手にした情報は記事には書かない。 白木、三島哲也から入手した生きた情報は、時にユーモアに溢れ、時に時代の先を行く内容だった。 白木も芸人として順調に人気を伸ばしていた。 M-1の準決勝で惜しくも敗退するも、敗者復活戦を勝ち抜き話題となった。 決勝では滝が緊張の余りネタ

          デッドオアライト 26

          デッドオアライト 25

          久代の言葉に二人は黙り込んでしまった。 テーブルの上のチョコレートパフェがゆっくりと溶けていくのを久代はじっと見つめている。 店内には流行りのJ-POPが流れていて、斜向かいに座っているカップルがその曲が起用されているドラマの話をしている。 それに対していい歳をした男三人が雁首揃えて無言で考え込んでいる様は、どこから見ても異様だった。 三島哲也は溶けてしまったチョコレートパフェをスプーンですくったが、口に運ばずぐちゃぐちゃとかき混ぜながら弄んでいる。 まるでそのパフェの中に、

          デッドオアライト 25

          デッドオアライト 24

          「どうされましたか・・・?」 しばらく無言で考え込んでいた久代を心配した白木が声をかけた。 久代は我に帰って白木と三島哲也の方を見る。 2人とも心配そうに顔色を伺っている。 「あの、答えにくいことだったら別に答えなくても大丈夫ですから。久代さんにも何か事情があってのことだったんでしょうし」 「いえ・・・少し考えごとをしてしまっただけです。白木さんのご指摘通り、僕は奴らに今後一切、誰も殺さないように釘を刺すことはできました。しかし、それはあえてしなかったんです」 「どうして

          デッドオアライト 24

          【随筆】筆が進まない

          お気づきの方も多いと思うが、デッドオアライト の執筆が行き詰まっている。 緊迫感のあるサスペンスもののラストだけあって、締めくくりが難しい。 自由に描けばいいというのが、私の性分だが、なんだか詰将棋みたいにロジックが絡み合って雁字搦めになっている。 そのロジックについては自分の中で出来上がっているものの、それを説明するのが難しい。 というか、小説で説明すること自体ナンセンスなんじゃない?なんて思ったりと、いろんな葛藤の末、先延ばし先延ばしである。 先延ばしたからには

          【随筆】筆が進まない

          デッドオアライト 23

          黙り込んだ三島哲也の横で、今度は白木が何かに気が付いたような顔で言った。 「でも、奴らと取引できたんだったら、なんで俺達だけを助けたんですか?これから誰も殺さないように忠告することもできたはずじゃ・・・」 白木の言葉に久代は目を見開いた。 三島哲也もまた、はっとした顔をしている。 白木は、予期せず核心をついていた。 久代は顎に手を当てて、返す言葉を選んだ。 もちろん、白木が言ったことも考えなかったわけではない。 今後一切、悪事を働かないように忠告することで救える命は確か

          デッドオアライト 23

          デッドオアライト 22

          「奴らの手口は三島さんの言った通りです。そして、僕はこの事実を知った時、奴らの行動を止めることがいかに難しいかを理解しました」 「え・・・?久代さんは記者なんですから確かな情報を集めて発表したらいいんじゃないですか?」 白木の指摘に久代は首を振った。 「もちろんそれも考えましたが、どうも気が咎めましてね。第一、そんな情報、週刊誌が発表したとして、信じる人がどれぐらいいるのかわかりません。それに真偽を確かめようにも、亡くなった権力者の血液等の情報をすり替えられていたら元も子

          デッドオアライト 22

          デッドオアライト 21

          「複数犯・・・ということですか?」 医者の殺し屋は集団だという久代の仮説に三島哲也は意図を図りかねていた。 「だとしても、殺し屋が何人かいるってことでしょ?どうして殺し屋がいないなんてことになるんです?」 白木も三島哲也に続いて質問した。 2人の質問に久代はゆっくりと頷いて言った。 「そう・・・僕も当初、そう思いました。じゃあ、浮かび上がった一人の医師の名前は何なのか・・・それが疑問に残ります。どの権力者が亡くなったときのも同じ名前の医者が診察をしているという問題です

          デッドオアライト 21