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成長実感がなくなったから転職したいって考えるのはダメですか?~何がしたいのかわからないから次の職場を決められない25歳(アユミ)の悩み①~

こんにちは。株式会社シンシア・ハートで代表取締役をしている堀内猛志(takenoko1220)です。

新人の頃は伸びしろに溢れているので何をしても成長はするし、自身の中でも成長実感を得やすいものです。ただし、経験をすればするほど成長曲線はゆるやかになり、成長のための壁は高くなります。当然、成長実感を得ることも少なくなるのですが、これは誰にでも訪れる成長の踊り場です。

しかし、成長実感がないということで、今の業務に向き合うよりも、次の成長実感を得られる場を求めてすぐに転職をしたくなる若者が増えていると感じます。

今回はそんな若者の話です。


25歳女性(アユミ)のキャリア

アユミは幼少期から活発な女の子だった。中高ではバスケットボール部でキャプテンを務め、大学でもバスケサークルの活動に勤しんでいた。

いわゆる体育会系のノリが好きで、そのノリを仕事にも求めて就活を行った。最初は大手企業にエントリーシートを出していたが、中堅大学のアユミはなかなか書類で合格することができず、また、たまに合格する企業の説明会や面接では、アユミの求めるバイブスを面接官に感じずにいた。

そんな折に参加したベンチャー企業A社の説明会では今までに違うものを感じた。大手企業と違い、すごく若い人たちが説明会を盛り上げていた。何よりも司会の女性の巧みな話術に心を奪われた。その女性が新卒入社3年目と聞いてより惹かれた。私もあんな風に人前で堂々と自身の仕事について話せるようになりたい。アユミはA社の選考にエントリーした。

ノリを大事にするアユミは、説明会の印象だけでA社を第一志望に認定した。A社はIT系人材を専門とする人材エージェントだった。A社を受けるまでは人材業界に全く興味を示さなかったアユミだが、印象から入ったアユミは説明会の内容を聞いて「人材業界いいじゃん!」「自分は人材業界が合っているかも!」と盲目的に意欲が上がっていた。

火がついたアユミの勢いは止まらない。

「もともと人が好きだし、人の人生に大事な転職に関われるのが素敵!自分も就活を始めるときに人生に悩んだから、そういう人のサポートをできるのってめっちゃいい!そう思わない?」

そんなことを友人にも伝え、A社が第一志望であることを公言していた。

A社は設立10年目のベンチャー企業で、エンジニアの集客に長けていたことから破竹の勢いで売り上げを伸ばしていた。最近ではテレビCMにも出稿し世間の認知度も上がっていた。採用数も年々増やしていて、来年度の新卒採用は100名を予定していた。

A社にとっても体育会系の根性と人の懐に入れるキャラクターを持つアユミは欲しい人物像だった。とんとん拍子に選考は進み、大学4年生の4月下旬にはアユミは内定を獲得した。

GW中に実家に帰省し親にA社に行くことを報告した。両親は6月の大手企業の選考を終えてからでもいいのではないかとアユミを説得した。特に母親は安定企業に行って欲しいという強い想いがあったが、幼少期から頑固なアユミの勢いに負けかけていたところ、たまたま流れたA社のテレビCMを見たことで承認した。テレビCMを出せるレベルの企業なのだから大丈夫だろうー。

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それから3年が経った。アユミは入社後2年間でリクルーティングアドバイザーとして成長していた。

最初はITの用語を覚えることやエンジニアという人種の価値観やタイプを理解することに苦労したが、座学の新人研修が終わりOJTが始まり、実際にクライアントや候補者と話すようになってからは楽しくなってきた。

読み書きで覚えるよりも、実際にやってみて身体で覚えるのがアユミである。自分でもそれが感覚的にわかっていたので同期よりもひたすら量をこなそうと努力をした。そのひたむきな姿勢にクライアントからも好感を持たれ、特にアユミと同じ体育会系の年配の人事担当者に気に入られることが多かった。

担当企業にも恵まれた。先輩から引き継いだ大手SierのB社が大量採用を行い、経験の浅いエンジニアでも大量に採用してくれた。B社の貢献があり、アユミは新人ながら何度も月間MVPを獲得することができた。

どんどん仕事が楽しくなってきたアユミ。しかし、3年目の5月を迎えたアユミは考え始めていた。

・仕事は楽しいし会社のメンバーも大好きだ
・しかし、1年目から2年目にかけて感じていた成長実感が今はない
・顧客の企業規模によって部署が分けられていることや、リクルーティングアドバイザーとキャリアカウンセラーに業務が分かれていることが原因かもしれない。もっと広く、深く、お客様に向き合いたい
・業務のオペレーションが徹底的に磨かれていることも原因の一つかもしれない。もっと自由にやれた方が社員は自分らしく働けるのではないか
・成長実感がないことを上司に相談したらマネージャーを目指すといいと言われた。自分は現場の方が向いていると思うし、A社にいると今後のキャリアは昇格しかないというのも狭く感じる。
・20代のうちに結婚して一人目の子どもを出産したいと思っている自分にとって、転職するなら今が一番いいのかもしれない。
・でも別にA社に強い不満があるのかと言われるとそこまでではないんだよな。

そんな思いを抱えたアユミだが、テレビCMで流れてきた転職サイトに何げなく登録してみたところ、状況が動き出した。翌日にはスカウトメールの受信数が300通を越えた。アユミは自分は世の中に必要とされているのかもしれないと自信を持ち、そして、より外の世界を見たいと思うようになった。

転職活動を本格的に始めたアユミだが、やはりイメージがつくのは人材業界だった。何社かのカジュアル面談を受け、自分が貢献できるのはやはりエージェントだと思い、複数社の面接を受けた。結果、面接を受けた5社すべてから内定を獲得した。

後は選ぶだけ。その場面になって初めてアユミは緊張感を覚えた。

「これは自分の人生の岐路なんだよね。。」

なんだか怖くなったので、改めて自分の中の軸の整理を始めた結果、アユミは自分自身を探す旅という名のドツボにはまることになる。

▼アユミの希望
・人材業界、特にエージェントが今までの経験も活かせるし自分には合っている
・できれば自分の肌にあった体育会系のノリの会社がいい
・少人数の会社の方が自分に任される裁量が大きく、自由にできそう
・現状の年収(550万円)はキープしたい

内定をもらった企業は全て上記の条件を満たしている。そして、どこからも強いラブコールをもらったアユミ。だからこそ悩んでしまった。どの企業が自分に合っているのだろう。。

自分は転職エージェントを経験しているのに自分自身のことになると全然答えが見つからない。そんな悩みを久しぶりに会った大学時代の先輩に話したところ、クリティカルな一言をもらってしまう。

「内定が出ているどの企業に行っても、今の会社と同じことを繰り返すだけじゃないの?」

根底から覆る一言が、アユミの言葉にできない悩みの真因かもしれないとアユミは思った。しかし、今更、、、である。方向転換は他人が思うよりも本人にとってそんなに簡単なことではない。

「やりやすくてやりたいこと」と「やりづらいけどやるべきこと」

あなたならどちらをとりますか?

他人から見るとシンプルな問いの答えを出せないアユミは途方に暮れていた。

アユミのキャリアのポイント

若い人が気にしている「成長実感」。これは非常に厄介なシロモノです。成長を求める人は昔も今も多いですが、最近では「成長」よりも「成長実感」を求める人が増えてきて、それが感じられないがゆえにアユミのようにすぱっと転職してしまいます

「石の上にも3年」を経験し、次のステップでより高い視座とスキルの成長を手に入れた経験のある上司からすると、なぜこんなに簡単に辞めようとするのか理解できないし、アドバイスも「もう少し頑張れ!」くらいになります。

上司も新人の気持ちがわからないかもしれませんが、新人の方が上司の気持ちはわかりません。つまり、上司には、この視座の違いを理解したヒューマンマネジメントの能力が求められるのです。その第一歩が、「成長」と「成長実感」の違いを知ることであり、これは上司だけではなく新人も理解しておいた方がいいでしょう。今後のキャリアにとって大事なことです。

もっと言うと、成長とは何か、という本質にも向き合う必要があります。成長とは、育って成熟することです。言葉の意味はいたってシンプルですが、ここで大事なのはどこに向かって、どう育つのかという成長の方向性と方法が人によって違うことです。

個人は「成長したい!」と言います。そして会社は「うちは成長できる!」とアピールしてきます。しかし、「成長」という抽象的なビッグワードで片付けるために、ふたを開けるとミスマッチが起きるわけです。特にアユミのような体育会系人材は「ガムシャラに汗をかいて頑張っていたら成長しているはず」と盲目的に走ることを選ぶ人が多いです。しかし、盲目的に走った結果、袋小路にハマってしまいキャリア迷子になるのです。

体育会人材に限らず新卒入社で1社経験のまま20代後半、30代前半まで迎えている人は大体同じかもしれません。しかし、30代前半くらいまでなら袋小路から少しバックし、キャリアの全体像を俯瞰することができます。まだ後退することのリスクもとれるし、マーケットもそれを許してくれます。

ということで、次回は「成長と成長実感の違い」「成長の目的と方向性」「盲目的成長でキャリアに悩んだ人材のメタ認知方法」について解説していきます。


アユミと同じような悩みがある、具体的にキャリアコーチを受けたい、自身のキャリアデザインをして欲しい、転職相談をして欲しい、という人は以下のフォームよりご連絡ください。


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