シェア
月星真夜(つきぼしまよ)
2024年7月20日 06:26
その日、ウサギは図書館の閲覧席でじっと画集を見つめていた。何度も手に取った画集なのに、見るたびに新たな発見があり、彼女はその度に心が躍るのを感じていた。それでも本当のことを言えば、室内で静かに絵を見ているのは少し苦手だった。広い青空の下で元気に走り回るのが、彼女にとっては何よりも好きなことだったから。「アートを観られる場所は室内だけじゃないんだよ」と、隣に座るカメが言った時、彼女の目がキラ
2024年7月19日 06:24
その日、ウサギとカメは薄暗い「建築倉庫ミュージアム」の中で、建物の模型を見つめていた。精巧な模型は芸術作品のように、棚の上で肩を寄せ合っていた。「見て、中目黒のスタバがあるわ。下北のボーナストラックも。建物の形なんてすっかり忘れていたけど、こんな感じだったのね」と、ウサギが小さく声上げた。建築倉庫を一通り見て回った後、「法隆寺から宇宙まで」という展覧会の会場へと足を向けた。そこで最初に目に
2024年7月18日 06:17
静かな図書館の書架の間を、ウサギは一人さまよっていた。何かを探し求めるように熱心に本の背表紙を眺めているところへ、ゆっくりとした足取りでカメが近づいてきた。「何を探しているの?そんなに夢中になって」カメは優しく問いかけた。「朝から暑くてたまらないわ。だから、涼しげなステンドグラスの写真でも見て気分を変えようと思ったの」ウサギはぼそりと呟きながら、そっと彼に視線を投げかけた。「それなら、
2024年7月17日 06:33
ウサギは図書館の窓辺で中庭をぼんやりと眺めていた。「もう七月も半ばなのに、毎日雨ばかりね」と、ため息混じりに呟いた。「早く満開の向日葵に囲まれて、ぱあっと花咲く花火を見上げたいな」と、目を閉じて夏の景色を思い浮かべた。「任せておいて。分類番号575.98の書架から花火の本を探してくるから」 目を開けると、カメが笑顔で隣に立っていた。その日の午後、しとしと小雨が降る中、二人は「HANA・
2024年1月18日 07:35
ある日、図書館の自習席で物語を書いていたカメのもとに、目を輝かせたウサギがやってきた。二人が中庭へ移動すると、ウサギは待ちきれない様子で話し始めた。「これを見て!」と彼女が差し出したスマートフォンの画面には、一枚の横長の絵が表示されていた。 「これは『明日の神話』という絵なの。初めて生で観たんだ。すごく大きくて迫力があったわ」とウサギは言葉を弾ませた。それを見るとカメは、「この絵は、長らく行方