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迫力のオブジェパワー

ある日、図書館の自習席で物語を書いていたカメのもとに、目を輝かせたウサギがやってきた。二人が中庭へ移動すると、ウサギは待ちきれない様子で話し始めた。「これを見て!」と彼女が差し出したスマートフォンの画面には、一枚の横長の絵が表示されていた。

「これは『明日の神話』という絵なの。初めて生で観たんだ。すごく大きくて迫力があったわ」とウサギは言葉を弾ませた。それを見るとカメは、「この絵は、長らく行方不明だった岡本太郎の最高傑作の一つだね」と答えた。「そうだ、今度、岡本太郎記念館に行ってみようよ」と彼が提案すると、ウサギは満面の笑みを浮かべて大きく頷いた。

数日後、ウサギとカメは記念館の中庭にあるオブジェに囲まれていた。南国の植物の間に所狭しと配置された大小さまざまなオブジェたち。その圧倒的な形状から、二人に途切れることなくパワーが降り注いでいた。 「巨大な絵も迫力があるけれど、立体のオブジェの存在感はまた格別だわ」と、ウサギは呟きながら視線を巡らせた。

館内のアトリエなどを一通り見学した後、二人はショップに並べられたグッズに足を止めた。 「うーん、どれも欲しくて選べない」と眉間にしわを寄せるウサギの横で、彼女の声にも気づかずに、真剣にグッズを選んでいるカメがいた。いつもと違って、周りが見えていない彼の横顔を、ウサギはグッズよりも面白そうだと思いながら、笑顔でずっと見つめていた。

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