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トゲかまくら

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#日記

死にたがり

死にたがり

僕のいくつかの友人はしきりに死にたいと言う。その度僕は自分を凡々と思う。なぜなら僕は不幸の折にも死にたいと思わず、朝ふと目覚めた時にも、過去の後悔や現在の淋しさにも死にたいと思わないからである。そして彼ら彼女らの「死にたい」は全く真剣だからである。「死にたい」というのを本当に死にかねない様子で言うのである。そんな真剣な事態が僕には無いので、僕は僕の悠々自適を陳腐に感じ、時には屈辱にも感じるのである

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気さくな人が苦手な人

気さくな人が苦手な人

気さくな人を嫌いな人だっている。
一般に「あの人は気さくな方で〜」と言う場合のように、気さくであることは至極好意的なこととして捉えられるものだ。

しかし、気さくであることは絶対的にポジティブなものなのだろうか。思うところがあったので少し書いてみようという回である。

書くまえにこの”気さく”という言葉の意味をちゃんと踏まえたい。そこで検索をかけてみたところ、このような記事を見つけた。

この記事

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におい

におい

嗅覚は厄介である。鼻の穴はそのまま脳みそに繋がっているから、においは直接我々のアタマに効くのだろう。においはとりわけ記憶に繋がっている。

においと記憶

たとえば梅の花の香りを嗅げば、すぐさま春が思い起こされる。幾度となく繰り返してきたあの春、数々の甘い春苦い春の、ほのかな記憶が優しく蘇ってくる。季節にはその季節のにおいが強くある。
電車の中で、あるいは路端、どこからともなくいいにおいがする。そ

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スピードワゴンはクールに去るぜ

スピードワゴンはクールに去るぜ

モヤさまがゴールデンでやっていた頃、細野晴臣の登場する回があった。街を彷徨うさまぁ〜ずがなんとなく立ち寄った定食屋に細野がおり、偶然コラボする形であった。

それから一緒に飯を食い、細野が古いピアノで少し演奏していた。このように記憶しているが、その放送で一番印象に残っているのは、その別れ際の、細野の後ろ姿である。
細野は別れの挨拶を一言残すと、そのままそそくさと路地に消えてしまった。振り返らず、足

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日記を詩に換える

日記を詩に換える

私の最近心得た事のひとつに”文字は強いんだよ”がある。
このなんとも軟い思いつき程度に漠然と思っていたことを、坂口安吾がずばり書いていた。上がその引用である。下は、私のロマンチックな脅しである。

文字に襲われたことがあります、という記事を書いた時よりかは、私のこの思いつきも随分まとまった考えに落ち着いていたが、坂口安吾はこれをはっきりと言っていた。「自分の作品のあとでのみ、漸く自分の生活が固定す

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ファッション

ファッション

ファッションとはプライドである。これが現時点での私の理解である。自己表現、安くいえば”服に着られず服を着こなす”事である。

繰り返すようだが(前記事)、私はこのような人間が嫌いであった。その尊大な布に意味はあるのかと罵り、気取ったキザ野郎と片付けていた。それが変わったのは、単によくショッピングに行くようになったからかもしれない。(この記事の出だしはそもそも日記的なものである。これらの文章もショッ

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文字地獄

文字地獄

人は果たして文章で思考するのか、
それとも専ら感覚なのか。
私は、脳みその中ではその両方が、
入浴剤の色付いた湯船のように、
上手に混ざっているものだと確信している。

考え事をしているときの自分の頭を観察してみるといい。なんともふわふわで、つかみどころがない。その考えをいざ文章に書き出すためには、人にうまく喋るには、また改めて同じ思考を順に辿る必要がある。

一方考え事とは別に、文章を考える頭と

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