見出し画像

共犯 (1分小説)

年末の、よく冷え込んだ夜。

オレたちは、用心深く周囲を見渡した。

誰もいない。

「早くっ」
青木は、声を押し殺して言った。

「分かってるって」
クレーンのハンドルを握る手が、緊張で震える。

「あいつ、今にも動き出しそうだな」

オレたちの目線の先には、真っ白な顔をした男が、横たわっている。

「やめろ、生きてるわけないだろ!」
オレは焦ってしまい、ハンドル操作を誤った。

コツンッ。
シャベルの先が、男の身体に当たった。


「なにやってんだ。お前、本当に建設業で働いてたのか?」

青木が、オレをにらむ。

こんな簡単な操作、普通ならミスらないのに。

シャベルに当たった反動で、男は、オレたちがいる方向にゆっくりと転がってきた。

途中、男と目が合う。

「見たかよ。あいつ笑ってたぜ。オレたちを馬鹿にしてるんだ」

まさか、生きているわけが、、、。

その時、どこからともなく音楽が聞こえてきた。

「まもなく閉店の時間です」

青木が、ため息をつく。
「ダメか、来年に持ち越しだな」

「ああ。あと、あいつだけなのに」


オレたちの会話が聞こえているのか。しょくぱんまんは、ただ微笑みながら、静かに横たわっていた。        


※皆様、よい一年を。ありがとうございました。






この記事が参加している募集

noteの書き方

習慣にしていること

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?