佐藤外郎

ネット上に小説を投稿しています。

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  • 幽霊部員の山田さん

    小説「幽霊部員の山田さん」のマガジンです。

記事一覧

「生産的なことをしている」という錯覚

 五年前、末期ガンで余命一年だった父が祖父母を虐待していた。  私たちは違う家に住んでいたが、祖父母の認知症が進行して自分たちだけで住むのが厳しくなり、一週間に…

佐藤外郎
18時間前
5

テレビのリモコン

 父は典型的なコントロールフリークで、自分の思った通りにならないと気がすまなかった。  ASD(自閉症スペクトラム)にありがちだが特定のやり方に対するこだわりが…

佐藤外郎
1日前
8

色言語

#SF小説  まるで落書きのような顔だった。    僕は朝起きると散歩するのが日課だった。  その日の朝も目が覚めると、顔も洗わないまま玄関のドアを開けて外に出た。  …

佐藤外郎
3日前
10

児童虐待を成功させる方法

 幼い頃、家族に虐待されていた。  といっても、私自身が暴力を受けていた、というよりは、上の兄弟が主な被害者だった。  父は色々とわきまえていたので、直接殴った…

佐藤外郎
7日前
13

幽霊部員の山田さん【未完結、執筆中】

#恋愛 #SF小説 #空想地図 #架空鉄道 画像:Bing Image Creator  NR加奈山駅(エヌアールかなやまえき)は全体的に横浜駅と名古屋駅を足して二で割ったような感じだが、地…

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佐藤外郎
10日前
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【創作大賞2024・恋愛小説部門】幽霊部員の山田さん

#創作大賞2024 #恋愛小説部門  同じサークルに、たまに顔を出す程度の幽霊部員の女の子がいた。  彼女は「山田さん」という名前で呼ばれていたが、結局それが本名なのか…

佐藤外郎
10日前
34

事後承諾

 朝起きたら、三年間同棲した彼女がいなくなっていた。  置き手紙も何も残さず、彼女だけが跡形もなく消えていた。  初めは何かの犯罪に巻き込まれたのでは、とも疑った…

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佐藤外郎
10日前
3

完全牛乳

#SF小説 #ディストピア飯  「完全牛乳」——ゲノム編集により動物性食品であるのに野菜としての性質も併せ持つこの薄緑色の牛乳は、栄養学的に完全にバランスがとれてい…

佐藤外郎
11日前
14
「生産的なことをしている」という錯覚

「生産的なことをしている」という錯覚

 五年前、末期ガンで余命一年だった父が祖父母を虐待していた。
 私たちは違う家に住んでいたが、祖父母の認知症が進行して自分たちだけで住むのが厳しくなり、一週間に一度は必ず食料を届けたり排泄物の処理をしたりしていた。

 父は仕事に加え、自分自身も抗がん剤で延命治療をしている中で祖父母の介護までやらないといけないのがよほど苦しかったようだった。父は私を祖父母の家に連れていくと、祖父母に向かって何度も

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テレビのリモコン

テレビのリモコン

 父は典型的なコントロールフリークで、自分の思った通りにならないと気がすまなかった。
 ASD(自閉症スペクトラム)にありがちだが特定のやり方に対するこだわりがあり、それに沿って物事を進めないと不安だったのだろう。

 その内の一つ、かなりしょうもないことだが彼はNHK以外のテレビ局を見ることを許さなかった。民放のワイドショーで垂れ流される芸能人のゴシップを「くだらない」と言うだけならまだしも、家

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色言語

色言語

#SF小説
 まるで落書きのような顔だった。
 
 僕は朝起きると散歩するのが日課だった。
 その日の朝も目が覚めると、顔も洗わないまま玄関のドアを開けて外に出た。
 犬の散歩をしているおばさんやランニングしているお兄さん、そして杖をついているご老人たちを横目に、僕は早朝の清々しい空気を吸いながらハイキングを楽しむつもりだった。
 でも――僕は家を出てから、まず自分の家がコンクリートの塊になってし

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児童虐待を成功させる方法

児童虐待を成功させる方法

 幼い頃、家族に虐待されていた。

 といっても、私自身が暴力を受けていた、というよりは、上の兄弟が主な被害者だった。
 父は色々とわきまえていたので、直接殴ったり蹴ったりすることは少なく、(体に傷が残らないようにするために?)とにかく大声で罵声を浴びせながら目の前でものを叩き壊すという陰湿なものだった。
 この辺が私の子供の頃の人格形成、延いてはその後の人生に大きく影響したと思う。

 一例を挙

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幽霊部員の山田さん【未完結、執筆中】

幽霊部員の山田さん【未完結、執筆中】

#恋愛 #SF小説 #空想地図 #架空鉄道
画像:Bing Image Creator

 NR加奈山駅(エヌアールかなやまえき)は全体的に横浜駅と名古屋駅を足して二で割ったような感じだが、地下五階建ての複雑な多層構造でどこに何があるのか分かりづらいのは渋谷駅を思わせる。
 Daily Miniという駅構内のキヨスクのような場所で試しに何かを買おうとしてみたが、通貨単位すら違うようでSuicaは使

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【創作大賞2024・恋愛小説部門】幽霊部員の山田さん

【創作大賞2024・恋愛小説部門】幽霊部員の山田さん

#創作大賞2024 #恋愛小説部門

 同じサークルに、たまに顔を出す程度の幽霊部員の女の子がいた。
 彼女は「山田さん」という名前で呼ばれていたが、結局それが本名なのかあだ名なのかもはっきりしなかった。
 彼女はこの男臭い鉄道研究会にはもったいないぐらいの美人で、最初はなぜこんなところにいるのか誰も分からなかった。
 ここで軽く自己紹介をするが、彼女に対抗して僕の名前を仮に「中村」としておく。入

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事後承諾

事後承諾

 朝起きたら、三年間同棲した彼女がいなくなっていた。
 置き手紙も何も残さず、彼女だけが跡形もなく消えていた。
 初めは何かの犯罪に巻き込まれたのでは、とも疑った。
 とりあえずアパートの中を調べたが、彼女の荷物は全て元の位置のまま。
 ベッドも化粧台も動かされた形跡はなく、ただ靴と携帯だけがない。
 着の身着のままで出ていったということだろうか。
 僕は会社に電話して事情を説明すると、仕事を休ん

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完全牛乳

完全牛乳

#SF小説 #ディストピア飯

 「完全牛乳」——ゲノム編集により動物性食品であるのに野菜としての性質も併せ持つこの薄緑色の牛乳は、栄養学的に完全にバランスがとれている、ということからその名前がつけられた。
 完全乳業の製造する「完全牛乳」はスーパーやコンビニ、学校給食などあらゆる場所で消費され、今やテレビをつけても、パソコンを見ても、街を歩いていても、どこにいてもその広告を目にする。実際、この国

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