佐藤外郎

ネット上に小説を投稿しています。

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  • 月餅們(げっぺいたち)

    チャイニーズ・ディアスポラ——東南アジアからアメリカ、ヨーロッパまで、世界中に移住して巨万の富を築いた中国人たちが今や月面に進出し、そこに中華街を作るのは歴史的必然であった。    近未来SF小説です。

  • 幽霊部員の山田さん

    小説「幽霊部員の山田さん」のマガジンです。

最近の記事

児童虐待を成功させる方法

 幼い頃、家族に虐待されていた。  といっても、私自身が暴力を受けていた、というよりは、上の兄弟が主な被害者だった。  父は色々とわきまえていたので、直接殴ったり蹴ったりすることは少なく、(体に傷が残らないようにするために?)とにかく大声で罵声を浴びせながら目の前でものを叩き壊すという陰湿なものだった。  この辺が私の子供の頃の人格形成、延いてはその後の人生に大きく影響したと思う。  一例を挙げる。  ある時、私は食後に自分が使った食器を洗わなかった。母がやってくれていた

    • 幽霊部員の山田さん【未完結、執筆中】

      #恋愛 #SF小説 #空想地図 #架空鉄道 画像:Bing Image Creator  NR加奈山駅(エヌアールかなやまえき)は全体的に横浜駅と名古屋駅を足して二で割ったような感じだが、地下五階建ての複雑な多層構造でどこに何があるのか分かりづらいのは渋谷駅を思わせる。  Daily Miniという駅構内のキヨスクのような場所で試しに何かを買おうとしてみたが、通貨単位すら違うようでSuicaは使い物にならなかった。  駅から外に出ることもできず、自動改札機に謎のオレンジ色の

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      • 【創作大賞2024・恋愛小説部門】幽霊部員の山田さん

        #創作大賞2024 #恋愛小説部門  同じサークルに、たまに顔を出す程度の幽霊部員の女の子がいた。  彼女は「山田さん」という名前で呼ばれていたが、結局それが本名なのかあだ名なのかもはっきりしなかった。  彼女はこの男臭い鉄道研究会にはもったいないぐらいの美人で、最初はなぜこんなところにいるのか誰も分からなかった。  ここで軽く自己紹介をするが、彼女に対抗して僕の名前を仮に「中村」としておく。入っているサークルの名前からわかる通り、僕はいわゆる「鉄ヲタ」というヤツだ。  

        • 事後承諾

           朝起きたら、三年間同棲した彼女がいなくなっていた。  置き手紙も何も残さず、彼女だけが跡形もなく消えていた。  初めは何かの犯罪に巻き込まれたのでは、とも疑った。  とりあえずアパートの中を調べたが、彼女の荷物は全て元の位置のまま。  ベッドも化粧台も動かされた形跡はなく、ただ靴と携帯だけがない。  着の身着のままで出ていったということだろうか。  僕は会社に電話して事情を説明すると、仕事を休んで彼女を探すことにした。  あの日、どれだけ走り回ったか分からない。  近所の

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          完全牛乳

          #SF小説 #ディストピア飯  「完全牛乳」——ゲノム編集により動物性食品であるのに野菜としての性質も併せ持つこの薄緑色の牛乳は、栄養学的に完全にバランスがとれている、ということからその名前がつけられた。  完全乳業の製造する「完全牛乳」はスーパーやコンビニ、学校給食などあらゆる場所で消費され、今やテレビをつけても、パソコンを見ても、街を歩いていても、どこにいてもその広告を目にする。実際、この国に住んでいる人のほとんどがこの牛乳を飲んでいるらしい。  僕はそんな牛乳を製造

          完全牛乳