１・２・３！プロレスラーの人事評価。必殺テキトー固めでギブアップ。ｂy転職定着マイスター川野智己

　Oh Yeah！年末になると首が回らないぜ。
　昨日、パイプ椅子で相手選手から殴られたからじゃねえよ。
　そんなヤワな男じゃないぞ！ガオー！
　我こそは、代官山プロレス㈱の中堅レスラー「タイガー・ジェット・珍」（33歳）様だ！
　ぶっ殺してやる！
　首が回らないとは、「金が無い」と言う意味なのさ。

　こんな虚勢も通じないんだよ。今日は。
　年１回の契約更新の日なんだよ。毎年、最後の興行（巡業）が終わるこの年末に行われるんだ。一人一人、この葛飾の事務所に呼ばれてな。
　契約更改だなんて、プロ野球選手みたいだって？
　まあ、そんなところだ。
　プロ野球と違って、選手の立場は弱いけどな。

ここは、倉庫を改装したプロレス団体。
今日は、レスラーの給与がどうやって決められているのか。
ちょっと、怖いが覗いてみよう。

１　不安定な雇用と公的保険

　
　これでも、ずいぶんマシになったほうだぜ。以前は、口約束だったんだ。いい加減だろう。
   それで、翌年１年間全国を巡業して闘うのさ。
 そりゃ、不安定さ。身分がな。

　「俺たちは、信頼関係で結ばれてるんじゃなかったのか！」
　と、役員の六さん（77歳：元〇〇）から睨まれるからそれ以上言えねえよ。ストリートファイト400戦無敗の、さすがの俺様もな。トホホ。

　信頼関係という割には、同僚で「騙された」といって辞めるやつが多いんだけど。。。どういうこと？
　契約書なんてできたのは数年前かな。
　さすがに、この世界も天ぷらだかコンプラだかに抗えなくなっているようだ。力道山先生もびっくりさ。
　
　怪我しても、労災や社会保険が出るから良いですね、だと？
　難しいこと言うんじゃねえ！こちとら、毎日、鉄柱に頭打ち付けてるんだ。
　細かいことわかるわけねえだろ。

　そもそも、毎日流す額からの流血は、就業上の傷病なのか、それとも就業そのものなのか区別がつかねえんだけどな。
　現場には、労災防止の看板に「今日もご安全に。安全第一に」と書いておきながら、「毎日流血して、客を喜ばせろ」って、わけわかんないぜ。

　
　そういえば、この間、タニマチ（巡業先でレスラーを応援し小遣いを渡す地元の名士。いわばスポンサー）から宴席で聞かされたんだよ。タニマチが言うには、俺たちはプロレスの興行会社から「雇用」されているのではないみたいなんだ。

　俺たちレスラーは個人事業主っていうみたいだ。
　なんだか、格好いいよな。偉くなったみたいだ。社長、みたいなものなんだろ？違うのかな。

　ウーパーだかルーパーだか。。。そうそうウーバーイーツっていう兄チャンたちとおんなじさ。それって、実態は雇用であるにも関わらず、会社の雇用逃れらしいんだ。
　でも、こちとら、社会保険や雇用保険も給料から引かれずに満額もらえるし、会社も保険代を負担しないし、国庫が損するだけで、みんな得するみたいだ。
    なら、いいじゃねえか。

　会社も俺も得をする。これって、三方良しっていうのさ。近江商人の言葉さ。よく知ってるだろ！馬鹿じゃねんだよ。
　え！三方なら、俺様と会社と、もう一つは何かって？
　てめえ、有刺鉄線に投げ込んでやろうか！ファイヤー！

２　プロレスラーの人事評価

　

　プロレスラーの人事評価はどうきまるかって？そんなこと、知りたいのか？
　マッチメーカー（闘いのストーリーを考えたり、試合の組み合わせを考える現場の要職。主にベテランのレスラーやレフリーが担う）の好き嫌い次第さ。

　人気があるベビーファイス（正義役）やヒール（悪役）にしても、ようはどれだけ客を呼べるかが評価の分かれ目らしい。だから、評価項目なんて上品なものあるわけねえよ。
契約書も無かったんだから、人事評価規定なんてあるわけねえだろ。

　それにしても、客を呼べるかどうかなんて、べつに客にアンケート取ってるわけじゃねえから、正確にはわからねえはずだけどな。
    だから、マッチメーカーの好き嫌いだっていうんだよ。
　そうそう、あとは売店のグッズの売上高かな。選手の顔写真入りのＴシャツなどがそれさ。ロイヤリティの金は選手には入らないけど、売れてる数で分かるよな。客はどの選手が目当てで会場に来ているかってな。人気がわかるだろう。

　最も、その年度の評価により翌年の何が決まるかっていると、年俸が決まるんじゃないんだ。１週間あたりのファイトマネーの単価が決まるのさ。だから、翌年、実際にどれだけの出場の機会に恵まれるのかで、当然実入りが違ってくるのさ。
　「この巡業シーズンは客の入りが悪いから、来週は試合に出場しなくていいぞ。」
　なんて、言われたら実入りなしさ。スター選手は、そんなことないけどな。

　俺も、マッチメーカーの指示で、こんな覆面被らされてるけど、本当はこのイケメンぶりを活かして素顔で活躍できれば、もっと人気がでるはずなんだよ。

　「マスクは付けない」と言い張り、飛行機から強制的に降ろされた大学講師がいたよな。どんな拘りか知らないが、ヤツがうらやましいよ。
　え！それは新型コロナ感染防止の不織布マスクのことで、マスク違いだって！それにしても、覆面を拒否するのは勇気があるはずさ。パトカーだって覆面させられてるんだろう。違うのかな、あれは。。

　まあ、覆面かどうかに関わらず、俺みたいに、入場のたびに、客席に乱入して客を追いかけ回してりゃ。そりゃあ、客から嫌われるわな。

　このプロレス会社で、最も高給取りってどんな人か知ってるか？
 　それは営業だよ。
　チケット売るやつにはかなわないよ。
　だから、買ってくれるタニマチには頭が上がらないのさ。

　話ししたいことなんて、山ほどあるのさ。
　いっそのこと、先輩のラッシャー木村さんみたいに、マイクパフォーマンスでぶちまけたいくらいさ。

　おって、そろそろ入場の時間だ。
　今日は、ＴＶの生中継だから、中継終了の２０時４９分ちょうどでフォールされて負けなきゃいけないんだ。
タイムマネジメントも大変だぜ。馬鹿じゃできないよ、この仕事。
　忘れものはないかな。ハンカチ、ティッシュ、栓抜き、千枚通し、ライター、血糊と、よし、ＯＫ！行くぞ！ウイー！

　（場内アナウンス）「お気をつけださい！狂った暴走車、タイガー・ジェット・珍の入場です。モノを投げないでください」。。。。　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　       
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＜これまでの投稿記事一覧＞　～気軽に、覗（のぞ）いてください～

３４　後編　敵か味方か。労働者に近づく外部ユニオン（労組）。その実像と虚像に迫る

３３　本当に味方？労働者に近づく外部ユニオン（労組）。その実像と虚像

３２　後編。食べて覚える人間関係。魔法のレシピ『ハンバーガー理論』 おかわり編

３１　秘伝。人間関係力を磨きたいなら食べよう『ハンバーガー理論』

３０　不倫。正妻と愛人が職場で刃物沙汰。何故、役員だけが不問なのか

２９　１・２・３！プロレスラーの人事評価。必殺テキトー固めでギブアップ

２８　給与倍増と心地よさ。気弱な30代女性が役員に。その「穏やかな幸せのつかみ方」

２７　後編。心を病んだ社員の解雇をめぐる、ブラック産業医と主治医の驚くべき結託

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２５　密室。事件は会議室で起きている。本社内で人事評価はどう決まっているのか。

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