見出し画像

困惑。昇進したとたん仲間が疎遠に。ある女性リーダーの戸惑いと決意 by転職定着マイスター川野智己

 「困ります。別にリーダーになんてなりたくありません。居づらくなるのでお断りします。」
 「会社が女性を登用させる流れとは聞いています。でも、よりによって何故、この私なんですか。しかも先輩を差し置いて。どんな顔をすれば良いのですか。いまの仕事や立場に満足しています。今の職場で、今の役割を続けさせてください。」

1 突然の昇進の辞令


 里谷史乃(仮名:33歳)は、突然の辞令に戸惑いを隠せなかった。
 以下、彼女が私川野のもとに、転職相談に来た際の実際の相談内容に基づき、その悩みをご紹介したい。

 住宅販売会社に勤務して11年。仕事も順調だし、遣り甲斐も感じてきている。異動してきた不慣れな課長に、ちょっと偉そうなことを言ったこともある。
 これは、その仕返しかな。
 だって、多摩地区販売課長だなんて、自分に務まるはずがない。

 でも、この昇進を、赤ら顔の常務はニコニコと「今後は女性の活躍の時代だから」なんて言っていた。

 よく言うわ。
 散々、私たち事務職に「うちの女の子たちは良いよな。早く帰れて。俺の若い時代は。。。」 と、私たち事務職を馬鹿にしていたくせに。
なにが「女性の時代だ」、だなんて白々しい。

 確かに、年末の意向申告書(今後の自分のキャリア志向を表明する人事部宛の書面)には、私は前向きなことは書きました。でも、それは、予定調和というか、儀礼的というか。前向きな決意表明をするものなのではないですか。それを、まともに捉えられても。

 確かに、総合職に応募した。しましたよ。会社も、一定数の割合の管理職を女性にしなければならない事情があるとは聞いている。だからといって、本当に総合職に変えることは無いじゃないですか。習い事もあるので、転勤と言われたら困るんですよ。

2 管理する側と管理される側に

 

 給料も上がるし、責任ある仕事も出来るのに、何故転職したいのかって?

 やっかみがあるのですよ。やっかみ。部下からの嫉妬とも言うのかな。
 特に、男性社員からの。
 飲み仲間だったのに、急に遠巻きにされて。
 彼らからは、表の話も裏の話も、情報が全く入ってこなくなりました。
 聞くところによりと「女だから、特別扱いされている。いい気になっている。」と言われているらしいです。

 同僚の女性からも距離を置かれています。
 「里谷さんは、変わってしまった。あれだけ嫌っていた部長の家来ね。言いなりで。そんなに偉くなりたいのかしら。」 と、お茶も誘ってくれなくなりました。

 自分は、変わってもいないし、偉そうにもしていない。
 でも、周囲からはそう見えるらしいです。
 着ている洋服まで、「偉くなると、着ているものまで違うね」と言われたり。
 育児の関係で時短勤務をすれば、「その穴埋めは、私たちがさせられているんです。」とも言われる始末なんです。
 酷いと思いませんか。
 
 なによりも辛かったのは、私が新人の頃から手取り足取り教えてくださった尊敬する10歳以上も年上の先輩が、私の部下になってしまったことです。
 大人しい人だけに、私に変わらずに接してくれることがかえって、私の胸に刺さる毎日なのです。きっと、先輩は傷ついてるんだろうな。

 普通、昇進させるにしても、同じ職場で留まらせるなんて、考えられないですよね。
 違うフロアの別の部署にするとか。
 人間関係の機微に疎いというか、人の気持ちがわからないというか。
 こんな会社にも嫌気がさしているのです。

3 成長への新たなステージに

 

 え!そんな気持ちを上司に伝えたかって?
 言えるわけないじゃないですか。
 どうせ、わかりっこないですよ。あんな部長じゃ。
 普通、部下の気持ちだなんて、言われなくても察するべきでしょう。上司なら。

 そ、そうですね。
 私も、その「上司」「リーダー」なんですよね。
 もはや。

 「女性管理職は、男性の2倍働かなくては認められない」って言いますよね。
そんなのは、ごく一部のスーパーキャリア女性だけです。
 私も身体が丈夫ではなく、そんな芸当はできませんし、そのつもりもありません。

 転職して、理想的なお手本の女性管理職に出会いたいんです。
 ロールモデルって言うんですか。見本ですよ、見本。

 わが社には、見本となる人が居ないんです。
 まあ、転職先にそんな人が居るかどうかは、実際に入社してみないとわからないことはわからないのですが。それも、賭けですよ。
 賭けが失敗したらどうするかって?
多分、大丈夫だと思います。今の会社ほど、変な会社は無いと思うから。

 え!「お手本が欲しいとは、管理職として役目を果たしたいという意識が芽生えたのではないか。」ですって?勘弁してください。
 そういうわけじゃないですけど。

 じ、自分がパイオニアとして、今の会社で最初のロールモデルになったらどうかって?
 まあ、過剰な期待をされても困りますけどね。

 確かに、私が腹を据えて「リーダーとなって責任を果たす」との覚悟が、周囲からは見えていなかったのかも知れません。転職したいと思っていることはバレていると思います。リーダーが、ふらふらと軸がぶれているから、彼らも不安なのかもしれません。
 私だって、本当は、責任もって仕事したいんです。

 でも、それまでの人間関係が崩れてしまって、大いに心が揺らぎました。
 だから、ここ、人材紹介会社に登録に来てしまったのかも知れません。
 逃避、、、だったのかも知れませんね。
 心身ともに傷つく寸前に逃げたかった自分がいるのかも。

4 目的は、転職という行為ではなく、自己実現という貴方の姿


 考えてみれば、リーダーになってからは、自分の裁量で仕事ができるようになったし、終業間際に、急な残業を言いつけられることも無くなった。自分のペースで仕事ができるようになりました。
 判断を求められて困ることもあるけど、判断したことがそのまま実現する。部長からも、他の社員に先立って情報を降ろしてもらえるし、期待感も感じる。

 私の悩みも、一過性の軋轢に過ぎないのか、私の本質的な至らなさなのか、確かに結論をだすのは早すぎるかもしれません。
 かつての人間関係が取り戻せるなら、私も今の会社を辞めたくないんです。

 仰るとおり、転職先では私は、突然現れた異分子、新参者ですよね。
 ならば、今以上の冷徹な目で見られることを覚悟しなければならないということは、確かにそのとおりかもしれません。その賭けに負けたら、目も当てられないことになるのは、そうかもしれませんね。

 会社や上司、部下への不満を言う前に、今一度踏ん張ってみます。
 また、報告に来ます。
 人材紹介会社に、登録目的でなく、報告に来るというのも変な話ですが (笑) 
                               以 上


※参考記事


 ※毎回、ご一読いただき誠にありがとうございます。書き記した内容は、私川野が大手人材紹介会社の教育研修部長時代に見聞き、体験した「実話」です。よって、個人名や企業名が判明しないよう若干の表現上の工夫をしております。何卒ご了承願います。
宜しければ、「好きボタン」や「フォロー」をお願い申し上げます。

 これまでの体験から厳選して選び、“Choose Day”として毎週火曜日に期日予約投稿しております。

当サイト内のすべてのコンテンツの無断転載・無断使用はご遠慮ください。
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?