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告発。高田純〇も驚く!大手人材紹介会社の“超テキトー”な仕事ぶり。求人案件の多さがミスマッチの原因という皮肉。by転職定着マイスター川野智己

「我が社は、ご紹介できる求人案件の数は他の紹介会社に負けません。」
「結局、わが社のような大手企業に求人案件が集まるものなのですよ。」

 膨大な求人案件が多いからといって、個々の求職者に相応しい案件の紹介ができているとは、必ずしも言えない。
 例えて言うなら、スーツの購入で、テーラー(オーダーメイドの仕立て)として個々人の身体の寸法を測るようなこともせず、安易に膨大な品揃えを持つ紳士服大手量販店の大量生産の既製服を買い求めていないだろうか。買った直後は違いが判らなくても、そのうち、型は崩れ、ほつれが目立ち、窮屈さやだらしないダブダブ感、皺(しわ)に悩まされ、結果として着ているあたな自身の価値を下げることになっていることがある。
 大手だから、求人案件の数が豊富だから良い転職ができるとの、イメージに惑わされてはならない。
 以下、大手人材紹介会社に勤務する若い彼の吐露を聴いてほしい。

1 ある大手人材紹介会社の社員の悩み

 僕の名前は、小口伸介(25歳)です。
 誰でも知っている大手人材紹介会社(以下「紹介会社」といいます)で、カウンセラーとして従事しています。コーディネーターと呼ぶ紹介会社もありますけどね。

 営業担当が取ってきた求人案件(以下「案件」といいます)を社内システムに入力し、求職者が来訪してきたら彼らと面会し、その際に希望する条件で探した案件を、求職者に提示する役目なんです。
「(求職者に対して)話はよく分かりました。それでは、ご希望に合致する案件があるか探してまいります!少々お待ちください。」と、さももったいぶって一旦席を外して、面談室に戻ってきたら、多くの案件の紙の束を誇らしげに手にしているというあれです。


 実際のバックヤードでは、事務所内の自席に戻り、求職者から聞いた項目(勤務希望地や希望年収額など)を入力しシステムで検索し、該当した案件を印刷し、それをうやうやしく、そしてもっともらしくに、求職者に渡すのです。「探してきます!」とは、要するに検索することなんです。
 この一連の検索作業は、対外的には「カウンセラー行為」と称しています。単なる箔づけですね。名刺にも大きく書いてあります。空白だと寂しいですからね。

 ところで、ハローワークでは、備え付けのPCに、求職者自らキーボードにキーワード入力して検索し、データベースから案件を自分で探す仕組みになっていますよね。
 先ほどの私の「カウンセラー行為」と称する行為は、何て言うことはない、考えてみれば、求職者の代わりに、キーボードを叩いて同じようにデータベースから検索しているだけの、作業代行業と自虐的に言っています。

2 求職者の為の紹介ができているのか

 検索した「勤務希望地」「希望年収額」という項目。
 本当に求職者が知りたい本音は、そこにあるのでしょうか。それ以外にももっと重要なことがあるはずです。

 「働きやすさ」「社風はどうか」「定着しているか。離職率は高くないか」「自由闊達度は高いか。率直にモノが言いやすいか」「権限委譲されているか。逐次、上席に伺いを立てなければいけないのか」「魅力的な異性が居そうか」「遠慮なく育休が取れる雰囲気か」「異常なまでの厳しいノルマを課せられないか」「定年まで安心して勤務継続できるか」「残業なしで帰れるのか」「意地悪な上司が居ないか」「前職者はどうして辞めたのか」「どんな人材を求めているのか」「中途採用のハンデはないのか」「同族経営ではないのか」、そして何より「ブラック企業ではないのか」「経営は安定しているのか」など、むしろこれらこそが大いに気になるはずです。


 転職後に定着できなければ意味がありません。ゆえに、求人票に書けないこれらの事柄こそ、求職者は知りたいはずです。それは僕も理解してはいます。

 求職者からのこれら本当に聴きたい本音の部分を、「おまえは、カウンセラーとして、求職者に回答したのか。」ですって?

するわけないでしょう!
そもそも知りませんよ。そんなこと。

 うちの営業担当が、朝から晩まで飛び込みの電話で求人先企業(以下「求人先」といいます)にアポをとり、やっと訪問し面談しているんですよ。わかりますか。求人先が気分を害するような内容を、うちの営業担当からヒアリングなんて出来ませんよ。出入り禁止になっちゃうじゃないですか。


 まあ、その求人先と懇意(仲良くなること)になり、本音が聞き出せる関係になれば別ですが、そんな深い関係を築けるような余裕は彼ら営業担当にありませんよ。彼らも毎月課せられる営業ノルマをこなすためには、広く浅く数多く案件を集めなければならないんですから。

3 巨大であるがゆえの効率主義


 そもそも、人材派遣業なら、農耕型よろしく契約更新、更新で安定的な売り上げが見込めますが、人材紹介業は、狩猟型なんですよ。絶えず走り回って成約を上げ続けなければならないんですよ。一つの求人先に手間暇なんてかけられないんです。
 数ですよ数。効率ですよ効率。まあ、そんなものですよ。。

 なにせ、我が社は弱い立場の「単なる業者さん」なんですよ。紹介会社なんて全国に8万社もあるんですよ。星の数ほどね。

「大手だから優遇されるのではないか」って?
ありえないですよ。そもそも、求人先が求める人材を紹介出来て、はじめて1業者としてその存在感を認められるんですから。。。零細の紹介会社と横一線の扱いに過ぎないのですよ。営業担当も弾(たま:紹介できる人材のこと)が無ければ、せっかく案件をもらっても、営業成果につながらないんですよ。会社は多額の広告宣伝費をかけているのだから、その回収の為にも大きな売り上げが必要なんです。巨大であるがゆえに経費が膨大なんです。


 求職者には、「どうですか、この案件の数の多さ。凄いでしょ。」とは言いつつも、案件の数を得るのは人海戦術で容易いことなのです。実際は、その先なんですよ。案件の成立(求職者の転職)こそがゴールなんです。
 だから、僕たちカウンセラーも、営業担当から「早く(人材を)出せ。」と、毎週会議で怒鳴られ続けて。。。。トホホ。

 だから、登録相談に来る求職者には、「この膨大な、求人案件の紙の束を持ち帰って、興味のある求人先があれば、後で連絡しくださいね。」と言うのが精一杯ですよ。所在地や資本金、抽象的な仕事の内容の表記、賃金額など、通り一辺倒な情報で、求職者には判断してもらうしかありませんよ。

「本当に知りたい情報が無い。ところで会社の社風はどうなんですか。」って、聴かれることもありますよ。そんな時は、従業員構成欄を素早く横目で見て「わ、わ、若い人が多いから気さくでざっくばらんな会社ですよ。」と回答しておきますよ。「若い社員が多いから、だからざっくばらんな社風だと、何故言えるのか」って? でも、普通そうなんじゃないですか。

 根拠?根拠なんてありませんよ。Youtubeのひろゆき(2ちゃんねる開設者)の人生相談じゃないですけど、「それって、あなたの(単なる)感想ですよね。」と論破されてしまうレベルの話です。でも、もしかしたら、当たっているかも知れないじゃないですか。

 「歴史ある会社なら、開発部長のような重要ポジションを何故中途で募集しているのですか。何か、あるのではないですか。今回の募集の背景は何ですか。」と聞いてくる面倒くさい、いやいや鋭い求職者もいますよ。その場合は「前任者の退職です」と木で鼻をくくった回答をしておきます。求職者は「そうではなくて、なぜ辞めたのか理由を知りたくて聞いているのだ」と腹の底では突っ込んで思うでしょうね。

 でも、多くの求職者はそこまで聴いてきませんよ。好待遇の案件を前にして、求職者も遠慮して。案件を引っ込められたくないんでしょう。

 考えても見てくださいよ、何万件もの求人案件がデータベースに入っているのですよ。しかも、毎日更新されて。僕が知らない案件ばかりで。聴かれても回答できるはずないじゃないですか。まして、実際に僕が求人先に企業訪問しているわけじゃないし。求職者に渡した案件シート以上のことは僕も知りませんよ。なにせ、検索し印刷し、面談室に戻るまでの5分間の間に、必死に案件シートを初めて読んで、その後、したり顔で求職者に渡しているだけなのですから。

4 強引な転職、その誘導

 それでも、くらいついて聞いてくる求職者もいますよ。そりゃあ、転職の成否が人生の成否に直結するのですから当然ですが。そんな時はこう言うんですよ。求職者に。
「そんなに気にされるなら、実際にこの求人に応募して、面接を愛けて、面接官に直接聞いてみたらいかがでしょうか。求人先企業の経営者や人事部長に直接問いかければ一番手っ取り早いし確実ですよ。さ、応募ということで良いですね」と。

 求職者からは「あんたに聴いてるんだよ。それを事前に教えるのが、あんたの仕事じゃないか。面接の場で『御社は、自由闊達でモノが言いやすい会社ですか』なんて、厚かましくて自分から聴けないよ。」と、思われてることは重々承知しています。

 じゃあ、どうしてそんな誘いをするのかって?
 応募してくれれば、我々紹介会社として求人先に顔が立つんですよ。

 紹介会社にとって、最も辛いのは、求人先から「いつまで待てば、求職者(人材)を紹介してくれるんだ。おたくらは人材がいないのかね。商品(人材)が無いなら、もう、来なくていいよ。」と言われることなんです。だから、正直言って「誰でもいいから、応募してくれよ。」と、求職者たちに対して思っている。それが僕たちの本音です。

 求職者にとっては、それほど気の進まない応募は手間ですし、その殆どが無駄足になるとは思いますよ。でも、20件応募すれば、もしかしたら妥協できる求人先が1件見つかる「かも」しれないじゃないですか。そういった意味では、求職者にとっても、必ずしも全てが無駄足になるとは言い切れないと思っています。もっとも、その求職者にとって適職であるかどうか、その後、その求人先で定着できるかどうかは疑問ですがね。

 変な会社であれば、また探せばいいじゃないですか。人生、七転び八起きですよ。僕たちも、二度美味しいし。だって、有能な人が転職を繰り返してくれれば、何回でも紹介手数料(人材の年収の約3割の額)が入るんですよ。

 「それじゃ、求職者に寄り添うという、転職エージェントとしての機能を果たしているとは言えないのではないか。うわべの求人広告内容からは読み取れない機微の情報を事前に求職者に開示し、求職者の幸せのために、ミスマッチ(転職後の退職、不定着)を回避させることが、おたくら紹介会社の役目なんじゃないですか。これじゃ、数撃ちゃ当たるで、闇夜の鉄砲じゃないか。これじゃ丸投げじゃないですか。」

 求職者から、かような本音がぶつけられるかって?
 それが、不思議なことに無いんですよ。

 分厚い束で、求人票を持って面談室に戻ってくる僕に対して、
「さすが大手紹介会社ですね。案件がいっぱいある。凄いですね。」といって、喜んで帰宅される方々が殆どなのです。

 人間、「自分で選ぶ」という行動をさせられると、不思議と納得感というか満足感が増しますからね。失敗しても、自己責任という感情が芽生えるらしいです。これ心理学からの利用です。ある意味、我々の責任回避策です。


 それにしても「あの束から、どうやって自分に相応しい求人先を見つけるつもりなんだろう。」と、まるで他人事ながら心配になりつつ、一方で、喜んでエレベータに乗る求職者を笑顔で見送る自分がいます。
 「どの案件でもいいから、とにかく応募してくれ。」と願いつつ。

5 勤務する社員の葛藤

 「そんな仕事で、遣り甲斐や誇りはあるのか!」って。
 それ、僕に対する質問ですか。
 そりゃあ、正直って、悩んでいます。
 「自分は、単なるデータベース検索ロボット」だなあと。毎日感じています。だって、Web上の「転職サイト」で、求職者が自分でキーボード入力すれば、僕たちの仕事は要らないのですから。
 何よりも、求職者に、求職者の真の要望に合致したベストマッチの求人先企業を紹介できていないことに忸怩たる思いでいます。僕も、本当は、こんな仕事の進め方は望んでいません

 僕も近いうちに、求職者に寄り添って、「定着できる魅力的な転職先」を紹介する中堅・零細の人材紹介会社に転職するつもりです。紹介会社の社員の転職なんて悪い冗談かと思われるかもしれませんが。。。。

※他の参考記事
実践!良い人材紹介会社の見分け方。その極意はたった一つの問いかけにあり

※あとがき
 ご一読いただきまして、誠にありがとうございます。
 業界団体における同業他社を交えた会合の中で、川野が他社大手の社員からの多くの実態を聴きました。彼らのその生々しい話の内容を、わかりやすく物語風にまとめてみました。

 おかげさまで、投稿を始めてはや1か月半たちました。多くの方々から大きな反響をいただいております。これからも、綺麗ごとではなく、業界の本音を書いていきます。 何よりも、転職者の転職後の定着を目指した。
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 皆様にも、より良き転職先との巡り会いの機会がありますよう、陰ながら願っております。
 ありがとうございました。    転職定着マイスター 川野智己

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