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開幕。IOC(虐めオリンピック)の金メダル。転職者を襲う「合法的な仲間はずれ」のカラクリ by転職定着マイスター川野智己

 「ほうら、見てみなよ。可哀そうに。アイツだよアイツ。転職してきた彼。会議を外され、一人事務所で電話番だよ。むなしいね。」
 「ここまで、仲間外れにされて、よく耐えてるわね。会議室から聞こえてくる楽しそうな嬌声を聴いて悲しくならないのかしら。」

 昨年令和2年に、ようやく労働施策総合推進法が改正され、パワハラ防止対策の義務化が制定された。
これで、労働者は安心して働ける。これで、転職者もパージ(排除)されない。社内で虐(いじ)めにあうことも無い。

 本当に、貴方はそう考えておられるのだろうか。

1  法律なんて破るためにあるという人たち

 かねて、企業では「女性社員研修」なる集合研修が企画・実施されていた。内容は、来客応対、電話応対、お茶の出し方などの訓練だ。

 現在は、男女雇用機会均等法で、性別で分けた研修は禁止されている。
本来は、性別に関係なく能力の高低や役職の有無に応じて職務内容が決まるべきものであり、「女性だから」との理由で集められ、ステレオタイプの役割、その研修を行うことは認められていないのだ。

 抜け道を考えること。それに長けているのは、総務部、人事部、その人たちである。

 転勤や深夜勤務を行う職掌(しょくしょう)を「総合職」、地域限定勤務で事務職を担う職掌を「事務職」と規定し、女性の殆どを「事務職」に封じ込めたのだ。これなら性別の違いではなく、役割の違い、仕事の違いと言い張ることが出来る。

 「総合職」を敢えて希望する女性社員には、選考試験なるハードルを設けて意図的に不合格にさせる。結果、「事務職研修」なる、実質的な「女性社員限定研修」が、今の現代でも残っているのだ。抜け道、まやかしが未だに横行している。実態としては性差別となんら変わりない行為なのだ。

その証拠に、御社の「総合職と事務職」もしくは「正規社員と非正規社員」とで、明確に仕事の区分けがされているだろうか。「本来、正規社員がやるべきとことを、総合職負うべき責任を、貴方が負わされてる」ことが、きっとあるのではないだろうか。


 ”めどうくさい”一部の女性社員を排除したい、お茶くみだけやっていればよい。と思う不届きな者がいた。それが、事務職という職掌を生み出して一因ともなっている。

2 転職者の心を蝕む「大人の仲間はずれ」 

逆も、また真なり。
その研修なり、会議なりに参加すべき社員を、特定の社員のみ意図的に外すことはパワハラとされる。差別なのである。
本来、定例会議には、会議規定が存在し、その開催の趣旨、議題、参加者、開催頻度など明文化されているはずである。

 同じ課長でありながら、定例会議に呼ばれている課長と、呼ばれていない課長が存在すること自体、差別、いじめとして大きな問題にすべきことだ。これは、意外と知られていない。
参加者は、部長が自由に決められる、社長が自由に決められると思われているふしがあるが、実際はルールにのっとって開かれるべきものだ。

 参加者として呼ばれていない社員は、会議室に入ることも許されず、一人広い事務所で電話番を担っている。
しかも、他の部門の社員からの好奇な眼にさらされて。

「愛の反対は憎しみではない。無視だ。」とは、かのマザーテレサの言葉である。

 職場で最も、安易に実行でき、最も効果を挙げることが出来る虐め、それが、この「仲間はずれ」だ。
 虐める側は、労力も道具も要らない、自分にリスクも無い。お手軽だ。

 先の会議外しも、効果的な虐め「仲間はすれ」であることは明白だ。
 いかにも、「使えない、用なし、価値無し」社員だとして、背中に「バカ」と書いた紙を貼られて、一人座らされているようなものであり、いわば、さらし者にされているのだ。それに気づかなければならない。

 小学校でも、懲罰と称して、廊下に立たされることも無くなった。見せしめ、さらし者にしているだけで、教育とは程遠いからだ。

 転職者も、この針の筵(むしろ)に座らされ、耐えられずに退職に追い込まれるケースが多い。大人の世界では、小学校以下の蛮行が行われている。

3 「俺がルールブックだ」。自己チューで生きている人たち

 なぜ、問題視されないのか。
 ここで、抜け道の主役、総務部、人事部が再び登場する。

転職者は、入社後は「副リーダー」「課長付」「担当部長」なる非ラインの役職がつくケースが多い。狙いの一つは、部下を持つ「リーダー」「課長」「部長」といったライン管理職(部下を持つ、課や部などの組織を任せられる役職)には、いきなりは就けさせない。転職者の力量を様子見するためだ。

 仮に、転職者を周囲の社員が排除したくなったら、こう一方的に変更すればいいことだ。
「今日から、会議規定を変更する。部下・組織を持つライン管理職のみの参加とする。各組織からの代表者が集う場とする。各組織の進捗状況や課題をライン管理者が代表して報告してくれ。」と。

 もう、これで意に沿わない、気に入らない、仲間に入れたくない社員を、「合法的に」排除することが出来るようになった。
 仲間外れ、排除された転職者は、その後、情報が一切入らなくなる。

 会社の方針や人事異動、部内の取り組みなど、いっさい知らされない。
 仮に、あなたが副リーダー職であるとしよう。
 上司はリーダー職となる。彼がライン管理者として会議に出席している。一方、あなたは、参加を許されない。

 貴方は、何も聞かされていない、何も知らされていない。
「リーダー、来週に避難訓練があると、噂で聞いたのですが。私は、特段聞いていないのですが。」との貴方の問いに、上司であるリーダー職は、その死んだ魚のような目で貴方を見つめながら、冷ややかにこう言うだろう。

「ああ、君に言ってなかったけ。そうだよ、それがなにか。」と。

4 追い詰められる転職者

 そしては、また別件で、貴方はリーダーに問いかけるだろう。
 そして、また別件でも。

 貴方は「リーダー!いい加減にしてください。きちんと情報を知らせてください。」と、怒鳴るだろうか。

 怒鳴っても良い。
 その後の、冷ややかな周囲からの視線に耐えられるならば。
 四面楚歌の身で、感情的になることは、何を意味するのだろうか。

 貴方は、その直後から、自己嫌悪に苦しむだろう。
 仲間のいない貴方は、負のスパイラルという嵐に苦しむことになる。

 そして、次第にこうなる。
 「自分は知っている」と、虚勢を張るようになるだろう。
 自分が何も知らないことを他人にばれる、自分が組織からパージ、つまはじきにされていることを、自分で自分を認めなくないからだ。

 例えて言うと、婚活パーティで、最後は壁際で同性同士で固まり、「僕たち、飲みに来たんだ。実は彼女がいるんだ。女性との出会い目的で参加したんじゃないさ。寂しい集団じゃないよ。」と、取り繕うようなものともいえる。

 最後は、そんな自分にも嫌気がさしてくるだろう。

 転職者に残された自由は、辞表を書くことだけだ。

 貴方の会社に、会議規定が存在しているのだろうか。
 仮に、存在したとしても、その文面どおりの運用がされているのか。必ずしもライン管理職のみの参加とする必要が無いという情報、もしくは、参加者から議題の一端を聞き出し、規定と実態の乖離が無いか調べておくことをお勧めする。明文化されていたとしても、一見、合法的だと体裁を整えていても、果たしてその運用実態はどうのか、是非とも把握したい。

 その後、上司が代ったり、貴方が成果を挙げたり、社長が貴方を褒めたり、あなた自身に少しでも追い風が吹いてきたときに、その事実(規定と実態の乖離)を穏便に出してみるべきだ。

 あなたが、その理不尽さを受け入れれば受け入れるほど、参加者たちは、そのうち、「リーダー職のみで忘年会」と言い出すはずだ。
 悪意のある者は、仲間外れをあらゆる領域に拡大して応用してくる。
 あくまでも「合法だ」と、ほくそ笑みながら。

                            以 上

※参考記事

実話。前任者からの引き継ぎ無し!転職者が最も恐れるその暴挙。by転職定着マイスター川野智己


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