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土竜のひとりごと

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エッセイです。日々考えること、共有したい笑い話、生徒へのメッセージなどを書き綴っています。
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2021年7月の記事一覧

第219話:胸痛テスト

第219話:胸痛テスト

[ 日本語雑話 :ぎなた読み]

ぎなた読みという言葉遊びがあって、これは文章の区切りを間違えて読んだり、またはわざと変えて読んだりすること。

というのを、

と読んだことに由来するらしい。

古典的な例で有名なところでは、

一休さんの逸話
ここではきものをぬぐべし
・ここで、履物を脱ぐべし
・ここでは、着物を脱ぐべし

近松門左衛門が数珠を注文した逸話
ふたえにしてくびにかけるじゅず
・二重

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第220話:バイクとさよなら

第220話:バイクとさよなら

昨日、バイクを収めてきました。
ヤマハ VXS950a ・・8年間乗りましたがお別れしました。

バイクに、それこそどこにでもいる「バイクキチガイ」の若者のような強い思いがあったわけでも、ヘアピンカーブに車体を倒してビュンビュン突っ込んでいくような技術や度胸があったわけでもないのですが、僕にとってバイクは、あえて言えば「憧れ」くらいの位置にあるものだったかもしれません。

免許を取ったのも37歳。

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第120話:オノマトペ

第120話:オノマトペ

森山良子にサトウキビ畑という歌があって、これはなかなかにいい歌だと思う。フォークで育った僕らには懐かしい調べだし、彼女の透き通った歌声や歌唱力の素晴らしさはまがうべくもない。
沖縄戦の悲劇が切なく歌われていることもサトウキビ畑の哀切な響きを魅力あるものにしている。

同時に、何と言っても、あの「ざわわ」という言葉が繰り返し繰り返し歌われて、それが耳に心地よい。「ざわわ」はサトウキビが風に揺れる音だ

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第140話:カミさんについての近況

第140話:カミさんについての近況

ウチのカミさんはトンチンカンなのであるが、そのトンチンカンは、ここのところもとどまるところを知らない盛況ぶりである。

ついこの間も、写真の現像をしてもらいに行ったはいいが、カメラの「きたむら」でもらった割引券をカメラの「きむら」で出してしまい、店員に「申し訳ありませんが、これは当店のものではございません」と言われたとしょげて帰ってきた。

「きむら・きたむら」は確かに紛らわしいので、これは同情に

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第15話:水戸黄門

第15話:水戸黄門

日曜日、久し振りに休みになり心地よく朝寝坊をした。朝、のんびりとテレビを見ながら朝飯を食べていると仮面ライダーをやっていた。僕らの世代の仮面ライダーとはまったく違うちょっと軽い趣きで、「今の仮面ライダーはこんななんだ」と違和感半分、懐かしさ半分に観ていた。

僕らが子供だった6、70年代は、今から思えばだいたいの子供向けのテレビ番組は「勧善懲悪」の話であった。ウルトラマン、ジャイアントロボ、マグマ

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第141話:人が山に登る理由

第141話:人が山に登る理由

僕がまだ学生の時、友人と飲んだくれて終電もなくなり、近くの後輩の下宿に転がり込もうとした夜のことだった。

近くといっても歩いて1時間以上もあったのだが、酔っ払っているから距離は気にならない。深夜、いい気持ちで歩いていると道端に大売り出しの大きな赤いノボリバタが立てかけてあった。見渡すが、近くに商店もない。
「こいつはいい」と僕はその赤いハタを担ぎながら、時々は振り回したりなどして気分良く歩いてい

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第154話:息子と射的

第154話:息子と射的

プレゼントをしたりもらったりするようになったのは、たぶんカミさんと知り合った頃からだと思う。子供の頃でも、例えば誕生日やクリスマスに親が何かを買ってくれるということもなかったし、逆に、自分が母の日に何かをやるとか、そんなこともなく過ごしてきてしまった。

昔の田舎のことで、そんな習慣も無かった。バレンタインデーなどというものが登場してくるのはずっと後のことだし、仮にあったとしても恐らくそんなものと

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第64話:ドラえもん

第64話:ドラえもん

随分昔のことになるが、ゴロゴロしている僕の顔の上にカミさんが突然ヌーッと顔を出し、
「ねえ、ドラえもんの耳ってなぜないか知ってる?」
と聞いてきた。
そんなことを聞かれてもドラえもんに耳がないことすら気づいていない僕に答えられようはない。

「はあ?」と首をひねると、
端から僕に答えられるとは思っていないのだろう、
「あのね、ドラえもんは昼寝していたらねずみに耳をかじられちゃったの。だからねずみが

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第218話:世界・他者を考える

第218話:世界・他者を考える

授業で岡真理さんの『彼女の「正しい」名前とは何か』(青土社)の中の「蟹の虚ろなまなざし、あるいはフライデイの旋回」を教材として読んでいます。授業メモみたいで恐縮、加えて長くて恐縮ですが、紹介してみたく思い、書いてみます。引用部分は自分の要約も混じり、筆者の考えとずれる部分があるかもしれないことをご承知ください。

ピュリッツアー賞を受賞した、ケビン・カーターのハゲワシと少女の写真がそれを目にした人

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第90話:窓際族的思考

第90話:窓際族的思考

30代半ばくらいだったろうか、悪い同僚に感化されて堅実で実直な僕もパチンコにのめり込んでしまった一時期があった。
わずかにあった貯金もパチンコをするたびに減り続け、給料日に小遣いをもらった直後にパチンコに行き、すべてを台に飲まれて1カ月を大変苦しい状態で過ごしたりした。
煙草代もないのでカミさんの見ていないスキを狙って財布から500円を失敬しようとして見付かったり、「150円貸して」と9歳の息子に

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第82話:紫陽花とぼやき

第82話:紫陽花とぼやき

[子育ての記憶と記録]

息子がまだ小さかった頃の話。

うちのカミさんは花が好きで、居間の花瓶には大概何かしらの花が活けられている。今は紫色のガクアジサイが、三本、ひっよっこりとさされており、可憐な上品な花を咲かせているのだが、花のある空間はやはりいいもので、カミさんに感謝する気持ちが思わずわいて来たりもする。

ただ、花が別の新しいものに活け替えられた時が問題で、それに気付かないと彼女が大変機

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