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土竜のひとりごと

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エッセイです。日々考えること、共有したい笑い話、生徒へのメッセージなどを書き綴っています。
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2021年7月の記事一覧

カミさんについての近況

カミさんについての近況

ウチのカミさんはトンチンカンなのであるが、そのトンチンカンは、ここのところもとどまるところを知らない盛況ぶりである。

ついこの間も、写真の現像をしてもらいに行ったはいいが、【カメラの「きたむら」】でもらった割引券を【カメラの「きむら」】で出してしまい、店員に「申し訳ありませんが、これは当店のものではございません」と言われたとしょげて帰ってきた。

「きむら・きたむら」は確かに紛らわしいので、これ

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第15話:水戸黄門

第15話:水戸黄門

日曜日、久し振りに休みになり心地よく朝寝坊をした。朝、のんびりとテレビを見ながら朝飯を食べていると仮面ライダーをやっていた。僕らの世代の仮面ライダーとはまったく違うちょっと軽い趣きで、「今の仮面ライダーはこんななんだ」と違和感半分、懐かしさ半分に観ていた。

僕らが子供だった6、70年代は、今から思えばだいたいの子供向けのテレビ番組は「勧善懲悪」の話であった。ウルトラマン、ジャイアントロボ、マグマ

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人が山に登る理由

人が山に登る理由

僕がまだ学生の時、友人と飲んだくれて、終電もなくなり、近くの後輩の下宿に転がり込もうとした夜のことだった。

近くといっても歩いて1時間以上もあったのだが、酔っ払っているから距離は気にならない。深夜、いい気持ちで歩いていると、道端に大売り出しの大きな赤いノボリバタが立てかけてあった。見渡すが、近くに商店もない。「こいつはいい」と僕はその赤いハタを担ぎながら、時々は振り回したりなどして気分良く歩いて

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射的

射的

プレゼントをしたりもらったりするようになったのは、たぶんカミさんと知り合った頃からだと思う。子供の頃でも、例えば誕生日やクリスマスに親が何かを買ってくれるということもなかったし、逆に、自分が母の日に何かをやるとか、そんなこともなく過ごしてきてしまった。

昔の田舎のことで、そんな習慣も無かった。バレンタインデーなどというものが登場してくるのはずっと後のことだし、仮にあったとしても恐らくそんなものと

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ドラえもん

ドラえもん

随分昔のことになるが、ゴロゴロしている僕の顔の上にカミさんが突然ヌーッと顔を出し、「ねえ、ドラえもんの耳ってなぜないか知ってる?」と聞いてきた。そんなことを聞かれてもドラえもんに耳がないことすら気づいていない僕に答えられようはない。

「はあ?」と首をひねると、端から僕に答えられるとは思っていないのだろう、「あのね、ドラえもんは昼寝していたらねずみに耳をかじられちゃったの。だからねずみが怖いの」と

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そういえば、We are the world、昔はやったわね

そういえば、We are the world、昔はやったわね

授業で岡真理さんの『彼女の「正しい」名前とは何か』(青土社)の中の「蟹の虚ろなまなざし、あるいはフライデイの旋回」を教材として読んでいます。授業メモみたいで恐縮、加えて長くて恐縮ですが、紹介してみたく思い、書いてみます。引用部分は自分の要約も混じり、筆者の考えとずれる部分があるかもしれないことをご承知ください。

ピュリッツアー賞を受賞した、ケビン・カーターのハゲワシと少女の写真がそれを目にした人

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ノミュニケーション

ノミュニケーション

まだ20代だった頃、新設校に勤めたことがあり、新設校らしく若者が集めらたこともあって、とにかくよく飲んだ。

みんなで飲みに出掛けるとワリカン負けしないようによく飲みよく食い、二次会は歌い踊りまくり、もう一軒まわっていい加減に酒も肴も腹に収まり切ったころ、誰かが焼き肉へ行こうと言い出す。

僕などはもう腹一杯でビールにも肉にも殆ど手を出す気にもならず、ワリカンの頭数としてそこに座っているだけである

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紫陽花

紫陽花

息子がまだ小さかった頃の話。

うちのカミさんは花が好きで、居間の花瓶には大概何かしらの花が活けられている。今は紫色のガクアジサイが、三本、ひっよっこりとさされており、可憐な上品な花を咲かせているのだが、花のある空間はやはりいいもので、カミさんに感謝する気持ちが思わずわいて来たりもする。

ただ花が別の新しいものに活け替えられた時が問題で、それに気付かないと彼女が大変機嫌を損ねることになる。このガ

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