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雨の記憶 【詩と絵 〜実験の欠片〜】
そっと窓を開けて
雨を眺めている
街並みを洗う
幾多の雨粒
窓枠に肘をついて
ただ
眺めている
雨の匂いに
滲む記憶
ちいさな長靴と
水たまり
大きな手のぬくもり
シャツを濡らして
走る少年
渡せなかった折り畳み傘
ぼんやりと鮮やかな
幾つもの景色
今はもう失われた
幾つもの景色
そっと窓を閉じて
雨音を聴いている
屋根を叩く
不規則なリズム
灯りもつけず
ただ
聴いている
レファヌキ共和国の道案内(リレー小説「レファヌキ共和国の物語」のご紹介)
ようこそ、レファヌキ共和国へ。
この国は、ひとりのクリエイターが呟いた、たった一言から生まれた、架空の国です。
沢山のクリエイターを惹きつけて、数々の音楽や、物語や、絵画の舞台となったこの国を、あなたも旅してみませんか。
その1 建国
1 あーば一さんの一言
始まりは、2021年10月、あーばーさんのTwitter(現X)の一言でした。
「ありそうで無い国名を教えて下さい」という
波を鳴らして【小説】
第一部 山の風
夏休みに、妙子さんの家に行くのは、楽しみでもあり、憂鬱でもあった。
大好きな妙子さんの家は、山の上で、小学生の私は、乗り物に弱かったから。
新幹線を降りた後で、カーブの多い山道を走るバスで過ごす二時間は、永遠の様に長かった。
「すみれ、見て。ほら、もうすぐ滝が見えるよ」
母が、私の気を紛らわそうと、窓の外を指す。私は黙ってうなずく。
本当は、うなずくのも辛く
恋の海葬【ショートショート】(お題「塩人」)
「山上サクラさんのお宅ですか?」
玄関先に訪れた塩人の少年は、貝殻を手にしている。大叔母の言った通りだ。
「サクラは、私の大叔母です。十五年前に他界しました」
私は懐から、形見の貝殻を取り出し、少年の貝殻に重ねた。
★
二枚の貝殻は、僕の手の上で、ぴったりと合った。伯父から聞いていた通りだ。
「僕は、大浜カナメの甥です。伯父は、先月亡くなりました。遺言で、遺灰を届けに来ました」
アナログ巌流島【ショートショート】
「10分後、巌流島に着陸します」
アナウンスを聴いた途端、夫は、防護服のグローブで、私の手を握りしめた。
「巌流島だ! アナログの巌流島!」
「痛いよ。落ち着いて」
「あ、ごめん」
夫は慌てて手を離し、深呼吸した。こういう素直なところ、可愛いよな。
★
古代、人類が防護服無しで、地表で生きていけた頃も、新婚カップルは旅に出たらしい。
バーチャル旅行全盛の昨今も、新婚旅行は、
顔自動販売機【ショートショート】
「30分遅れます。誠に申し訳ございません」
上司宛にメッセージを入れると、バス待ちの列から離れた。
何て事だろう。よりによって、顔を忘れてくるなんて。
帽子を深く被り直す。眼鏡とマスクも着用している。一見して、顔が無い事に気づく人間は居ない筈だ。
急ぎ足で角を曲がり、細い路地へ向かう。家に戻るより早い。
路地の先の小さな公園は、いつもながら寂れていた。人目が無いのを確認して、中