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「君たちはどう生きるか」感想
ナウシカの映画をつくったとき、宮崎駿の最初の案が冗長すぎて、周りの人の意見で短縮したけど、それに納得できなくて漫画を描いたという話があるけれど、宮崎駿が自分のやりたいことを自由にやるとこうなるんだろうなという気がした。それはリンチがツインピークスの続編で抽象的な世界に走ったのと似ている。やりたいことをやりたいようにやるとこうなる。そしてそれは多分、作品としての完成度とか分かりやすさとは必ずしも比例
もっとみる「17歳の瞳に映る世界」を見て
数日前にRoe v. Wadeが転覆されたのをきっかけに、気になっていたこの映画を見てみた。一番印象に残ったのは、これがアメリカ人の17歳の少女(たち)を主人公に据えた映画でありながら、ほとんど彼らが余計な言葉を交わさないことだった。アメリカ人のティーンエイジャーの少女が映画に登場するとき、大抵彼女らはおしゃべりで、あるいはシャイだとしても、なにかしらやりたいことを持っていて、最終的には強い意思と
もっとみる「柚木沙弥郎 life・LIFE展」@PLAY MUSEUM 感想
柚木沙弥郎展を見に行ってきた。
今日は起きてすぐ、なぜかホックニーのペインティングのことを考えていて、80過ぎてこの感受性ってすごいよなぁと思っていたら、柚木沙弥郎も現在99歳でまだ現役だという。いくつかここ何年かの作品も展示されていたが、とても80-90代でつくったとは思えない。
最近、自分が20代には聞こえるというモスキート音が聞こえなくなってることを知って、ああ本当に知らないうちに歳をと
なぜこんなにスピリチュアルに抵抗があるのか
友だちが本格的にスピリチュアルな方向に行き始めて、スピリチュアルについて考えることが最近増えている。考え始めると意外とその友人以外にもスピリチュアルに傾倒しているというか、そうしたことに抵抗感を示さない人が多いことに気づいて驚く。しかも自分と似たような趣味の似たような界隈にいる人間に。ひさしぶりに別の知人の妻のインスタグラムを見てみたら、カードリーディング?といってタロットカードみたいなのを買って
もっとみるマチネの終わりに 感想
タイトルに惹かれて読んだけど全然良くなかった。いくつか理由はあると思うけど、一つには風景がないというところだと思う。説話的に必要な部分はもちろんあるけれど、単なる飾りか説明的なものにとどまっているように思う。特にこういう世界各地で展開する話は、風景とか情景描写で実は作品世界の奥行きというか、空気みたいなものが決まってくる部分があると思っていて、けれどこの作品にはそれが全然効いていないせいで、肝要な
もっとみる溝口健二「武蔵野夫人」
良くなかった。物語の展開に必要な出来事以外全て省かれていて、なんの叙情性も残ってなかった。勉がカメラで集合写真を撮って、その写真のなかの自分の姿を見た道子が、もう自分は若くない、と思うみたいなシーンがどう映像化されるんだろうと思って楽しみにしてたら、全てカットされていて悲しかった。最後の武蔵野の郊外化された風景はよかったけど、それだけだった。脚本が福田恆存で、たぶんそれが良くなかったんだと思う。大
もっとみる映画「Waves」感想
想像より遥かに良くなかった。ここ最近見た映画の中で一番つまらなかったと思う。
ポスターとかビジュアルのイメージより内容が重いから、それが評価の低い理由なんじゃないかって友だちがいってたけど、むしろこれだけ重い内容を、これだけぺらぺらな感じでやってしまっているところにかなりの憤りを感じた。脚本も編集も構成も演出も全部良くなかったし、何もかも全部ちぐはぐで、一本の映画としての優雅さ、ダイナミズムが一