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【徹底解説】バジルは紫の光でよく育つ?知れば知るほど面白い「色」の科学。

近年、農業従事者の減少や災害による野菜の安定供給の問題などから「植物工場」が注目され始めています。

植物工場とは、光にはLEDを、土の代わりに培養液を採用し、温度や湿度、空調などすべてが管理された室内環境で農産物を育てる、というまさに工場のような農業形態です。

今回は、フランスのバジル工場で「紫」の光を使うというニュースがあったので、その理由を解説していきます!

ニュース本文はこちら👇


「光」はよく働く「シェフ」?

小中学校の理科で、植物が栄養をつくるためには光合成が必要だと学びました。これは酸素と二酸化炭素という材料を用意し、葉緑体(クロロフィル)に光エネルギーを与えることによって、でんぷんなどの生命維持に必要な糖と酸素を作り出すというものです。

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もう少し詳しく言うと、葉緑体には複数種類の葉緑素が存在し、それぞれが光エネルギーを得ると電子の動きが活発になる励起状態になり、水を水素イオンと酸素にする酸化還元反応が起きます。さらにNADPH2+とATPという合成酵素を作り出し、水素イオンと二酸化炭素から糖を作り出します。

つまり、葉緑体という調理室で、水と二酸化炭素という材料が用意された状態で、光エネルギーというシェフがレシピを見ながら糖とおまけの酸素という料理を作るイメージです!

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近年では、この仕組みを人工的に実現しようとする「人工光合成」という取り組みもあり、植物を越える有機物変換効率を記録するなど、環境問題の解決策としても注目されています。


光合成には「色」が大切

ここで重要なのは、光合成に必要なのは「光のエネルギー」であるので、太陽光である必要はないということです。

そして、その光にも種類があります。

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私たちが目で見ることができる光は「可視光」と呼ばれ、その波長によって色が決まります。モノに色がついているのは、その色を反射しているからです。ちなみに波長が短いほどエネルギーが強いため、放射線と呼ばれるガンマ線や日焼けや皮膚がんの原因になる紫外線は、私たちのDNAを傷つけてしまいます。

ここで、光合成の話に戻すと、葉緑体はほとんどの波長の光を利用することができますが、得意な波長と苦手な波長があります。

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まず、緑色の光の波長はほとんど吸収することができません。葉っぱが緑色をしているのは、太陽光の白い光=様々な色を合成した色を受けて、緑色のみ吸収せずに反射しているためです。

そして、一番吸収率が高いのが赤い光です。そのため、白い光を表すために、赤緑青の光を合成して無理やり表しているLEDを植物工場で使用するよりは、効率のいい赤を単色で使う方がよいということになります。

また、発芽の時期は波長の短い青い光が成長を促進するとされています。一方、青のLEDは材料が高く、赤の10倍以上するということもあり、コストの心配はあります。


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これで、なぜフランスのバジル工場が紫に光っているかわかります。赤に近い紫のこのLED照明は、赤と青の光を出していることによるものです。

光→色→波長→エネルギーと考えてみると疑問が少しづつ紐解けると思います!色の特性を利用した仕組みは他にもあるので、これを機に世界の見え方が少し変わると嬉しいです!

*色についての参考本👇


おわりに

最後まで見ていただきありがとうございました!

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