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Essay

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日常の一コマを切り取っています🐈
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#家族

その記憶は寒くて、甘く、そしてあたたかく

その記憶は寒くて、甘く、そしてあたたかく

この前の土日は、朝、目を覚ましただけで、
空気の色が白くなったのがわかるような、
そんな曇り模様でした。
色が褪せ始める草木もあれば、
嬉々として衣を赤や黄、橙に変化させる葉もあります。

窓の外を眺めると、
鼠色の雲が垂れこめていました。
"独り" という言葉も浮かびそうな
しんとした寒さが、窓越しで感じられます。

でもわたしは、薄れない、わたしの中での大事な記憶を
思い出し、冷えている指先

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母の日に帰ったら

母の日に帰ったら

この前、母の日の前日に帰省しました。
母と妹が、祖父母の家に引っ越してから、帰るのは初めて。
その帰った日というのは、付き合っている彼のご両親に、同棲のためのご挨拶をした日でした。

扉を開けて「ただいま~」と入ると、
「おかえり~挨拶どうだったー?」と二階にいた母が降りてきました。
彼のご両親が明るい方だったとか、手巻き寿司をご馳走になったという話をしていると、寝室にいた祖父やお風呂に入っていた

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母と妹の、お引越し

母と妹の、お引越し

この間、産まれ育った実家へ帰りました。
馴染みのある駅前、商店街、家に着くまでに続く街路樹。
もう当分はこちらの実家には来ないのだろうと思うと、変な気分。
人とすれ違うたびに、どこか落ち着かないような、
なぜか私が緊張して、鼻からゆっくり息を吐いて家に向かいました。

家に着くと、もう母方の祖父母が着いていて、
玄関には溢れんばかりの、最初は車二台で運びきれるのか心配になったほどの荷物が置かれてい

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女三人で温泉に浸かって

女三人で温泉に浸かって

この前、母と妹と一緒に旅行に出かけました。
考えてみれば、三人で旅行に行ったのは私が大学生のときが最後だった気がします。
行き先は別府。
私自身、別府には行ったことがなかったので、行く前からわくわくしていましたが、母の方が娘二人よりもはしゃいでいるようでした。

時折、「こんなところで写真撮るの!?」「さっき撮ったじゃない!」と思いながらも、母との思い出にもなるか…と気を取り直して三人で至るところ

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22歳

22歳

今日、妹が22歳になりました。
無事、就職活動も終わったみたいで、本人が一番ほっとしていると思いますが、私もよかったなと嬉しくなりました。

そんな中、昨日は家族でお誕生日祝い。
しゃぶしゃぶを食べて、その後はフルーツタルトのバースデーケーキです。
娘たちが二十歳を過ぎてもバースデーソングを歌いたがる母につられて、
「ハッピバースデートゥーユー」と歌ってお祝いをしました(笑)
本人は気恥ずかしそう

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おやつの時間

おやつの時間

このGW中、実家に帰り、ゆっくりしていました。
いつもなら帰っても一泊するだけなのですが、今回は長めに泊まりました。

学生時代のように自分のやりたいことと少しの家事の手伝いで休日を満喫できるこの贅沢感。
書きもの、読書、映画、英語の勉強等々。
「明日はなにしようかな」と考えているうちに、ふと「あ、家族に最近自分が作ったもの、食べてもらってないなあ」と気付きました。

一人暮らしを始める前は、たま

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祖父の作る朝ごはん

祖父の作る朝ごはん

休みの日によく目玉焼きを焼くのですが、
その時にふと亡くなった祖父のことを思い出すことがあります。

私の実家は二階が祖父母の家、
三階が私の家族が住む部屋と賃貸用の部屋になっています。
だからまだ私が小さかった頃、幼稚園が終わると
祖父母の家に遊びに行ったり、泊まりに行ったりしていました。

泊まりに行くと、その翌日の朝、祖父が朝ごはんを作ってくれます。
その内容は目玉焼きとソーセージ、レタス、

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妹との帰り道

妹との帰り道

先日、実家に帰った日。お昼ご飯を母と妹と食べに、近くのイタリアンに行きました。

ピザやガーリックトースト、パスタをお腹いっぱいに食べて、満ち足りた気分。食後、母はこのまま自転車でスーパーに行くと言うので、妹と家まで歩きました。

春の、あたたかくて、でもちょっと乱暴な風を受けながら、
「お腹いっぱいだねえ」
「くるしいね」
と二人して言い、歩きます。

話題は妹の就活や、就職したら一人暮らしする

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実家に帰った日

実家に帰った日

電車と歩きで大体2時間あれば、実家に着きます。仕事の繁忙期も終わったので、実家でゆっくりしようと有給を取って帰りました。

実家に帰るのは昨日で2回目。1回目も2回目も扉を開けて思ったのが「あれ、実家の匂いってこんな感じだっけ」です。
いざリビングの扉を開ければ、家具の配置も特に変わっていないので、すぐに「自分の実家だなあ」と、落ち着くのですが。すっかり一人暮らしをしている自分の部屋のにおいに慣れ

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父がきた

父がきた

一人暮らしを始めて一週間経った頃、
父が車で私の家に来てくれました。実家に残っていた私の荷物を届けるためです。

その日、私は仕事だったので、夕方荷物を受け取った後に2人で駅前の商店街の方に夕飯を食べに行きました。

私の家は坂の途中にあるので、駅前に行くためにその坂を登って、さらに下っていく必要がありました。
2人で一緒に歩いているのですが、気付くと父は私より少し後ろで歩いていました。
私が歩く

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