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境界線とその周辺

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#嶌田井ジャーナル

アウェイ アンド アウェイ―境界線のあわいに(海外生活編)

アウェイ アンド アウェイ―境界線のあわいに(海外生活編)

 南回りは遠いが安い。そう聞いていたので、フライトはクアラルンプールとドバイ経由でも構わなかった。フルーツの香りがするクアラルンプールの空港で、パイナップルジュースを飲んだ。言葉もわからなかったが、喉が乾いていたのでジュースは飲みたかった。ドバイの空港では、銃を持つ兵士があちこちにいた。息が浅くなった。空港では家電も売っているらしかった。でもそこで家電を買う理由はなかった。ロンドンでは下宿をするの

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2018年のLGBT― 現実と創作、そして『しまなみ誰そ彼』

※本稿は漫画『しまなみ誰そ彼』のネタバレには極力配慮しておりますが、台詞などへの言及を含みます。また逆に物語に大きく踏み込んだ紹介ではない旨ご了承ください。

「お前ホモ動画観てたん?」
「お前、そうなん?」
「うわーやばいやばい。」
「そういうの俺、絶対無理。」

* * *

 古い木の梁。ゆっくりと回るシーリングファン。不揃いな、でもどれもやわらかそうなソファ。蓄音機から控えめな音量で流れる

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個人と系譜〜ニューウェーブ短歌30年に際して〜

 ここに「近現代歌人系譜」がある(青木五郎ほか監修『クリアカラー国語便覧第四版』数研出版)。正岡子規から始まって、伊藤左千夫、土屋文明、近藤芳美、岡井隆などが家系図風に書かれている。これは系譜を示すのであろう。前衛短歌は少し離れて置かれ、塚本邦雄、岡井隆、春日井建、寺山修司の名が挙がっている。
 短歌には「師」というものがあるらしい、と知ったのはそう昔のことではない。歌人や新人賞の上位入賞者たちの

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嶌田井ジャーナル序文

嶌田井ジャーナル序文

ある時、息が詰まりそうになりました。
その場所は、わたしが心地よいとは思えない場所でした。
心地よかったこともあったのですが。

どこか遠くへ行ってみたいと思いました。
そこへ行きさえすれば、息ができると思ったのです。
でも今までいた場所から離れたら、わたしの居場所は
もうなくなってしまうかもしれないとも思いました。

離れようと一歩足を踏み出しました。
会社も辞めたし、飛行機にも乗りました。

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『嶌田井ジャーナル0号』本文をnoteに掲載します

※2020年5月9日、一部改訂しました

こんにちは。嶌田井書店です。
先週は第27回文学フリマ東京、商品を購入してくださった皆様、ご挨拶くださった皆様、また関係各サークルの皆様、本当にありがとうございました。このような場でしか出会えない方が多く、改めて直にお会いできる場の大切さを感じました。

さて、その文学フリマにて頒布開始した「嶌田井ジャーナル0号」ですが、手にはとれなかったものの内容が気に

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