そんな告白もあるんだね。

「ていうか、かなり好きです」

「は?」




去年の年末、同時期にふたりから告白をされた。
結婚的な話がなくなったばかりの30代の立場でそんなモテ期到来ある?と驚いたり
なんでいっぺんに来てしまうのか、と
行き場のない贅沢な複雑さに悩んだりしてはいたのですが、
好きだと言ってくれた相手のひとりが
なんだか自由な恋愛観だったので今更ながら記録します。




最初から「可愛いですね」「タイプです」とは言われていて、
まあでもそんな話はごまんとあるし
言い方は悪いが、適当に相槌を返していた。



あるイベントで他の男性客と話していると、
「仲良いですね」と話に入ってくるような
恐れを知らない明るい人。



帰りも「送りますよ」と話をひとりで進めている。




もちろん他の参加者たちには
「あのふたり、いつのまにそういうことに」
みたいな反応で見送られる。




え、いや、ちがう。



私は本当はその場に、別に気になっている人がいたのだった。




ただ、親切をむげにする勇気もなく
「本当に大丈夫だったんですけど、すみません」
と言いながら夜道を歩いた。




突然「ていうか、好きです」
と告げられた。




─はい?




いやいくらなんでも早すぎるだろう。
まだ数回しか会っていないし。




相手からの好意は薄々感じてはいたものの、
そのあまりの告白の早さにあっけにとられ
まずは笑ってしまった。

(その反応も今から考えると申し訳ないが…)



「え、あの、あはは突然すぎません?はっはっは」

「ちょっと笑いすぎですよ。本当に、結構好きなんですよ」


「え、ああ、そうなんですか?本当に?ありがとうございます……」



それ以上何を言えばいいかも分からず、
そのまま歩いた。



断る思考にすら達していない。


「とりあえず好きと伝えたかっただけなので」
と、もちろん手を出してくることもなく
見送りは終了した。



好きと言われる前、趣味が同じことが発覚し
「その話をするために」飲みに行こうと誘われていた。
彼氏もいなかったので私はうっかり承諾して、
飲む日付まで決まってしまっていた。



「飲みに行った日にきちんと断ろう」


発想を転換して、飲みに行くことにした。




こう思えるのも、相手がちゃんとクリーンというか
「こちらの了承なしでは手を出してこない」相手だと知っていたからなのですが
そのあたりの勘所が不安な人は、
真似しないほうが良いです。







しかし実は、確認したいことがもう一つあった。

私の記憶が正しければ、
その人にはつい最近まで
「気になっている年下の女の子」がいると
人づてに聞いていたからだ。




脈絡なさすぎですよね。
このまま書き上げてしまいたいので、続けます。




とにかく
いったいその女の子とはどうなったのか?


告白後に最初に抱いたのはその疑問だった。



その女の子とダメになって、
いきなり方向転換している可能性もあったから
笑ってしまったのもある。




それともまさか、堂々二股宣言のつもりなのか。
ならばなおさらダメじゃないか。
(私はまじめです)






当日の飲み自体は楽しく進んだものの、
いつ言おう、いつ言おうと迷っていた。





告白を断ると同時に、
二股じゃないかどうかの確認もするのは
まじめな私からすると、気が重かった。





もうすぐ帰る時間だ。




昔の写真を見たその人が、


「今のあなたが一番可愛いですよ」
「絶対今のほうが素敵ですよ」



そう褒めちぎってきたので、
今だ、と 話をシフトした。





「あのMさん。口説いちゃだめです」

「私、ほかに好きな人がいるんですよ」



「え?」




「─いや、この前何度も好きだと言ってくれたので、それに対する返事をせねばとずっと考えていて─」




「ああ!なるほど」



「ん?」


妙に明るい。



「好きですよ。ただ、付き合ってくださいと言ったわけではありません」




「んんん!?」


「それとはまた、今は話が違うというか」



混乱した。




「ほんと好きです。ただ、僕には超好きな子もいるんです




「おーい!?」




自分の辞書にはない恋愛観で、混乱したのだ。



痛む頭を抱えながら続ける。



「それって前にみんなが話していた、年下の?」
「そうです。20歳の」
「はたち……」


年下すぎてくらくらしてしまう。




「なるほど、そうか?あなたは好きな人がいっぱいいるタイプなんですね」



全然なるほどじゃないのだが、
つまりそういうことだろうと。




そんなに気軽に好きだと言った経験、
いやもしかしたら私もあったかもしれないが
それはあくまで恋愛感情がないときに
ファンの目線で、明るく「好きなんですよね〜」と言う場合に限るのである。



あんなにふつうに告白っぽいオーラ出して
(ファン的な意味で)好きだと言ってくる人がいたとは。



向こうはそんなに軽いノリなのに、
勘違いして重く考えてしまったじゃないか。



途端に恥ずかしくなり、取り繕った。




「まったく、それならそうとちゃんと説明してくださいよ〜。本気で考えて悩んじゃったじゃないですか?」




しかしここから
また彼の複雑な心理を垣間見た。




「というか、最初からあなたは僕のことは好きにならないなと思っていたので。」


「え?」


「分かりますよ、そりゃあ。同じ空間にいるのにあんなに離れて座られては。」


「……あ」



ある日、席が隣り合わせになったときも
確かに私は無意識にその人と体が触れないようにしていた。



嫌悪感があるわけではなかった。
「その気がない人」には、そうすることが誠実だと思っていたからかもしれない。




「届かないな、と思ってるんで。」



ただ明るいだけの人ではなかった。



気軽に伝えたと思っているのは
もしかしたら私の勘違いだったのかな。




ちくりとどこかが痛んだ。




「まあただ、あなたから付き合ってくださいと言われたら真剣に考えてしまうかもしれないですね……」


ん?



「ていうか、僕が20歳の子に振られたら付き合ってくださいよ。それならどうですか?」

「あなたはずっと僕の中の上位にいるんで」




やっぱり前言撤回。

全然意味わからん!



なぜいつのまにか立場が逆転している雰囲気になるのか。

あぶないあぶない、
しんみりしてしまうところだった。




ちぐはぐコントのような飲み会は、それで終了した。




20歳の子とは付き合っているわけではないらしかった。

LINEのやり取りからどう恋愛に発展させればいいか悩んでいるとのことで、
とりあえず、20歳の女の子が好みそうな文体を勝手にシェアして(ライターっぽい素振り)
「この絵文字はおじさんぽいから気をつけたほうがいいですよ」
なんて失礼なアドバイスまでしてしまった。




「お互いの恋愛について、また報告しましょうよ。近いうちに」

「そうですね!じゃあまた」


私はそう答えて、改札の中へ入った。








それから全く連絡を取っていない。


たまに彼の妙な明るさが眩しく思えてしまう。



きっといつ話しかけても怒らないだろうし
友達ではいたかったけど。



あんなに気軽だと思っていたのに
その後は何も連絡してこないところを見ると
結局、ものすごく、
ちゃんとサインを出してくれていたのではないか。


そう考えると、複雑な気持ちになる。




届かない、って、なんなのだろう。


ずるいよなあ。それもまた。




お互いの恋愛について
気兼ねなく報告できるような
そんな異性の存在って、本当に成立しますか?




私もあんなふうに普通に、でも
きちんと好意を伝えられる人生に憧れているのかな。
笑っちゃうぐらい気軽に見えても、
きっかけはきっかけ。



人の心の中身を知る経験って
人生でそんなに多いわけじゃない。





そんな勇気と軽快さに、
少しだけ頼りたくなる日がきても


「仲の良い異性の友達」ほど
時に残酷なものはないと知っているから


私はたぶん、なんにも伝えられないし
聞けないんだ。



ごめんね。
ここでこっそり、謝らせてね。






どんな形であれ好きと言ってくれた人には
なんとなく、嘘はつきたくない。

しっかりしなきゃなあと、
勝手に元気をもらっていることを

きっとあなたも含めて、
誰も知らない。




#日記 #エッセイ #コラム #文章
#散文 #人生観 #熟成下書き
#恋愛 #恋 #幸せ #告白 #恋愛エッセイ #男女の友情
#劣等感 #内省 #眠れぬ夜のことば紡ぎ
#自己肯定感 #ことば #言葉 #過去 #考えごと #詩 #ポエム
#心の中 #思考 #日常 #記録 #diary
















この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?