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環境コストについて、ドイツの激安スーパーPenny Marketの施策に考えさせられた

Penny Marketというディスカウントスーパーがある。
このスーパーはとにかく商品が安い、ということで有名なのだそうだ。ドイツを拠点としてオーストリアやハンガリー、イタリア、ブルガリアなどへも展開がある。

このPenny Market(以下Penny)が今週、いくつかの商品に対し「真のコスト」を付加した価格で商品を販売するキャンペーンを行なっている、というニュースを見かけた。

この「真のコスト」の付加により、商品によっては倍の価格になっているそうだ。

一週間・一部の商品だけ、と限定的とはいえ倍の価格にしては商品が売れなくなってしまうのではないか?と思ったのだが、「真のコスト」とは何かを調べてみると非常に興味深い真意が込められた施策であることが分かった。

なお、このnoteの内容はPennyのHPやドイツ語のニュースなどを調べて感じた内容である。現在ドイツ語勉強中の身であるため、正確なニュアンスや文脈を捉えることができていない箇所も存在するかと思う。なんとなくこんな感じなのか、と雰囲気を感じてもらえたら幸いである。

「真のコスト」とは

今回のキャンペーンは消費者に「商品に乗せられていないあらゆるコスト」と向き合わせる形となった。

つまり真のコスト=「生産から購入までの間にかかっている社会的及び生態学的影響など、あらゆる環境負荷をフォローアップするためにかかる費用」のことを指している。

普段一円でも安く購入しようとしている商品が、環境にどれだけの負荷をかけているのかーー
「お金」で算出されたことによって、消費者はその大きさに驚いたに違いない。

なお、「真のコスト」は下記4つを要因とし、グライフスヴァルト大学とニュルンベルク工科大学によって科学的に算出された。

気候

ディーゼル駆動のトラクターや牛から排出されるCO2やメタンなどが及ぼす環境への悪影響

肥料などが地下水、貯水池などに及ぼす悪影響

土壌

農業用に使用されることによって低下する土壌品質について

健康

農薬などによって引き起こされる健康被害について

これらを試算した結果、モッツァレラチーズは0.89ユーロから1.55ユーロに、ソーセージは3.19から6.01ユーロに値上げされた。

上乗せされた金額は、この商品一つを作るためにかかる環境保護のための金額である。

一つの商品にどれだけの環境負荷がかかっているかということを、私たちは普段考えない。認識すらしていない人がほとんどなのではないだろうか。

消費者の反応

Pennyが今週行っているこのキャンペーンは、環境問題をより消費者に認識させるために行った施策である。ディスカウントスーパー=激安スーパーでこのキャンペーンが行われているということに私はとても驚いた。
安く売るために結果として環境に負荷をかけるような工程を挟んでいる可能性だってあるはずだ。隠しておきたいであろう真実を「真のコスト」として浮き彫りにした企業の姿勢に、ちょっと感動してしまったのである。

キャンペーンに対する消費者の反応はさまざまだ。
より多く支払い、環境のために何かしなくてはならないと思う、と肯定的な意見がある一方で、所得が低ければ安いものを買うしかなく、環境保護のために価格を上げることは現実的ではないという否定的なものもあったようだ。

賛否はあるが、Pennyの「環境コストを消費者に認識させる」という目的は達成されたのではないだろうか。
否定(というか拒否)する人も、これだけのコストがかかっているという現実を感じることになったのだ。そこに現実性がなかったとしても、意識の種を植え付けることはできたのではないだろうか。


Pennyはこのキャンペーンで上乗せされた「真のコスト」による収益に5万ユーロを追加した金額を、Zukauftsbauerというプロジェクトに寄付するという。

これは農業や畜産の持続可能性を高めるためのプロジェクトで、環境に配慮した農業の推進を目的としている。

日本の未来は?

遠い国ドイツのあるスーパーで行われたこのキャンペーンの内容は、日本にも全く関係のない話ではないだろう。

日本では物価高が続いているが、その要因の一つにこうした環境コストが関係してくる可能性だってあるかもしれない(問題を広い視野で見れば、既にかかっているという見方もできると思う)。
さらに言えば、将来「真のコスト」が税金などの形になる未来が来るかもしれないのだ(今以上の物価高になるという可能性もある)。

すでに一部の商品には環境税が課せられているが、それがネギ1本、じゃがいも一個に対しても課せられるとしたら?
考えただけでちょっと恐ろしい。

意識の種

モノを作る過程でかかる環境負荷とそのフォローアップにかかるコストについて、じっくり考える機会はこれまであまりなかった。
今回のこのニュースは、こうした見えないコストについて向きあう一つのきっかけになった。

私がミニマルに生活したい理由の一つに、環境に配慮したい、という思いがある。
と言っても合成洗剤を使うこともあるし、化学繊維の服も買うし、エアコンも使う。
けれど野菜を買いすぎてダメにして捨ててしまうとか、必要以上にティッシュペーパーを使うとか、無駄なことはしたくないし、資源を有効活用して生きていきたいと思っている。

Pennyのキャンペーンに対して否定的な意見をする人の気持ちも分かるが、否定的な意見をした人の心にも「意識の種」は蒔かれただろう。
別なタイミングでこの施策について思い出し、何か良い方向に行動を起こすかもしれない。

意識の種が色々な人の心に蒔かれることで、今すぐではなくても将来大きな身を結ぶ可能性だってある。


私も心の中に、常にこの「意識の種」を宿しておきたいと思っている。


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