マガジンのカバー画像

映画

14
映画は面白い。色々な映画をご紹介。
運営しているクリエイター

記事一覧

映画館小景

映画館小景

映画は映画館に行け。と偉そうにこの記事を始めようかとも思ったが当方もそこに足を通う回数がめっきり減ってしまった。これは自戒の念を込めて書き置く記事としよう。

何故、人は映画館に行くのであろうか。それはいうまでもなく映画を観に行く為だ。然しそれだけの為に映画館という空間に赴くわけでは決してない。好みのアーティストのライブに足を運ぶのが単に音楽を聴く為だけならばレコードで聞けば良い。恋慕ある相手と付

もっとみる
人生の肯定者 アレハンドロ・ホドロフスキー

人生の肯定者 アレハンドロ・ホドロフスキー

私が最も敬愛する映画監督は二人いる。スタンリー・キューブリック(1928〜1999)とアレハンドロ・ホドロフスキー(1929〜)だ。どっちが好きなんだ?と問い詰められてしまえば些か答えに窮してしまう。私の中でその質問は貴様は母が好きか、父が好きか、と問われるのと同等の重みがある。
しかし一つ確実に言えることは存命中の映画監督ならばアレハンドロ・ホドロフスキーを右において抜きん出る映画監督は私の中に

もっとみる
何故魔法"少女"なのか。 『魔法少女まどか☆マギカ』考

何故魔法"少女"なのか。 『魔法少女まどか☆マギカ』考

『魔法少女まどか☆マギカ』と私という男

十年代を彩ったジャパニメーションというのはざっとあげるに細田守の到達点であり新たな出発点『おおかみこどもの雨と雪』(2012)、宮崎駿の引退作(とされていた)『風立ちぬ』(2013)、大ヒットを記録した『君の名は。』であろう。ではアニメーションシリーズに限った話をすると何であろうか。実は小生、テレビドラマ及びテレビアニメはあまり見ない人間なのでその事情に疎

もっとみる
007の内幕 『No Time to Die』評

007の内幕 『No Time to Die』評

先日007シーリーズ最新作にしてクレイグボンドの最後の作品『007/No Time to Die』のソフトが発売された。映画の公開からもう随分経ったのでこの作品を観た率直な感想を書く。

以下ネタバレ注意

最新作『007』は私の目にどう写ったか

私は本作品を否定的に観た。前作の「スペクター」においてレア・セドゥ演じるマドレーヌ・スワンと結ばれ「殺しの番号」という肩の荷を下ろしたボンドのその後を

もっとみる
キューブリック『The Shining』(完全版)を観た

キューブリック『The Shining』(完全版)を観た

シャイニング北米公開版を観た少し前に午前十時の映画祭でやっていたスタンリー・キューブリック監督作品『シャイニング』を観てきた。私はキューブリックはとりわけ好きな映画監督であるのでこの作品はもう十回近く観ている。しかしながら今回の『シャイニング』は私が今まで観てきた『シャイニング』とは少し違っていて完全版と言っても良いような内容であった。完全版とはどういうことか、従来流通していた『シャイニング』は全

もっとみる
新海誠の到達と新たな出発 『天気の子』の世界

新海誠の到達と新たな出発 『天気の子』の世界

『天気の子』概要大ヒットを記録した『君の名は。』の新海誠が原作、脚本、監督を務めた青春ドラマ。
離島から東京に家出してきた高校一年生の帆高と、“祈るだけで晴れにできる“力を持つ少女・陽菜が出会う。天候の調和が狂っていく時代に、運命に翻弄される少年、少女が自らの生き方を「選択」する物語。

この記事について『天気の子』および新海誠監督作品の壮大なネタバレを含んでいるので、特に『天気の子』並びに新海誠

もっとみる
宮崎駿の最新作は『シン・ナウシカ』なのか?

宮崎駿の最新作は『シン・ナウシカ』なのか?

宮崎駿の最新作は『シン・風の谷のナウシカ』つまり宮崎駿の原点たるナウシカの続編ではないのだろうか、と噂されている。この話が一部界隈で盛んに論じられているのは一人の評論家、オタキングこと岡田斗司夫氏の言説が発端である。岡田斗司夫氏は以下の理由から再新作は『シン・風の谷のナウシカ』であると論じている。

・制作が決定してから何年経っているにもかかわらず更には今秋完成予定にもかかわらず一枚もイメージボー

もっとみる
なぜ宮崎駿の最新作は『君たちはどう生きるか』なのか

なぜ宮崎駿の最新作は『君たちはどう生きるか』なのか

日本映画の巨匠であり映画史を語る上で欠くべからざる映画監督の一人、宮崎駿は現在『風立ちぬ』での引退宣言を撤回して『君たちはどう生きるか』という新たなる作品を創っている。この作品の題は吉野源三郎による『君たちはどう生きるか』から取っている。果たしてなぜ宮崎駿は2021年の今日に1937年に出版された小説を題材として取ってのであろうか。或いは宮崎駿自身がその作品の愛好家である、ただそれだけの理由から新

もっとみる
「さらば、全ての『エヴァンゲリオン』。」 庵野秀明、エヴァを終わらせる唯一つの方法

「さらば、全ての『エヴァンゲリオン』。」 庵野秀明、エヴァを終わらせる唯一つの方法

只今、絶賛公開中である『シン・エヴァンゲリオン:||』を観てきた。この記事は『シン・エヴァンゲリオン:||』の作品解説である。庵野秀明がいかなる方法を以って『エヴァンゲリオン』を終わらたのか、その背景を庵野秀明というクリエーターに注目して論じていく。

※ 尚、本記事は『シン・エヴァンゲリオン:||』および『エヴァンゲリオン』全体のネタバレを論ずる上で避けることが出来ない為、神経質な方はそれらを観

もっとみる
新海誠の映画を彩る音楽

新海誠の映画を彩る音楽

映画にとって音楽というのは時として何よりも重要な要素になり得る。ある場面ではいかなる出演者よりいかなるシーンより音楽が重要になる場合がある。

映画と音楽が非常に密接であり監督は自らとぴったり合う音楽家を見つけられるかが自分の映画が成功するか否かにかかっている様にも思える。映画監督と音楽家、例えばフェデリコ・フェリーニとニーノ・ロータ、スティーブン・スピルバーグとジョン・ウィリアムズ、そして我国と

もっとみる
2010年代傑作SF映画4選

2010年代傑作SF映画4選

慌ただしい日常を送りゆく中で気がつくと2020年も夏を迎えた。早いものである。光陰矢の如しとは全く的を得た諺であるなと吃驚する今日この頃。皆さんいかがお過ごしですか。

さて先日面白い記事を見つけた。

90年代以降に誕生した傑作SFを四作品ピックアップしているのであるが成程、予想以上に良いラインナップである。特に『エクスマキナ』『メッセージ』は全く同意見で大傑作である。

そこで私も上記の記事と

もっとみる
海が、山が、都会が嫌いなら...

海が、山が、都会が嫌いなら...

1960年公開ジャン=リュック・ゴダール監督の長編デビュー作『勝手にしやがれ』は実に格好良い男と女の物語である。

主演はであるジャン=ポール・ベルモンド、ジーン・セバーグはこの映画によって一気に名声を上げた。そして監督であるゴダール自身もこの映画に歴史に名を残す名監督となった。

ストーリは至ってシンプルだ。主人公ミッシェルが車を奪って走らせているところ警官が追ってくる。その景観を射殺してしまっ

もっとみる
創作者の苦悩、或いは生きる悲しみ フェリーニ『8 1/2』について

創作者の苦悩、或いは生きる悲しみ フェリーニ『8 1/2』について

フェデリ・フェリー二はイタリアを代表する映画監督である。『無防備都市』のロベルト・ロッセリーニや『ヴェニスに死す』のルキーノ・ヴィスコンティ といったネオリアリズモの手法を用いた代表的な映画監督としても知られる。半世紀以上前の映画監督でありながら今尚熱狂的な支持を誇る。幻想的な画創りから『映像の魔術師』という異名を持っている。

彼の作品、就中中期は自伝的要素が非常に多い。1972年公開の『フェリ

もっとみる
世界名監督&傑作映画 #0

世界名監督&傑作映画 #0

新しいシリーズを始動したいと思います。その名も『世界名監督&傑作』ひねりがないですか?確かにその通りですね。他に良い題名が浮かばなかったもので...結局シンプルイズベストに落ちつきました。

僕はかなりの本数映画を観ていました。そう。過去形であります。本当に少し前までは毎日二本観ている時期もあった程であります。最近こそ見る本数は減ってしまいましたがそれでも普通の人よりかは観ているかな、と思っており

もっとみる