短編小説「頽れし花々」
不眠は改善の余地が見られない。浅い夢では悪夢を見るから、俺は。正直な所眠りたくはない。精神病がだいぶ進行した患者は夜が来るのを極度に恐れるそうだ。錯乱した精神が見せる悪夢。果たしてどんなものか。未だ、辛うじて発狂してはいない俺も、それの情景を想像するだけで不安の気持ちに駆られる。携帯に手を伸ばし、時刻は四時をわずかに過ぎた頃。この場合、それを朝と言おうが夜と言おうがいづれも適切ではないだろう。未だ太陽が見えぬと言う意味に於いては「夜」ではあるが、東側の空が白々としており太陽が