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美術に関する記事
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#現代美術

パブリックメモリーとして秋美と山衣をほどく時に。

パブリックメモリーとして秋美と山衣をほどく時に。

秋田公立美術大学10周年プロジェクト「美大(あきび)を解く(ほどく)」の展覧会『美大10年』が会期後半となり、永沢碧衣作品『山衣をほどく』の展示が始まったとのこと。先日話した、私の脳ミソの石田徹也への呪縛をほどく機会ともなるか、、、は個人的な話として↓
(「永沢碧衣『山衣をほどく』、そして石田徹也。」)

深い自然と、自然ゆえの災害の有様までも懐に抱いて巡りゆく、死んでゆく熊と山々を描いた『山衣を

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永沢碧衣『山衣をほどく』、そして石田徹也。

永沢碧衣『山衣をほどく』、そして石田徹也。

永沢碧衣さんの『山衣をほどく』がVOCA賞大賞を受賞され、複数のメディアに取り上げられました。それを見た時に、パッと想起したものがあります。石田徹也です。

永沢さんご自身にその意図は全く無いと思いますし、これはリファレンスとか参照とかそういう読みとしてではなく、あくまでも作品『山衣をほどく』のみから、私個人がただ単純に連想したものです。
構図というのか、そこにあるものと一体化している状態が、そう

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アーティストとは誰なのか?

アーティストとは誰なのか?

この世界というものは常に移り変わってゆきます。これまでもそうだったし、これからもそうです。

しかし私たちは、日常の雑事に追われて、或いは日常が平々凡々とし過ぎる (と思い込んでいる) ために、世界が変化している事になかなか気づきませんが、本当は、この瞬間も移ろっていく最中なのです。
そして後になって、過ぎ去ってみてからようやく振り返って、「時代」という概念を尺度にしたりしながら、この世界が既に変

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嘘も本音を隠す事もない場所──インスタレーション芸術の空間に佇む時に。

嘘も本音を隠す事もない場所──インスタレーション芸術の空間に佇む時に。

人間は、思ってもいない事を言う生き物ですね。

好きでもないのに好きなふうを装ったり、嫌いなのに渋々付き合っていたり。
「私、信じてるからね!」って強調する時は大概、もう信じられなくなっている時です(笑)。

そうは言っても、何となくにもそういう事を積み重ねて、この集団生活やら社会生活というものを、つつがなく送ることができているわけですね。
人間とはよくできたものだと思います。

私は残念ながら幼

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リファレンスの意味。

リファレンスの意味。

秋美ビジュアルアーツ3年専攻課題展「おがる」へ。毎年恒例のリファレンス展です。

今年は全作品のタイトルと参照元の解説が載った、大判の単語帳のようなノートが配られまして非常に参考になりました。

私は毎年リファレンス展を楽しみにしているのですが、何故楽しいのか考えてみました。制作者がリファレンスを学ぶのがどうして大事なのかというのは、美術史が、とか、作品を見せるためのテクニックだとか、そういうアカ

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『例えば(天気の話をするように痛みについて話せれば)』展を見に。

『例えば(天気の話をするように痛みについて話せれば)』展を見に。

秋田公立美術大学ギャラリーBIYONG POINTで開催中の『例えば(天気の話をするように痛みについて話せれば)』展を見てきた。
https://biyongpointexhibition.jimdofree.com/

それぞれ異なる制作・研究をしている岩瀬海、中島伽那子、櫻井莉菜3名による、「社会の中にある理不尽な抑圧 / 排除、加害性」(それは暴力的行為だけにはとどまらない)への問いかけ。7

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秋田の美術をアーカイヴしていく、、、

秋田の美術をアーカイヴしていく、、、

ぼんやりと疑問に思うことがありまして、

端的に言うと、

50年後100年後に秋田に住んでいる人や秋田に来た人が、

90年代以降の秋田の美術をどこに行ったら観られますか?

ということなんです。

現代美術の醍醐味は、当たり前のことですが、同時代に作品が生み出されるさまを、作家の有りようを、まのあたりにできることですし、また今の時代は、鑑賞者個々人の多様なスタイルでもって、解釈も関わりもできる

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では、秋田の美術とは何でしょうか、、、

では、秋田の美術とは何でしょうか、、、

前回の続きです。

では「秋田の美術」とは何でしょうね、、、正解はないのかもしれませんけれど。

作家が秋田に住んでいる、秋田出身である、ということにとどまらず、

秋田に暮らす私たちの価値観の発見とか、その変容体験が、秋田で展開された時、そういったものが「秋田の美術」といえる、と私はイメージしています。

今、価値観が大きく変容していく時代のただ中にいます。そんな中で、2005年にはココラボラト

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アートって何ですか?

アートって何ですか?

3年くらい前でしょうか、私は会う人たちに「アートって何ですか」としきりに聞いていました。ちょっと悩んでいて (ま、今も悩んでいる最中だし、たぶん今後も悩むのでしょうけど) 、えーい、いっそインタビューだ、という気持ちでした。

答えてくれた人たちの表現する「アートとは」は、予想以上に多様なものでした。そのひとつひとつの言葉は大切な私の財産としてずっと胸に抱いています。

…照れくさいことを言います

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