マガジンのカバー画像

映画と音楽

35
「好きなものを好きなだけ」 映画と音楽に纏わるエッセイやコラムを集めたマガジン。」
運営しているクリエイター

#人生

Creepy Nuts“かつて天才だった俺たちへ”はすべての主人公になれなかった神童に捧げる応援歌だった

Creepy Nuts“かつて天才だった俺たちへ”はすべての主人公になれなかった神童に捧げる応援歌だった

小さい頃はなんにだってなれると思っていた。それが時間と経験とともに、自身の至らなさに気づいて、「所詮自分はこんなものか」と掲げていた夢を諦めるようになる。でも、中には自身の可能性を諦めず、天才になれない事実に抗い続ける者もいる。天才になれなかったと嘆くか。天才になる努力を続けるか。人生の分岐点はおそらくこの辺りなんだろう。

苦手だとか 怖いとか 気づかなければ
俺だってボールと友達になれた

もっとみる
11月が消えた

11月が消えた

11月が消えた。

2021年11月、20代最後の11月が跡形もなく消えた。11月が消えた瞬間に、人生の難しさを思い知らされた。それと同時に消えたことにも意味があると自分に言い聞かせる自分がいた。

11月の大半を病床で過ごしている。ありきたりな日常は奪われ、病床での日常がありきたりな日常と化した。悔やまれると言えばそれは紛れもなく事実だけれど、「うまくいかない日があることも人生だよ」と頭の中で囁

もっとみる
amazarashi“僕が死のうと思ったのは”は絶望の中に見えた微かな希望だった

amazarashi“僕が死のうと思ったのは”は絶望の中に見えた微かな希望だった

20歳になって生きる意味が見つからなかったらもう死んでしまおう。

淡々と流れる日常に意味を感じなくなった僕は、いつもそんなことばかり考えていた。

19歳といえば、モラトリアム期の渦中にいた。それは誰もが通る道なのかもしれない。

簡単に「死にたい」と口走っていた当時をいま振り返ると、「若い」の一言で片付けられる。でも、それは乗り越えたからに過ぎない。

「何者かになりたい」

では、その何者と

もっとみる
中島美嘉:“GLAMOROUS SKY”はモラトリアム期を綴った歌だった

中島美嘉:“GLAMOROUS SKY”はモラトリアム期を綴った歌だった

中学生の頃に、『中島美嘉』の“GLAMOROUS SKY”と出会った。とはいえ、当時はテレビで『中島美嘉』がこの楽曲を歌っているぐらいの印象だった。この楽曲の思い出よりも、ドイツW杯の思い出の方が正直強い。ジダンが決勝戦でマテラッツィに頭突きをして、退場になったあの衝撃はいまでも鮮明に覚えている。

“GLAMOROUS SKY”は映画『NANA』の主題歌だ。主人公大崎ナナ(中島美嘉)が劇中で歌っ

もっとみる
かけがえのない1日を丁寧に生きることの大切さは全部「アバウトタイム」が教えてくれた

かけがえのない1日を丁寧に生きることの大切さは全部「アバウトタイム」が教えてくれた

いつかの過去を思い出して、あのときああしていれば、もう一度やり直せるならなんてありもしないもしもを考えてしまう人は多いだろう。もう2度と過去には戻れやしないのに、過去にばかり目を向けて、過去の思い出をずっと思い出している。2度と戻らない過去を思い出してしまうあの現象を、誰かが勝手に「後悔」と名付けた。

過去に後悔を馳せるたびに、観たいと思ってしまう映画がある。その映画の名前は「アバウトタイム」だ

もっとみる
『百円の恋』:あなたにはまだ戦う覚悟はあるか?

『百円の恋』:あなたにはまだ戦う覚悟はあるか?

「自分に闘志がなくなったかもしれない」と疑問に思ったときは、決まって『百円の恋』の見返すようにしている。たぶんもう5回以上は観たはずだ。本作を観るたびに、もう1度頑張るぞと勇気が出る。音楽で言えば、阿部真央の『這い上がれMY WAY』や、UVERworldの『PLAYING RUN』を聴くんだけれど、この話は本筋と逸れるので一旦置いておく。

いま振り返ると、昔から殴り合いが大の苦手だった。ボクシ

もっとみる