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RONIのヤバい家族

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28歳で結婚するまで私が共に過ごした「ちょっとヤバい奴ら」(身内)について書いています。
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記事一覧

兄について【ヤバさ:?????】

兄について【ヤバさ:?????】

私の今の一番のアイデンティティは高校教師である。まだちょっと照れ臭いが、妻や母というのもあるだろう。そして残念ながら負のアイデンティティとして先月から若年性乳がん患者というのが加わってしまった。

負のアイデンティティといえば、幼少の頃の私にとってその最たるものは「一人っ子である」ということであった。
平成の初期(生徒の言葉を借りれば「ほとんど昭和」)に産まれた我々の世代では、一人っ子というのはま

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父について①【ヤバさ:★★★★★】

父について①【ヤバさ:★★★★★】

ずいぶんと時が経った。私は文章を書くことが好きであるがそれを仕事にできなかったのはこの通り継続する力という何事にももっとも大事な能力が欠落しているからである。「継続は力なり」とよく言われるが、私はどうしようもなく非力な人間である。

何も書かないでいる間に、ついに私は三十路を迎えた。一昔前のけしからん俗説では、これで私の女としての消費期限は切れて後は強く逞しいオバサンという別の生き物に進化していく

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六郎さんについて【ヤバさ:★★★★☆】②

六郎さんについて【ヤバさ:★★★★☆】②

大学2年の頃、メタメタに病んだことがある。
高1で遅めの初カレを得た私はそれまでの親からの愛情不足をすべて精算しようとするが如く典型的な重い女になった。自分で意識して彼を束縛しようと思ったことは一度もなかったが、メールを送って5分返事がなければ手汗が滲み動悸がしてくるので、健康を守るために仕方なく返信催促のメールで追撃するしかなかった。返信を待つ間の軽い吐き気を伴ったソワソワ感は調度この前の3月に

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六郎さんについて【ヤバさ:★★★★☆】①

六郎さんについて【ヤバさ:★★★★☆】①

高校一年の頃から私は勉強マシンに生まれ変わった。ただ、今思えばひたすら勉強時間だけ何時間も確保して定期テスト対策のみ磐石になるばかりで実力は伸びていかなかったので、かなり性能の悪い勉強マシンであった。新品で買ったのに壊れかけの勉強マシン。ほんとの幸せ教えてよと問い掛けたい。
もしも「頭の良さ」が遺伝だとしたら、山奥に隔離されたヤンキー公立校卒業の父とどうしても勉強が出来ない子の受け皿として名を馳せ

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叔母について【ヤバさ:★★★★☆】②

叔母について【ヤバさ:★★★★☆】②

母は活字嫌いである。母が唯一読み通した小説は、同僚の若いホステスさんに借りた片山恭一の『世界の中心で愛を叫ぶ』であった。生まれて初めての小説を読み終えた母は少し赤い目をして「すごい感動した~泣ける~」などと全米が泣いた系映画の試写会に参加した人のような感想を述べながら中学生の私に又貸ししてくれた。それから程なくして今度はお客さんから別の小説を借りて読んでいたが、そちらの方は「なんかこれ難しくてよく

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叔母について【ヤバさ:★★★★☆】①

叔母について【ヤバさ:★★★★☆】①

私たち夫婦はただ籍を入れただけである。結婚式もしていなければ、結婚指輪すら持っていない。あの天上天下唯我独尊のテイで市場を席巻する大手結婚情報誌が語る「プレ花嫁必見!一目でわかる結婚準備♡」とやらのチェックリストの「市役所に婚姻届を出す」だけにしかチェックを入れられないまま子供が産まれて乳のしこりが成長した。ウェディングドレスは30までかな~などと多少時代錯誤な思いを秘めてはいたが、30になる前に

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従弟について【ヤバさ:★★★★☆】②

従弟について【ヤバさ:★★★★☆】②

私の地毛は酷い癖毛である。癖毛というより天然パーマといった方が適当であり、子供の頃は頭髪が自然とカールしており、毛先の方で縦ロールを描いていた。前髪など作れるはずもなく、伸ばした髪を全てオールバックにして頭頂でまとめていた。バカ真面目な子供だったため、頭髪を弄ることに強い罪悪感があり、中学卒業までこの髪型で過ごした。
この髪の毛のせいで幼少の頃の私はマイノリティであり、随分めずらしがられ、時にから

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従弟について【ヤバさ:★★★★☆】①

従弟について【ヤバさ:★★★★☆】①

「辛いことからは逃げてもよい」これが私が幼い頃の母の教育方針の1つだった。他には、「物心ついたら叩かない」「叩くときはモモ」というポリシーを得意気に語っていたが、余程手を上げたくなるような子供だったのだろうか。幼い頃の私にとって「辛いこと」、それは校外学習とマラソン大会であった。
校外学習とは遠足や社会科見学の類いである。私は家族で某夢の国に行く道中渋滞にハマり退っ引きならない尿意に襲われ、泣く泣

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祖父について【ヤバさ:★★★☆☆】②

祖父について【ヤバさ:★★★☆☆】②

「その家庭環境でよくそんなマトモに育ったね」と言われたことが何度かあるが、この言葉だけ見るとまるで私が健気にマッチを売り続けて温暖な気候のために上手いこと凍死を免れアラサーまで生き延びたかのようである。確かに私の周りには既に何人かご紹介した通り若干ヤバい人たちが集まっていたが(そして当の私も決してマトモとは言いがたいことがそろそろ明るみになっているが)、物質的には相当甘やかされてきた。家庭環境に恵

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祖父について【ヤバさ:★★★☆☆】①

祖父について【ヤバさ:★★★☆☆】①

暴君。家族が語る祖父像は、この一言に尽きる。祖母が認知症を発症した当時、私は自責の念も込めて「ストレスかな…」と呟いた。すると叔母(部屋に籠りきりで海外ドラマを見るかツムツムに興じるかのどちらか。家事はしていない)は「あぁお祖父ちゃんだね」としたり顔で述べ、母(一日の大半を彼氏の家で過ごしていた。彼氏の家の家事はする)も「そうだねぇ…ずっと我慢してきたからね…」と合わせた。さすが倫理観欠落シスター

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従妹について【ヤバさ:★★☆☆☆】②

従妹について【ヤバさ:★★☆☆☆】②

私は人前で泣くのが極端に嫌いだ。今回も入院中看護師さんから息子の話題を振られる度にぷにぷにの身体を抱き止められない切なさで涙が込み上げそうになるのでドラ◯ンボールの18号の顔を思い浮かべて感情を殺した。一点謝るとしたら私はドラゴン◯ールを読んだことがない。18号もそのクールビューティーな顔と人造人間であるということしか知らない。ごめんなさい。仕事をしていた時も生徒に予め「私は卒業式以外では泣かない

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従妹について【ヤバさ:★★☆☆☆】①

従妹について【ヤバさ:★★☆☆☆】①

「美人は性格が悪い」などという俗説の皮を被った妬み嫉みがあるが、実際どのくらいの美人がそれに当てはまるのだろう。うちの母と叔母は美人であるが、性格が悪いわけではない。ただ倫理観を失ったまま二度と取り戻すつもりがないだけである。
ところで、母方は美形一家であるが実は従妹たちも私同様父方の遺伝子を色濃く受け継いでしまい、「お父さん似だね」という呪詛を浴びながら生きる宿命を背負っている。従妹たちの父とは

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叔父について【ヤバさ:★★☆☆☆】②

叔父について【ヤバさ:★★☆☆☆】②

私が就職のため家を出てから、叔父から時々「ねこちゃん通信」が送られてくるようになった。それがいったいどんなものか。過去のLINEを遡り一部抜粋する。

「お元気ですか?
僕もパトラも、そこそこ元気です。
最近のパトラは、食欲も応接室でいつもぼくの帰りを待ってくれています。」

「お元気ですか?
パトラは、例年通り毛が生え変わる時なので、毎日30分ぐらいブラッシングをしています。
最近は、家にいる時

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叔父について【ヤバさ:★★☆☆☆】①

叔父について【ヤバさ:★★☆☆☆】①

産まれた息子の顔をしげしげと眺めた時、妙な既視感があった。初めて会った気がしなかった。きっと私と息子は前世でも親子だったんだわ、とかそういうロマンティックなマザーズハイではない。ただ単に息子は私に激似だったのである。それこそ金太郎飴程度のズレしかなく、仮に托卵であってもバレようがないほど私だけに似ていた。
それを裏付けるため、先日久しぶりに自分の乳児の頃のアルバムを見た。こういう金魚の品種あるよね

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