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感じよう、考えよう

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#生き方

第22話 ここだけの話

 旦那、ちょっと聞いてくださいよ。
 ここだけの話。
 ここだけの話ですよ。
 いやぁ、まぁあっしのことなんですけどね。
 あっし、実は転生者なんですよ。
 えっ?マンガの読みすぎだって?
 いや、ホントなんですよ!!
 本当にあっし…転生者なんです。
 えっ?前はどんな世界にいたかですって?
 いや、この世界…地球ですよ。
 魔法?
 そんなの使えるわけがないじゃないですか!!
 あんな非科学的

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第20話 この世界に悪役は存在しない

 私たちが住む世界にはマンガに出てくるうような世界を滅ぼそうとする者は存在しない。
 しかし、人類は争いを繰り返している。
 まるで争いと共に歩んで来たように。
 民族対立、宗教対立、資源の奪い合いなど理由は様々だ。

 争いを繰り返す人類は愚かだと誰かが言う。
 確かにそうなのかもしれない。
 しかし、争いの中に生きる人々は決して愚かではない。
 人を殺したくて争いを始める者などいないだろう。

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第18話 ずる賢い

 ある日、俺は異世界に飛ばされた。
 異世界転生?いや、生きたままだから転移ってやつか?
 とにかく異世界に飛ばされたんだ。
 さんざん異世界モノの作品を読んできたからワクワクしたよ。
 あぁ、俺も冒険者として活躍する日々が始まるんだって!!
 でも甘かった。
 非現実的な世界にいるのに、とてもリアリティだった。
 魔法は使えない。
 スキルは覚えない。
 おまけに俺にはレベルが存在しない。
 日

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第16話 FPS

「げぇー!!殺されたぁ!!」
 男は楽しそうに笑いながら恐ろしい言葉を放つ。

「いやぁ~、さっきの対戦相手めちゃくちゃ上手かったなぁ」
「あぁ、いいようにしてやられたって感じだ」
「何にもできなかったもん。逆に向こうは楽しかっただろうなぁ」
「お~い、2人とも!!そろそろいい時間だぜ!!」
「あっ、ホントだ!!今日は終わりにするか」
「そうだな。次はいつやる?」
「う~ん、週末まで無理かな。明日

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第15話 命への冒涜

「あっ!!また出やがった!!」
 男は近くにあった雑誌を丸める。
「おめぇら、気持ちわりぃんだよ!!」
 男が気持ち悪いと呼んでいるもの、それはゴキブリのことである。
 男は壁にいるゴキブリに向かって思いっきり雑誌を叩きつけた。
 先ほどまでカサカサと動いていたのに、ゴキブリは見るも無残な姿に変わり果てた。
「よし、駆除完了」
 男は死んだゴキブリを雑誌ですくいあげ、そのまま雑誌ごとゴミ箱へ捨てた

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第14話 鎖に繋がれたゾウ

 サーカスのゾウは小さな頃に杭に鎖が付いたものを足に繋がれる。
 なんでそんなことするかって?
 逃げないためだ。
 本当は駆け回って遊びたいのに、鎖が繋げられているからそこから動くことはできない。
 自分の力じゃ、その鎖を外すことはできないのだ。

 そんなゾウも大人になる。
 子供の頃より、体はだいぶ大きくなったし、力もだいぶ付いた。
 しかし、そのゾウは未だに自由に動くことができない。
 な

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第12話 ショッピングモールの鏡

「うっ!!」
 俺は鏡の前に映る自分を見てギョッとする。
 俺って…こんなにみっともない体してたっけ?
 俺は食材の買い出しにショッピングモールに来ていた。
 そのときたまたま鏡の前を通りかかったときに自分の姿を見たのだ。

 今、俺が目にしている自分は本当に自分の姿なのか?
 いつも家の鏡で見ている自分よりずっとカッコ悪く見える。
 学生の頃に比べて明らかに太った体。
 そして自分の想像を超えた

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第10話 憧れのあの人はアニメ好きでした

 女子社員の中で人気の藤森さんと仕事帰りに飲むことになった。
 同僚のカナコが思い切って声を掛けたのだ。
 藤森さんはカナコの憧れの人である。
 仕事がバリバリでき、どんなときでもスマートに対応する。
 おまけにスーツがよく似合う。
 私も憧れとまでは行かないけど、いいなぁと思う。
「カエデェ~。私、緊張してきた」
「ははは、落ち着いて」
「…カエデ。私が藤森さんとくっついても、恨みっこなしだよ」

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第9話 赤信号

 あぁ、信号が赤になってしまった。
 仕方がないのでボクは立ち止まる。
「この信号長いんだよなぁ」
 ボクはため息を吐く。
 そして辺りをキョロキョロと見渡す。
 時間は深夜。
 周りには人がいない。
 車も来る気配もない。
 よし、渡ってしまおう!!
 ボクはそそくさと横断歩道を渡ってしまった。

 横断歩道を渡り終えてからボクは後ろを振り返る。
 別に待っていても良かった。
 一体なぜ渡ってし

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第7話 モチベーション

 その日、ボクは新入社員研修で仕事に対するモチベーションの講義を受けていた。
 講師となったその人はいかにも仕事ができそうなオーラを出していた。
 その人はモチベーションについて2つ事例を挙げて説明してくれた。
 1つ目の話は3人のレンガ職人の話だった。
 1人目は文句を言いながらレンガを積んでいる人。
 2人目は家族を養うためにレンガを積んでいる人。
 3人目は歴史に名を残すやもしれぬ、大聖堂の

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第4話 その恋が手から離れたとき

 私という人間は、一般的に見ればモテる部類に入るのだろう。
 男性からよく好意的なアプローチを受ける。
 嫌われるかもしれないが…正直、男に困ったことがない。
 非常にありがたいことだ。
 でもだからと言って、男をとっかえひっかえしているわけでもない。
 恋が終わってしまったときは普通に傷つくし、彼氏を作らずに過ごす日々もあった。
 人並みにしか恋愛はしていない。

 そんな私が恋愛をしてきた中で

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第3話 仕事と家族

「う~ん、そこら辺はそっちでうまいことやってくんないかなぁ?」
 電話対応をしている鈴木を佐藤はじっと見つめる。
(—またあいつあんな適当なこと言って…)
「じゃあ悪いけどよろしく」
 鈴木は業者との電話を終え、受話器を置いた。
「鈴木、今の大丈夫なのか?」
 佐藤は電話の内容が気になって鈴木に問いただす。
「うん?あぁ大丈夫だよ。悪いけど、俺もう帰るね」
 そう言って鈴木はさっさと家に帰ってしま

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第2話 魔族に支配された世界

 ここは我々が住む世界とは別の世界。
 この世界には魔族という種族が存在し、人間と魔族は覇権争いをしていた。
 人間には「勇者」という絶対的な存在がいて、また魔族にも「魔王」という絶対的な存在がいた。
 両者の攻防は一進一退を繰り返し、そして遂に長きに渡る争いに決着が着いた。
 勝者は………魔族。人間は破れたのであった。

 ―1000年後―
 世界は魔族が支配していた。
 争いの絶えない世界かと

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第1話 シェルターに避難してください

 その日、街中にけたたましい警報音が鳴り響いた。
『これより15分後にこの地に弾道ミサイルが落とされます。直ちに町の外へ避難するか、地下のシェルターに避難してください』
 オフィス街で仕事をする人々は仕事を放りだし、外へ避難しようとする。
「みんな、大丈夫だ!!」
 偉い立場にある1人の男が大きな声で社員たちに声をかけた。
「外へ避難する必要はない。我が社には地下シェルターが用意されている」
 世

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