麗奈
これは私だけの、と云いながら、その宝箱とやらをどうしても人の目前でぱっと開けて見せたくなるというのは、どうやら生来人間に根を張っている欲求らしい。たなごころ撰集だなんて、それっぽい題をつける勿れ。電車に揺られながら、風呂上がりに上気した顔で、ついつい片手で波に乗っているうちにふと、気になる赤い点を遠くに認める、そうあっちの、さっきまで風が吹いてきた方の向こう岸に、と言って。なんとか近づいてみようなんて思うまでもなく、気がつけば自分の体はそこに在る。すぐそばに一輪の花を見つける。ひとつの珍しい貝を見つける。そして掬い取って、みる。砂がさらさらと指の隙間から落ちてゆくなかに、しかしその花は、貝だけは掌のうちに残る。たなごころ。なんてあたたかな音の並びでしょう。私だけの、いやいや、所詮はそのへんの道端に転がっている一読書家の悠長な蒐集なので、どうか悪しからず。
先週だったか、満員電車に揺られていると、となりのスマホ画面が視界の隅でちらついた。良くないと思いつつ気になって目をやると、女性がスマホを縦に持ってゲームに熱中し…
あれから十余年経ってもまだ、と書きはじめて、まだ、なんだろうとわからなくなった。 アンネフランクの日記を読んだ晩のことを、遠い被災の記憶みたいに溜め込んでいるじ…
起きて 夢を見ていたと悟って ふやけた意味の意味を 裸足の裏でなぞろうとつめたい 6AMにフローリング 着地 ただしい輪郭とは すなわち朝の窓辺 あてどころに尋ね…
人生は宵もほどろ 薄い莫大なハンカチで、ありますと。 皆さん、じぶんの前にある おおきなおおおおおきな ハンカチを、 その端と端を、 指でつまんで 持ってみてく…
こころがいっぱいになったから きょうは眠りにつくとしよう まだすこし はやいけれど そう思ってからが 長いのだけど もくもく伸びるかげ 準備体操はいらない 放り…
早起きできれば清々しくて できぬとも二度寝が幸せなのと タンポポみたいに笑う君はもう 土から育ちがちがうみたいだ また今朝はどんな夢を見たのかい 数学なら僕らはね…
ダジャレみたいな題になってしまった。 今日も本を買った。 いやー、本ってほんとに破格。 これを思う時ってわたし、生きてていちばんしあわせな瞬間なのかもしれない。 …
相変わらず奇抜な柄が似合ってしまうきみの ひろい肩やむねに付いてる貝や貝や貝や貝の そのうちの一つに過ぎないとしても少なくとも 薄まったレモネードが回ってるいま…
水彩画が淡くぼやけるみたいに、あたしの脚に一晩中絡んでいた温もりは夢のなかの出来事だった。 それはそれは美しくて、あたたかくて、甘くて、にがくて。そして存在が即…
本当に思っていると言うのはほんとうは 本当と思っていたいだけなのかしらと 己すら誠と信ぜられない酔いの言の葉 口にのぼれば刹那の煌めき宵に溶けゆく 紅い幻想に落…
これだけの掌を犠牲にして 得られると説かれる未来が 季節 何巡めぐった先にも 先にも 見えなくたって 薄ら曇り空のした 今にも底の抜けそうな大通りを 慎重に慎…
2023年8月13日 15:49
先週だったか、満員電車に揺られていると、となりのスマホ画面が視界の隅でちらついた。良くないと思いつつ気になって目をやると、女性がスマホを縦に持ってゲームに熱中している。が、その様子がどうもふつうではない。縦の画面でスマホを操作しているのに、そこに映っている画面は横持ち仕様なのだ。横向きになったキャラクターや、縦に連なる横書きのセリフたちが、次々と片手持ちの親指でスキップされていく。思わず二度見して
2024年7月25日 22:11
あれから十余年経ってもまだ、と書きはじめて、まだ、なんだろうとわからなくなった。アンネフランクの日記を読んだ晩のことを、遠い被災の記憶みたいに溜め込んでいるじぶんがいる。内実はふやけて夢のようなのに(というか実際のところ夢だったのだが)、その恐怖から逃避しようとして逆になんども反芻するうち、記憶という箱の輪郭ばかりが濃くなってきたことはたしかに否めない。戦争の夢を幼少期からよく見る。戦争物
2024年7月19日 00:34
起きて 夢を見ていたと悟ってふやけた意味の意味を裸足の裏でなぞろうとつめたい6AMにフローリング 着地ただしい輪郭とは すなわち朝の窓辺あてどころに尋ねあたらぬ意味 まがい者が光のもとでは均く声をならべ昨日を名乗り わたしを騙ってこんこんと 今日も今日に折り重なっていくまた同じ夢を見ていた
2024年6月25日 23:49
人生は宵もほどろ薄い莫大なハンカチで、ありますと。皆さん、じぶんの前にあるおおきなおおおおおきなハンカチを、その端と端を、指でつまんで持ってみてください。おおおおおきすぎて持てないでしょう、初っ端はそれが当たり前ですとも。ハンカチをじゃあ、半分に手折ってください。ゆっくりでいいよ。半分の半分に手折ってみましょう。間違えても大丈夫。んなら半分の半分の
2024年6月25日 00:04
こころがいっぱいになったからきょうは眠りにつくとしようまだすこし はやいけれどそう思ってからが 長いのだけどもくもく伸びるかげ準備体操はいらない放りだした足が どこまでも伸びる天井の角が よそよそしく腕を組む角っこ界のいたんじ まっしろく ここにありこころがとろんとしてきたからきょうは灯りを消すとしようだくてん弛んでぼいんがのこって古池にぽちゃん
2024年6月18日 23:32
カロリーの低い音楽を無性に聴きたくなるときってあるよね心がもたれてんだミッドナイト・バス/ラッキーオールドサン
2024年6月18日 01:50
どうとも口に上しがたい感情?感情って大それてるよな、口に上しがたいなにかをどう扱えばいいのか、この感じを忘れたくないけど安易に言葉にもしたくなくてむゆむゆして膝の甲ばっか見てる
2024年6月17日 03:00
早起きできれば清々しくてできぬとも二度寝が幸せなのとタンポポみたいに笑う君はもう土から育ちがちがうみたいだまた今朝はどんな夢を見たのかい数学なら僕らはねじれの関係で隣にいても君の寝息は絵文字のようもう片っぽの靴下は見つかったかい君はいつでもたのしいいきもので自慢しようにも見出しが多すぎるさおかげで僕は寝不足すらうれしいとか君は君はと君が主語の生活もわるくないかもな
2024年6月16日 00:11
ダジャレみたいな題になってしまった。今日も本を買った。いやー、本ってほんとに破格。これを思う時ってわたし、生きてていちばんしあわせな瞬間なのかもしれない。過言じゃない。ピカピカの湯船に浸かってる時と好物の沖縄料理を食べてる時と好きな人と一緒に眠りにつける時、に並ぶくらいわたしのなかでは切実に、しあわせが沁みる瞬間なのである。しあわせなことに今日もそう思った。読み始めた序盤から、
2024年6月15日 20:07
相変わらず奇抜な柄が似合ってしまうきみのひろい肩やむねに付いてる貝や貝や貝や貝のそのうちの一つに過ぎないとしても少なくとも薄まったレモネードが回ってるいまはあたしの海だだからくるくる回って永遠に減らなくてこの時間が続いてほしいのに続いてほしくない、なんで?分かってるんだよそうして陽だまりみたいに笑うちゃん付けしてくれるさり気なく靴をほめてくれる優しさを持て余して手も
2024年6月8日 23:31
人間どうやっても孤独だと言うことの折り合いを、何処でつければいいのか二十余年生きていて未だに解らない
2024年6月7日 00:13
水彩画が淡くぼやけるみたいに、あたしの脚に一晩中絡んでいた温もりは夢のなかの出来事だった。それはそれは美しくて、あたたかくて、甘くて、にがくて。そして存在が即ちすでに、嘘だった。あたしは幻を見ていた。ほてった紅で口づけしてオレンジワインの芳ばしさを深く深く海のいろに染めた明け方。煌びやかな電飾に浮かび上がったのは、昨晩という名の喫茶店かバーであったかもしれない。夜が溶ければ灯り
2024年6月3日 02:56
本当に思っていると言うのはほんとうは本当と思っていたいだけなのかしらと己すら誠と信ぜられない酔いの言の葉口にのぼれば刹那の煌めき宵に溶けゆく紅い幻想に落つる伏目の奥は在りし月か或いはとうに違えた月の許であるか影刻々と移ろう雑踏に別つ背の途を遠のく貴女を
2024年6月2日 13:32
これだけの掌を犠牲にして得られると説かれる未来が季節 何巡めぐった先にも 先にも見えなくたって 薄ら曇り空のした今にも底の抜けそうな大通りを慎重に慎重に 歩いていかなきゃならんのでしょう止まない小雨をバケツに溜めてほらと見せる空想に頭傾けても靴下は湿り気を帯びて見えない雷が遠くで鳴ってわたしは
2024年6月2日 13:30
洗いたてのグラスを逆さにしたら玄関口で待ちかまえる鬱屈の雫が 今日は落ちてこない 何故蒸発して漂っているのか自分で呑み下してしまったのか
2024年5月27日 21:27
呑み込んだ涙も心のなかに咲う木漏れ日も、しかるべき時を待って言葉に芽吹いてゆけ。みなもを揺らしてゆけ。泡沫の夢を掬うは言葉のたおやかさ、人知れぬ瞬きを捉えるは言葉の機微、光の届かぬ海底を照らすは言葉のしなやかさ、なのだから。