麗奈

顔あげて、一度でいいからわたしの話を聴いて

麗奈

顔あげて、一度でいいからわたしの話を聴いて

マガジン

  • じぶん作詩/短歌 のようなもの

  • みなさまのたなごころ撰集

    これは私だけの、と云いながら、その宝箱とやらをどうしても人の目前でぱっと開けて見せたくなるというのは、どうやら生来人間に根を張っている欲求らしい。たなごころ撰集だなんて、それっぽい題をつける勿れ。電車に揺られながら、風呂上がりに上気した顔で、ついつい片手で波に乗っているうちにふと、気になる赤い点を遠くに認める、そうあっちの、さっきまで風が吹いてきた方の向こう岸に、と言って。なんとか近づいてみようなんて思うまでもなく、気がつけば自分の体はそこに在る。すぐそばに一輪の花を見つける。ひとつの珍しい貝を見つける。そして掬い取って、みる。砂がさらさらと指の隙間から落ちてゆくなかに、しかしその花は、貝だけは掌のうちに残る。たなごころ。なんてあたたかな音の並びでしょう。私だけの、いやいや、所詮はそのへんの道端に転がっている一読書家の悠長な蒐集なので、どうか悪しからず。

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傾いたらだめ、分かっていても恋ゴコロ

先週だったか、満員電車に揺られていると、となりのスマホ画面が視界の隅でちらついた。良くないと思いつつ気になって目をやると、女性がスマホを縦に持ってゲームに熱中している。が、その様子がどうもふつうではない。縦の画面でスマホを操作しているのに、そこに映っている画面は横持ち仕様なのだ。横向きになったキャラクターや、縦に連なる横書きのセリフたちが、次々と片手持ちの親指でスキップされていく。思わず二度見してしまうような光景が、隣の肩越しに流れていたのである。 視界の隅の違和感はこれだ

    • 微睡

      こころがいっぱいになったから きょうは眠りにつくとしよう まだすこし はやいけれど そう思ってからが 長いのだけど もくもく伸びるかげ 準備体操はいらない 放りだした足が どこまでも伸びる 天井の角が よそよそしく腕を組む 角っこ界のいたんじ  まっしろく ここにあり こころがとろんとしてきたから きょうは灯りを消すとしよう だくてん弛んでぼいんがのこって 古池にぽちゃんとおちるてまえの はく息とすう息の あいだの あいだを しわわせと よぶ

      • カロリーの低い音楽を無性に聴きたくなるときってあるよね 心がもたれてんだ ミッドナイト・バス/ラッキーオールドサン

        • どうとも口に上しがたい感情?感情って大それてるよな、口に上しがたいなにかをどう扱えばいいのか、この感じを忘れたくないけど安易に言葉にもしたくなくてむゆむゆして膝の甲ばっか見てる

        • 固定された記事

        傾いたらだめ、分かっていても恋ゴコロ

        • カロリーの低い音楽を無性に聴きたくなるときってあるよね 心がもたれてんだ ミッドナイト・バス/ラッキーオールドサン

        • どうとも口に上しがたい感情?感情って大それてるよな、口に上しがたいなにかをどう扱えばいいのか、この感じを忘れたくないけど安易に言葉にもしたくなくてむゆむゆして膝の甲ばっか見てる

        マガジン

        • じぶん作詩/短歌 のようなもの
          6本
        • みなさまのたなごころ撰集
          12本

        記事

          本ってほんとに破格

          ダジャレみたいな題になってしまった。 今日も本を買った。 いやー、本ってほんとに破格。 これを思う時ってわたし、生きてていちばんしあわせな瞬間なのかもしれない。 過言じゃない。ピカピカの湯船に浸かってる時と好物の沖縄料理を食べてる時と好きな人と一緒に眠りにつける時、に並ぶくらいわたしのなかでは切実に、しあわせが沁みる瞬間なのである。 しあわせなことに今日もそう思った。 読み始めた序盤から、切実に感極まっている。(別に酒が入っているとかではなく) 帰宅して晩ご飯を温め

          本ってほんとに破格

          くるくる貝

          相変わらず奇抜な柄が似合ってしまうきみの ひろい肩やむねに付いてる貝や貝や貝や貝の そのうちの一つに過ぎないとしても少なくとも 薄まったレモネードが回ってるいまはあたしの海だ だからくるくる回って永遠に減らなくてこの時間が 続いてほしいのに続いてほしくない、なんで? 分かってるんだよそうして陽だまりみたいに笑う ちゃん付けしてくれるさり気なく靴をほめてくれる 優しさを持て余して手もち無沙汰なんでしょう さっきからきみは眠そうだねあたしはね。 いつまででもく

          くるくる貝

          人間どうやっても孤独だと言うことの折り合いを、何処でつければいいのか二十余年生きていて未だに解らない

          人間どうやっても孤独だと言うことの折り合いを、何処でつければいいのか二十余年生きていて未だに解らない

          【一行だけで。】深夜2時参戦の女ありけり

          ※これはYouTubeチャンネル「BRUTUS」で公開中の「【一行だけで。】又吉直樹、戸塚祥太、黒川隆介が酒席で"言葉"を語る(後編)」に、平凡社会人のわたしが布団の中からリアル参戦した記録です。 企画内容は「○○に1行のタイトルをつけよ」というもの。 文字通り"言葉のプロ"たちが、グラスを傾けながら、駄弁りながら、言葉遊びを繰り広げているところに、金曜飲み会終わりのなんとなく淋しい23歳女もまた加わります。 ルールはひとつだけ。 動画を途中で止めないこと。 リアル参

          【一行だけで。】深夜2時参戦の女ありけり

          鍋のなかの人参とジャガイモ、お前たちはまだ何にでもなれるよだなんて。わたし、あなた、東京の片隅で今日も箸つついて笑いあおうじゃないの。

          鍋のなかの人参とジャガイモ、お前たちはまだ何にでもなれるよだなんて。わたし、あなた、東京の片隅で今日も箸つついて笑いあおうじゃないの。

          今朝よりも黄ばんだビニル傘携えて 飯の匂いには犬並みの嗅覚持つ君の そういうとこが好きと味見す湯気越しに

          今朝よりも黄ばんだビニル傘携えて 飯の匂いには犬並みの嗅覚持つ君の そういうとこが好きと味見す湯気越しに

          Alexa,スペイン語に訳して。凹んだ乳首

          つい数日前に夜中の謎テンションでインスタのサブ垢をつくり、一生誰にも公開しない体で(今後気が変わってやっぱり誰かに見て欲しいという顕示欲が顔出すかもしれないけれど)とにかく一旦そういう体で、ツイートみたいな投稿をぽんぽん上げてみることにした。 誰かと繋がる前提のSNSで一人芝居はひたすら意味不明だけど、ただ皆で飲んで解散したあと誰かに電話したくなるとか、深夜にカップラーメン食べたくなるのとかと同じレベルの衝動で、どうせ明日起きたら何じゃこりゃとなり、次の投稿は永遠にされない

          Alexa,スペイン語に訳して。凹んだ乳首

          【横須賀】幻のような絶品洋食屋・月印

          神奈川県横須賀市、汐入。 戦前は旧日本海軍の門前町、戦後は米軍基地のある町として栄え、スカジャンの発祥地とも言われてきたこの場所に、文字通りマボロシのような洋食屋がある。 細い路地を奥に進むと見えるのは、白とコルク色の縞模様があしらわれた小さな屋根。古い木造建築を外から覗けば、今宵も月夜に煌めくにちがいない赤緑橙のステンドグラス窓ー 屋根上には大きくこう掘ってあった。 【月 印 cafe antique】 そう、ツキジルシという店だ。 数時間前、私はひとりこの店の

          【横須賀】幻のような絶品洋食屋・月印

          素数になりきれないおとなたち

          おとなは緊張してないフリも、してるフリも上手いのね。 もうあの頃みたいに、試験開始の合図にドキドキしながら素数をかぞえたりはしない。 わたしは大人だから。 ゆうべの寝返りを朝のコーヒーで流し込めば、 きょうも電車が走って株が動きます。 でもどこへ? わからない。 割りきれない気持ちというのが、あるでしょ。 それを空にうかべてみるんです。 あの頃みたいに、心をからっぽにして。

          素数になりきれないおとなたち

          今日はぼくのほじょりんがとれた日だから ゆずるのも愉しくて思わずふり返る春の小道

          今日はぼくのほじょりんがとれた日だから ゆずるのも愉しくて思わずふり返る春の小道

          NOSTALGHIA(4K修復版)

          観てから美術館に直行するつもりだったけど、案の定、作品から受け取ったものの余震で胸の内が騒がしいのでひと息つく。 たやすく言葉にはできない(してはいけない)ような、ただならぬ気配を霧みたいに纏っている作品だった。だから逆説的にも、このまとまらない気持ちを、言葉にしていったん自分の外に仮置きしないと日常生活のレールに戻っていけない。。 *** この作品世界に流れているのは時間でも旋律でもだれかの人生でもなくて、ひとつの啓示(あるいはそれに抗うこと)の、断片的なかけらだとい

          NOSTALGHIA(4K修復版)

          -短編小説- サザンカ

          その花には、何とも苦いような妙な因縁がある。 四年前、娘が生まれる年の十一月のことだった。うちの庭に白いサザンカがひとつ、きれいに花びらをつけたまま落ちていた。滔々と流れるのは雲なのか空全体なのか、見分けがつかないほどすっきりとした秋晴れの朝である。その花は、まるで天から偶然落ちてきたとでもいうように、青丹芝生のまんなかでぽつりと上を向いていた。私は会社へ向かおうとして、ふと足を止める。花びらが陽光を透き通って瞳の奥まで響くほどまっしろい。微かに影がゆれると、風をほんのり色

          -短編小説- サザンカ