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【本紹介】高野史緒『グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船』

――ちなみに、この本は、先日開催されました全国大学ビブリオバトル茨城大学大会で僕が紹介し、チャンプ本となった本です。


人生は物語。
どうも横山黎です。

大学生作家として本を書いたり、本を届けたり、本を届けるためにイベントを開催したりしています。

今回は「高野史緒の『グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船』を紹介する」というテーマで話していこうと思います。





📚飛行船を巡る青春SF

茨城大学4年次の横山黎です。今回僕が紹介するのは、『グラーフ・ツェッペリン』という本です。

グラーフ・ツェッペリン。言いにくい名前ですね。全く知らない人からしたら、何語かも分からないと思います。僕もそうでした。人名なのか、地名なのか、物の名前なのか。その答えは、この本の本題にあります。

「あの夏の飛行船」

そう。グラーフ・ツェッペリンとは、飛行船の名前なんです。これは、グラーフ・ツェッペリンという飛行船を巡る1組の男女の物語。ジャンルでいえば青春SFです。



📚異なる世界、同じ記憶

主な登場人物は2人。夏紀と登志夫です。

夏紀は17歳の高校生。将来は宇宙関係の仕事に就きたいと思っています。一方の登志夫は同じ17歳なんですが、大学生なんです。子どもの頃から頭が良くて飛び級で大学に進学したという経歴の持ち主。将来は理工関係の仕事に就きたいと考えています。

このふたり、同じ2021年を生きているんですが、実は別々の世界の住人なんです。

急にSFっぽくなりましたね。そうなんです。異なる世界で生きている。それぞれの世界には特徴があります。

例えば、夏紀の世界ではめちゃくちゃ宇宙開発が進んでいるんですよ。月や火星に基地があって、そこで人が働いていたりする。そう、そういう背景もあって、夏紀は将来宇宙関係の仕事に就きたいといっているわけです。

一方、登志夫の世界ではそんなに宇宙揮発は進んでいないんですよ。代わりに、コンピュータ技術が盛んで、メタバースの事業も進んでいます。

しかし、夏紀の世界ではコンピュータ技術が遅れています。僕らの世界では1995年にインターネットがやってきてWindows95が発売されましたが、夏紀の世界では2021年にやっとやってきました。Windows21が発売されたばかり。スマホも全然普及していない。そんな世界なんです。


そんな別々の世界で生きているふたりですが、実はひとつの共通点がありました。それは、幼稚園児の頃、「グラーフ・ツェッペリン」という飛行船を一緒に見たという記憶があるってこと。

不思議ですよね。おかしいですよね。

どうして異なる世界で生きているはずのふたりが、同じ場所にいて、同じ飛行船を見て、同じ記憶を持っているのか。


これは、異なる世界で生きているふたりが、それぞれの世界で、グラーフ・ツェッペリンを巡る記憶と向き合い、その謎に迫っていくという物語なんです。

ちょっと面白くなってきたでしょ?

読みたくなってきたでしょ?

そんな物語、誰が書いたかというと、高野史緒さんという方です。デビューして30年近く経つ大御所作家さんなんですが、実はこの方、僕の通う茨城大学の卒業生だったんです。



📚初めて地元を舞台にした作品

高野さんは茨城大学のOG、僕の大先輩なんです。なんなら、先日、この本の出版を記念して、講演会をしに茨城大学にお越しになられたんです。僕は興味を持ったので、高野さんの話を聴きにいったんですが、めちゃくちゃ面白かったです。

特に印象的だったのが、高野さんはデビューして30年近く経つわけですが、この本で初めて、自分の地元を舞台にした物語を書いたんです。

高野さんの地元はどこかというと、茨城県の土浦。全国的に有名な花火大会の開催の地として知られています。僕も何度か行ったことがあります。そう、『グラーフ・ツェッペリン』の物語の舞台は茨城県の土浦なんです。

だから、夏紀と登志夫がグラーフ・ツェッペリンを見た場所も、土浦駅に近くにある亀城公園という小さな公園の丘の上。他にも土浦にゆかりのある地名やお店の名前が出てきたり、僕と同じ茨城大学の学生が登場したりします。


高野史緒さんの講演会のときの写真


そして、最も興味深いのが、グラーフ・ツェッペリンは実在したという事実です。

1929年、グラーフ・ツェッペリンというドイツの飛行船がアメリカを出発して、世界一周の旅に出ました。その途中、日本に寄航することになったんですが、そのときに選ばれたのが土浦にある霞ヶ浦航空隊でした。当時は東京からも見物客が来るほど、かなり話題になったそうです。

そんな史実を元に、高野さんは自分の地元土浦を舞台にした物語を書いていったのです。

ちなみに17歳の夏紀は、その頃の高野さんの感性や性格と似ていて、モデルといってもいいそう。夏紀の感情の揺れ動きは、当時の高野さんのそれ。デビュー30年を前にして、初めて自分の地元を舞台に、自分の話を書いたというわけです。

以上のように、SFとはいいつつも、実在する地名や史実に基づいた情報が登場します。現実と虚構、過去と未来が重なり合った重厚感のある物語です。是非、本書を手に取って、壮大な読書の旅に出かけてみてください。


ちなみに、この本は、先日開催されました全国大学ビブリオバトル茨城大学大会で僕が紹介し、チャンプ本となった本です。この記事の最後にそのときの紹介の様子を載せておきますね。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

20231022 横山黎



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