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単純な脳、複雑な「私」
■書籍名 単純な脳、複雑な「私」
■著者 池谷裕二
脳科学というと、ニューロンやシナプス等の神経系による科学的な論述に終始するイメージが強いが、本書においては、聞き手が高校生ということもあり、大変丁寧な説明がなされており、脳の不思議の本質に迫る良著である。哲学的に難解な論理的な意味を付与することで得心のいく事象についてさえ、脳科学にかかると、単なる現象として処理されるということで、これまであま
猫を捨てる 父親について語るとき
■書籍名 猫を捨てる 父親について語るとき
■著者 村上春樹
自分の父親がどのように生きてきて自分と関わり、そしてどんな気持ちを持って死んでいったのか。人間だったら、自分のルーツを探りたくなる欲求に駆られることは自然である。特に、戦時中を生きてきた世代が戦前、戦中、そして戦後と、時代に振り回される中で何を感じて生きてきたか。著者の父は、全くもって僕の祖父母世代にあたるが、僕自身も戦中世代の行動
一億三千万人のための「論語」教室
■書籍名 一億三千万人のための「論語」教室
■著者 高橋源一郎
読後感としては、論語という一般的にはなかなか理解することが難しい書物を、楽しく愉快に読むことができたという満足感があるとともに、そのような愉快な内容に20年間かけて仕立て上げた著者の所業と心意気に敬服するところである。
本書は、論語の現代語訳、いや現代版「超訳」と言ってもいいかもしれないが、いずれにしても現代社会に生きている僕た