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[コンピューターサイエンス留学] 現地に行って感じた日本の大学、大学院との違い

Polymathはニューヨークとロサンゼルスを拠点とする、理系専門留学コンサルティングファームです。アドバイザーは米国の第一線で働くGAFAM・外資投資銀行エンジニア、現役CS大学院生で構成されており、エッセイ添削、出願、合格まで力強くバックアップ致します。元々は家族・友人・同僚向けにアドバイスをしていましたが、より多くの皆様の留学成功にコミットしたいという想いから会社を設立しました。

23年5月からPolymathでインターンをしているヒロシと申します。私は日本で13年間社会人をした後、南カリフォルニア大学院でコンピュータサイエンスを学んでいます。

日本では大手と呼ばれる会社で働いていましたが、仕事でプログラムを書くことは殆ど無く、典型的な大手企業の働き方をしていました。

日本の大学院で修士号も取得したことがあるので、今は2つ目の修士号を取得中になります。これらの経験から、現地で感じた日本の大学、大学院との違いを紹介したいと思います。

大学院コース紹介

米国では修士号に加えて博士号の学位を取得することも一般的ですが、修士課程進学と博士課程進学は全く異なるプロセスなので、今回は修士号に焦点を当てて紹介します。

南カリフォルニア大学の工学部(Viterbi)の建物。Viterbi氏からの多額の寄付金を記念して、工学部の名前はViterbi School of Engineeringとなっている。

形式的に日本の修士号との主な違いは、修士論文を書くコースと書かないコースをアプライ時に選択できる点です。
日本で修士号を取得する際には修士論文を書くことが前提となっていますが、アメリカの大学院には論文を書かないコースも存在します。私は修了後に現地で就職を狙っているので後者のコースを選択しました。

コースの特徴

このコースは、社会人として働きながら専門性を高めたい学生。および、研究者としてのキャリアに興味は無いが、修士号は取得しておきたい学生。あるいはSTEM OPT(卒業後3年間、アメリカで就労できるビザ)を取得して現地で就職したいという学生で大半を占めます。そのため、カリキュラムも実務で役立つスキルを理論とともに学べるものに特化しています。

私がSpring 2023に受講したWeb Technologyというクラスでは、フルスタックエンジニアに必要な技術要素を学ぶクラスでした。教授もアメリカ政府の発注プロジェクトやCTOとしての経験を持つプロが教えており、フロントエンドとバックエンドの実装、ウェブアプリケーションの開発といった内容を学びました。

また、少し脱線しますが、EE(Electrical Engineering)のクラスではMetaの研究所や、Googleで働いている現役のエンジニアが週末に教えに来る授業もあります。

学校側も学生のニーズに合わせて、授業内容やカリキュラムを準備するので、課題の内容や実際の雑談もエンジニアとして働くことを想定した内容で、必要なスキルを学ぶことができます。

多様性

学生の構成は、コンピュータサイエンス専攻の大学院生(修士)が約600人いますが、日本人は5人だけ。大半はインドや中国から来た学生です。

もちろん、エンジニアスクールだから、このような割合なのかもしれません。MBAやLLMでは日本人が20人ほどいるので、毎日どこかで日本語を聞くとも聞いたことがあります。

コンピュータサイエンスに関しては、どの授業に出てもインド人が40%、中国人が40%、その他が20%といった割合は変わらず、日本人としてマイノリティに属しながら彼らと共にコースを乗り切ることになります。

ロサンゼルス自体が沢山の人種がいる土地柄ですが、大学内は特に多様性があります。工学部はアジア系中心です。

一方、日本の学部、大学院の頃を思い出すと約95%は日本人でした。当時と比較すると、クラスで出来た友人が増えていく楽しさや、彼らの考え方や受けてきた教育の違いなど、見聞きしながら学ぶことができるので、専門知識以外の知見も得られるのが大きいと感じています。

つまり、1日で中国、インド、サウジアラビア、韓国からの留学生と話すことが日常的になり、留学前から自分の普通の基準が上がっていることを感じます。また、全く利害関係がない友人が各国に出来ていく楽しさも、この多様性の中で得られる貴重な財産だと思います。

課題の量

課題の量は、噂には聞いていましたが、やはり実際に体験すると凄みを感じます。アメリカの大学院の方が多いと言わざるを得ません。
もちろん、日本の大学院では論文がメインなので、研究を頑張れば頑張るほど大変になるのは間違いありません。

しかし、課題という意味では、学部生時代の学生実験やクラスの課題と比較しても、量が違います。アメリカの大学院で与えられる課題の量は、授業を受けながらギリギリこなせる、絶妙な量が出されます。取り組む期間も、2週間や長いもので1ヶ月といった感じで、1日2日で簡単に終わるような課題は出されません。

このような違いが生まれるのも、大きく2つの要素が関係していると思います。1つは課題を通じて使えるスキルや、問題対処の手法を学ばせる様にカリキュラムが設計されているから。もう1点は、課題の成績が最終的な成績に反映されるからという点です。しかも、良い成績を取ることが将来的に恩恵を受けることがあるので、GPAに対する意識は非常に高く、シビアです。

従って、その為に必要なサポートは手厚くされます。日本との違いにもなりますが、クラスを運営するのは教授だけでありません。ティーチングアシスタント、コースプロディーサー、グレーダーといったクラスをサポートする十数名の学生を、教授がクラス運営の為に雇い、彼らはアルバイトとして授業の運営に関わっています。

つまり、難しい問題や、量が多い課題が出されても、教授やティーチングアシスタントに質問したり、ディスカッションできる機会、さらにはPiazzaという掲示板まで準備されており、とにかくいつでも質問が出来る体制が整っているので、量が多くても各自で頑張ってやり切れというスタイルが成立します。

勉強に対する意識

コンピュータサイエンスの学生だけでなく、エアロスペースの学生やエレクトリカルエンジニアリングの学生を見ていても、専門性を高めてアメリカで職を得ようとする貪欲さは日本で感じたことがありません。インターンポジションへの応募数を聞いても軽く100社は超えており、貪欲に前進しようとする姿勢には良い刺激を受けます。

そんな彼らは、勉強においても貪欲です。学んだことが、そのまま面接で聞かれたり、実際の仕事に直結することが分かっていますし、高いGPAを保つことが当たり前になっているので、本当に良く勉強します。テスト前は図書館には深夜まで学生が勉強するのは普通ですし、勉強をサボろうという学生には流石に見かけることは少ないです。

私のルームメイトの話になりますが、彼はサムスンのインド支社でエンジニアとして4年間働いた後、EEを学んでいました。彼は私の知る限り、部屋にずっと篭って勉強していました。もちろん家族と電話したり、私たちと談笑したりする時間もありましたが、彼曰く、平日は15時間は勉強していたんじゃないかと。

もちろん、彼はインドの東大、IITに合格するほどの頭脳の持ち主なので、話すと頭のキレが抜群に良いことは、誰もが気がつきます。そんな彼が、目の前で必死に勉強する姿を見ると、自ずと自分の基準も上げりますし、こういう学生が将来的に社会で活躍していくので、自分の競争相手だと自覚もします。

何故、海外留学なのか

最後に、何故、私が仕事を辞めて海外の大学院なのか?という点についても触れておきたいと思います。私の見解は、日本でこのような機会が無かったということです。実際に手を動かしてスキル習得をしながら専門性を高め、グローバルな環境で通用するレベルに自分を引き上げたいと考えれば、他に選択肢がありませんでした。

もちろん、国内外の学部、大学院も検討しましたし、仕事をしながらオンラインで海外大学院の学位取得も検討しましたが、現地で学ぶことが最も効果的な手段だと判断しました。

仕事を辞めて学生に戻るリスクもありますが、この機会を活かすも殺すも自分次第だと思っています。まだまだ道半ばですが、既に自分の目の前には新しい景色が広がり、1年前とは違う尺度で物を考えています。また、世界中に友達ができたことも、大きな財産の1つです。

もし、死ぬまでにやりたいことリストを作った時に、専門性を高めて社会で活躍したい、海外留学や海外駐在、および海外で生活してみたいといったことが入っている方には、是非挑戦してみることをおすすめします。

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