UMI

昭和63年生まれ。医療系のお仕事。育児休業中。麻布のあたりで暮らしています。

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記事一覧

読書感想文『謎の毒親』/姫野カオルコ

タイトルのインパクトが強い。 「謎の〜」といえばわたしの中では勝手な印象であるが少年少女向けの冒険譚である。「謎の島」とか「謎の海賊船」とか。 でもこの本はちょ…

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4年前
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マリアとマルタ

わたしはクリスチャンではないがミッション系の学校を卒業していて、聖書を読んだことがある。 その中でもマリアとマルタという説話があって、それがとても心に残っている…

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4年前
11

肉体関係

萩尾望都先生の「メッシュ」は不朽の名作だと思っているんだけど、メッシュがミロンに向かって 「自分と母親の肉体関係について考えたことある?母親の濡れた産道を通り抜…

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4年前
6

六本木センチメンタル散歩

六本木ヒルズを散歩していたら、ウエストウォークの植え込みにたくさんのオリーブがなっているのをみつけた。 オリーブは秋に結実するんだな〜と思いながら写真を撮ってい…

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5年前
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夫のシャツ

娘が叫んでいる。文句を言っているのだ。 抱き上げるとくるくると首を左右に動かしてあたりを見回している。 私は娘を抱いたまま部屋の中を歩き回る。興味深そうに見つめて…

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5年前
2

人生で1番の恋

大学生の頃、通っていた大学のキャンパスは今より管理がゆるく、特にサークル棟は無法地帯に近かった。地下にはいくつかの多目的スペースがあって、楽器の練習をしたり舞台…

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5年前
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乳について

大学時代、人類学のゼミにいたのでよくメディアセンターにいりびたり古い文化人類学の本を読み漁っていた。 そんな中でこんな話を見つけた。 北アフリカのとある民族では、…

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6年前
5

ヘルニア

3ヶ月の娘を抱っこで寝かしつけていて、ふと思いついて「ひねりを加えたエクササイズ」などとやっていたら。 背中に差し込んだプラスチックの下敷きをパスンと爪で弾かれた…

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6年前
4

結婚相談所

短いスパンで付き合ったり別れたりを繰り返していた加藤さんという先輩と27歳の頃、キッパリはっきり別れた。 自由が丘のアパートに置いていた荷物が実家に送られてきてわ…

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6年前
7

セックスレス

ビーチグラスには罪はないのだが、ビーチグラスを直視できない日々が続いた。 そのころ就職のために松戸の近くで一人暮らしをしていた。ビーチグラスは窓辺を飾るインテリ…

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6年前
4

ビーチグラス

ビーチグラスをご存知か。砂利っぽい砂浜の波打ち際に落ちている、波に削られサラサラの手触りになったガラスの事である。 わたしは綺麗な石を集める癖があるが、ビーチグ…

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6年前
5

死んでしまった先輩

大学生の頃、少し好きだったサークル先輩の加藤さんという男性を誘いたくて、みかん狩りを企画した。 加藤さんは車で出かけるのが好きで、変わったイベントを企画すれば物…

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6年前
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麻布

麻布に住んで早2年。目まぐるしく生活が変わって夫ができ妻になり娘が生まれて母になり自分に向き合う時間が少なくなった。麻布という場所にはご近所という感覚がなくて好…

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6年前
1

海が見たい

空気のように、日常的に海が見たいと言いながら気がつけば内陸に就職していた。気がつくのが少し遅かった。江戸川をずっとずっと下れば海につく。海につくのだぞと言い聞か…

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8年前
読書感想文『謎の毒親』/姫野カオルコ

読書感想文『謎の毒親』/姫野カオルコ

タイトルのインパクトが強い。

「謎の〜」といえばわたしの中では勝手な印象であるが少年少女向けの冒険譚である。「謎の島」とか「謎の海賊船」とか。

でもこの本はちょっとタイトルからは内容の想像がつかない。

内容としては、個性の強い両親の元に一人っ子として生まれ育った「わたし」が幼少期から経験してきた「不思議なこと」を、大学時代を過ごした町の書店が発行していた壁新聞の編集者たちに投稿という形で相談

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マリアとマルタ

マリアとマルタ

わたしはクリスチャンではないがミッション系の学校を卒業していて、聖書を読んだことがある。

その中でもマリアとマルタという説話があって、それがとても心に残っている。たしかこんな話です。

イエスキリストと弟子たちのご一行がある村を訪れた時、マリアとマルタという姉妹のいる家に滞在することになった。

マルタという働き者の姉はせっせと場所を作ったり料理を作ったりと動き回ってイエスをおもてなしした。

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肉体関係

肉体関係

萩尾望都先生の「メッシュ」は不朽の名作だと思っているんだけど、メッシュがミロンに向かって

「自分と母親の肉体関係について考えたことある?母親の濡れた産道を通り抜けて生まれてくることについて」

とかなんとかたずねてミロンをギョッとさせるシーンがあった気がする。本が手元にないので正確なセリフではないのですが。

自分と母親の間の肉体関係について考えることって通常であればないはずで、産道を通り抜ける

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六本木センチメンタル散歩

六本木センチメンタル散歩

六本木ヒルズを散歩していたら、ウエストウォークの植え込みにたくさんのオリーブがなっているのをみつけた。

オリーブは秋に結実するんだな〜と思いながら写真を撮っていると、外国人らしい見た目の人が電話をしながらオリーブの実をむしっていた。

むしってはパーカーのポケットに入れ、わたしがそこにいる間に次々とむしっていく。

ジロジロ見るのもはばかられたので立ち去ったが気になった。やはり漬けて食べるのだろ

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夫のシャツ

娘が叫んでいる。文句を言っているのだ。
抱き上げるとくるくると首を左右に動かしてあたりを見回している。
私は娘を抱いたまま部屋の中を歩き回る。興味深そうに見つめているので「これは鏡。かわいい女の子がいるね?誰かな?」と遊ぶ。「ヒャー」と声を上げ足をバタバタさせて喜んでいる。

しばらくすると洗濯が終わった音がしたので娘をベビーベッドに下ろし、洗濯物を干そうとする。すると娘は再び文句を言うのだ。

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人生で1番の恋

大学生の頃、通っていた大学のキャンパスは今より管理がゆるく、特にサークル棟は無法地帯に近かった。地下にはいくつかの多目的スペースがあって、楽器の練習をしたり舞台をやったりとサークルごとに自由に使っていたのだ。

所属していたサークルも季節ごとに活動発表会をしては、そこに酒類を持ち込んで飲み会をやっていた。当然酔っ払った学生は小さな練習場を抜け出して夜のキャンパスのほうぼうで座り込み、語ったり歌った

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乳について

大学時代、人類学のゼミにいたのでよくメディアセンターにいりびたり古い文化人類学の本を読み漁っていた。
そんな中でこんな話を見つけた。
北アフリカのとある民族では、たとえ夫婦間でも、成人男性が女性の乳を吸うと、なんと棒で打ち殺されるというルールがあるという。
乳を吸ったくらいで死刑、と衝撃を受け、なにか呪術的な意味合いとか、女性の乳房に対するリスペクトがあるのだろうか、とその時は思った。

しかし今

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ヘルニア

3ヶ月の娘を抱っこで寝かしつけていて、ふと思いついて「ひねりを加えたエクササイズ」などとやっていたら。
背中に差し込んだプラスチックの下敷きをパスンと爪で弾かれたような軽い衝撃があって、あとからあとからじわりと痛くなった。
しまいには抱き上げることはもちろんオムツ替えすら困難になり、悲鳴をあげてぜんぶ夫にやってもらった。
疲れて帰ってきた夫ももちろん悲鳴をあげていた。

朝になって母に娘を預け、家

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結婚相談所

短いスパンで付き合ったり別れたりを繰り返していた加藤さんという先輩と27歳の頃、キッパリはっきり別れた。
自由が丘のアパートに置いていた荷物が実家に送られてきてわかった。
休みの朝、ホットケーキを焼いてくれた加藤さんはもう二度とわたしを愛すことはないと結論づけたみたいだった。
加藤さんは情が深い男性だった。
わたしは何度も振られたが、しばらく連絡を絶ってからふいに連絡すると、必ず復縁できたのだ。

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セックスレス

ビーチグラスには罪はないのだが、ビーチグラスを直視できない日々が続いた。
そのころ就職のために松戸の近くで一人暮らしをしていた。ビーチグラスは窓辺を飾るインテリアだったのだが収納の奥にしまわれることになった。

ある晩、20歳前後から数年付き合っていた清くんという人が組んでいる社会人バンドがライブをすると言うので仕事終わりに学芸大学へ向かった。
メープルハウスという甘そうなライブハウスだった。薄暗

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ビーチグラス

ビーチグラスをご存知か。砂利っぽい砂浜の波打ち際に落ちている、波に削られサラサラの手触りになったガラスの事である。
わたしは綺麗な石を集める癖があるが、ビーチグラスも集めているのである。
そしてビーチグラスを集めるのに適した海は、わたしが知る中では葉山が一番である。

25歳の頃、大学時代のバイトの先輩ユリさんに組んでもらった合コンで宮内さんという男性と出会った。
宮内さんは香川県出身で笑顔が優し

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死んでしまった先輩

大学生の頃、少し好きだったサークル先輩の加藤さんという男性を誘いたくて、みかん狩りを企画した。
加藤さんは車で出かけるのが好きで、変わったイベントを企画すれば物珍しさで車を出してくれると思ったのだ。
メーリングリストというのが当時あって、そのアドレスにメールを送ると、登録している全員に一度で送信できる、全体連絡には便利なものであった。
そこにみかん狩りを計画している旨を流したのである。
思いは叶っ

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麻布

麻布に住んで早2年。目まぐるしく生活が変わって夫ができ妻になり娘が生まれて母になり自分に向き合う時間が少なくなった。麻布という場所にはご近所という感覚がなくて好きである。ご近所は駐在の外国人だったり、金持ちだったりしてけっして我々とは仲間になり得ない感じが良い。この土地に住みながらちょっとだけ浮いているのが心地よい。行きつけのスーパー、行きつけの美容院、どうやら子供ができたとわかってからは有栖川宮

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海が見たい

空気のように、日常的に海が見たいと言いながら気がつけば内陸に就職していた。気がつくのが少し遅かった。江戸川をずっとずっと下れば海につく。海につくのだぞと言い聞かせてごまかしたもののごまかしが効かなくなり転職を試みる次第です。もっと海の近くに住みたい。塩くさい風に髪をなぶられたい。葉山に住みたい。それが無理なら三崎口でもいい。
この大きな川沿いにある内陸の街は日本のヨハネスブルグと呼ばれるほど犯罪が

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