ヘルニア

3ヶ月の娘を抱っこで寝かしつけていて、ふと思いついて「ひねりを加えたエクササイズ」などとやっていたら。
背中に差し込んだプラスチックの下敷きをパスンと爪で弾かれたような軽い衝撃があって、あとからあとからじわりと痛くなった。
しまいには抱き上げることはもちろんオムツ替えすら困難になり、悲鳴をあげてぜんぶ夫にやってもらった。
疲れて帰ってきた夫ももちろん悲鳴をあげていた。

朝になって母に娘を預け、家から1番近い整形外科に行ってみた。
レントゲンを数枚撮ると医者は「ヘルニアですね」と言った。
そしてさらに決定的に診断するために検査専門のクリニックでMRIをとることを勧められた。
1番近いのは恵比寿か渋谷らしい。
さっそく予約を取り、娘をあずける算段をして翌日MRIを撮りに行くことにした。
はっきり言ってワクワクしてきたわたしは不安なふりをして夫についてきてもらうことにした。

MRIの際には化粧をしてはいけないらしい。
なんと火傷をする危険があるという。
10年前のわたしにはすっぴんで渋谷を歩く未来なんて想像もつかなかっただろう。
でも案外人の顔なんて誰も気にしないのである(夫でさえも!)

案内され上下青の検査着に着替える。
前かがみの姿勢がつらいので、ズボンに片足ずつ通すだけで3分くらいかかった。

ヘッドホンをつけ、台の部分に横たわると、穴の中に頭の方から吸い込まれた。
なんとなく火葬場をイメージする。
ヘッドホンからエリックサティのジムノペディが流れている。
しばらくすると道路工事のような騒音が流れ出した。
音楽はたちまちかき消されて全く聞こえない。
クジラのお腹の中で歯ぎしりを聞いているようだな、など考えてうとうとしているうちに検査は終わった。

8月の渋谷は明るく人が多く、隣には夫がいるので嬉しくなった。

久しぶりのデートである。
つい3ヶ月前娘が生まれるまではずっと2人だったのに、それが遠い昔のように感じる。
育児とは長い長い1日の繰り返しだと思う。
学生時代よく行った「やすべえ」というつけ麺屋に入る。
店内はきれいになっていたが甘酸っぱい味は変わっておらず脂っこい角切り肉にも大満足。
夕飯を買うためにヒカリエの惣菜売り場へ足を延ばすことにする。
途中自動販売機で飲んだことのない豆乳飲料を見つけて「チョコミント味」「マンゴーラッシー味」を2本ずつ買う。
何週間か前にcakesで読んだセブンイレブンの直営店の見分け方の話をしながらセブンイレブンを覗く。

短い時間きらめくような外の世界を貪り、ふたたび静かな静かな我が家に戻った。
娘はスヤスヤ寝ていた。豆乳飲料を飲みながら荷物をまとめて実家からの迎えを待った。
実家で娘とだらだら過ごすと腰痛は1週間ほどでよくなった。
#日記
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#平成最後の夏

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