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#ドラマ
にがうりの人 #67 (果ての鬼畜)
「もしもし、俺だ。津田沼だ」
普段の津田沼とは思えぬ、低い地を這うような声だった。その疲弊感は受話器ごしでも伝わって来る。
「お前ももう知っているかもしれないが、落ち着いて聞いてくれ」
胸がざわつく。私は既に泣いていた。それがどんな感情なのかは分からない。それでもとめどなく溢れ出る涙を抑える事は出来なかった。嗚咽を繰り返し、うわ言のように父を呼ぶ私を津田沼はなだめつつ、乾いて掠れた声で事の顛
にがうりの人 #71 (揺さぶられた臓物)
そこにいるのは土色をした父だった。私はその場に崩れる。もはや涙も出なかった。死してなお悲しげな表情の父は何を思いながら最期を迎えたのだろうか。
どうして。なぜ。
憤りがやがて悲しみに変わり、再びやりきれない怒りに変わる。あまりの理不尽な現実は私の感覚を麻痺させ、精神は崩壊寸前であらゆる考えや感情が頭の中に溢れるが整理がつかない。
「これはなんなんですか」
既に私は度を失っていた。自分でも驚
にがうりの人 #72 (終焉の狼煙)
軟弱そうな男は忙しなく眼球を動かして私の話を聞いていた。
「以上です」
私が舞台の幕を閉じるようにそう呟くと急に現実に引き戻されたように男は目を丸くする。
「その、その後は、ど、どうなったんです?」
「今回のお取引はこれで終わりです」
私の言葉にそれまで肩をすぼめていた男が初めて身を乗り出した。
「ちょ、ちょっと待ってください。け、結末が知りたいんですよ。も、も、物語にはオ、オチが必要ですし