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エッセイらしきものばかり

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何がエッセイなのかよく分かっていない人が書いたエッセイらしきものです。
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2022年3月の記事一覧

正確な時刻を示そうとしない時計たち

正確な時刻を示そうとしない時計たち

 友人がスマートウォッチを私に見せてきました。何でも、血圧を測るために買ったとのこと。他にも心拍数や体温も測れるそうで、なかなかに多機能なようです。

 しかし、時間が5分遅れてるんです。友人に理由を聞いても「分からない」とのこと。バグってるのが時計なのか友人なのかは分かりませんが、どう設定しても必ず5分キッチリ遅れてしまうそうです。

 せっかくのスマートウォッチなのに随分不便そうな時計だなあと

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テストの直前に復習をしてはいけない

テストの直前に復習をしてはいけない

 学生時代、頭はいいんだけどなんか変わってる人がクラスにいませんでしたか。私にはいました。仮に一ノ瀬君としておきますけれども、彼は特に勉強している風ではなく、何なら私を含めた悪友どもと頭の悪い会話やら踊りやらをしまくっていたのに、いざテストを受けるといつもトップクラスの成績を叩きだすんです。一ノ瀬君が言うには「授業を受ければあれくらい頭に入る」とのことで、不平等もここまでくると笑ってしまいます。

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亡霊に引っ張られたあとの話

亡霊に引っ張られたあとの話

 亡霊はしばしば生きてる人を呪い、そして死に至らしめます。とりあえず、怖い話の中ではそうなっています。怖い。もちろん、怖いです。死んじゃうんですから。しかも、亡霊の面々はなんでか知りませんが、みんな怖い顔をしています。亡霊なんだから怖くない顔をしたって充分に怖いのに彼らは手を抜いてくれません。どうしてこうもストイックなのか。それも含めて怖いです。

 しかし、ちょっと待っていただきたい。亡霊によっ

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無意味な警報装置

無意味な警報装置

 前に住んでいたアパートなんですけど、駐輪場の広さに対して停まってる自転車やバイクが多かったんです。ですから、狭いスペースにススッと自転車を入れ込んでいたんですが、まあ狭いんでよく隣と当たるんです。当たるくらいなら別にいいんですが、たまに倒すこともある。

 倒しても起こせばいい。当たり前の話です。だから、いつもそんな感じで対処していました。

 ある夜も自転車を駐輪場に停めようとすると、私のお尻

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不思議な自転車乗りたち

不思議な自転車乗りたち

 つい先日も家に向かって歩いていたんですが、1台の自転車が私を追い抜いていきました。

 それ自体はよくありすぎるくらいよくある出来事です。ですから、その時も特に注目してなかったんですが、目の前の下り坂に差し掛かった途端、自転車を降りたんです。あれ、家が近いのか。それともパンクでもしたのか。最初はそう思ったのですが、そのどちらでもないようで、淡々と自転車を引き、急な坂を歩いて下りている。

 私の

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よくわからないコートをもらいました

よくわからないコートをもらいました

 コートに穴が開いたんです。ずっと重いリュックを背負った結果、長年にわたって繰り返された摩擦で背中の生地が薄くなり、表面にすじのような穴がいくつも開いてしまいました。

 こりゃもう着れないな、と思うも、コートなんて私の財布から数枚の1万円札が卒業してしまうくらいの商品です。だからと言って穴開きコートで街中を闊歩する勇気もなければ、薄地の服で真冬を凌ぐ体力もない。どうしたもんかと悩んでいると、友人

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極端なトイレ

極端なトイレ

 何でも統計を取れば平均的なものから極端なものまでズラッと出てくるもんです。トイレだって一緒なんです。もちろん、他人のトイレ風景を見る機会なんてまずありませんし、見たいとも思いません。ただ、公共のトイレだと隣の音がどうしても聞こえる構造になってるところがある。

 公共のトイレにおける極端な方々の多くは、使用時間がものすごく長い人です。普通の人の5倍くらい個室に入っている。そういう人は往々にして静

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逃亡者になれる医者の条件

逃亡者になれる医者の条件

 「逃亡者」とは1963年にアメリカで放送が始まったテレビドラマです。無実の罪で死刑を宣告された医者が護送中に逃亡し、各地を転々としながら真犯人を探すという物語で、非常に人気を博したそうです。この「濡れ衣を着せられた人物が逃走の旅を続けながら真犯人を探す」という形式は主人公の状況や目的が一発で分かりますし、各地を転々とすれば割と簡単に話を続けられ、更に視聴者をハラハラさせる状況を作りやすいなど、ス

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きたるべきドラム缶押しのために

きたるべきドラム缶押しのために

 メタルマックスというゲームシリーズがあります。ドラゴンクエストがヒットしたことで中世ファンタジー風味のRPGが後追いでわんさか出まくっていた頃、「竜退治はもう飽きた!」というキャッチコピーを引っ提げて発売されたRPGです。剣と魔法と竜が出るRPGとは違い、銃と戦車と犬が活躍するRPGとなっていて、当時は一本道のシナリオが多い中、やろうと思えば早い段階でラスボスに挑めるなど、自由度の高いシナリオで

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アンがなかなか出てきてくれない

アンがなかなか出てきてくれない

 友人から何冊か本をもらいました。その中に「赤毛のアン」シリーズが混じっていたんです。

 赤毛のアンはご存じ、L・M・モンゴメリの人気シリーズで、カナダのプリンス・エドワード島を舞台にしたお話です。子供のころから何となく名前を聞いては来ましたが、初めてまともに読んだのは中学の英語の教科書でした。

 いや、まともに読んだなんておこがましい話でした。何しろ、中学生時代の私は人生で最も遊びほうけてい

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