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きたるべきドラム缶押しのために
メタルマックスというゲームシリーズがあります。ドラゴンクエストがヒットしたことで中世ファンタジー風味のRPGが後追いでわんさか出まくっていた頃、「竜退治はもう飽きた!」というキャッチコピーを引っ提げて発売されたRPGです。剣と魔法と竜が出るRPGとは違い、銃と戦車と犬が活躍するRPGとなっていて、当時は一本道のシナリオが多い中、やろうと思えば早い段階でラスボスに挑めるなど、自由度の高いシナリオでも知られています。メタルマックスシリーズはドラクエほどとは言わないまでも人気を博しまして、現在に至るまで続いているシリーズとなっています。
メタルマックスのシリーズは近未来の世界が舞台であり、謎の大破壊で文明が滅びかてはいるものの、人々がたくましく生きている点が共通しています。また、武器や道具が独自路線を走っており、バズーカを背負った犬など独特な敵も知られています。
メタルマックスならではイベントも知られていまして、その中に「ドラム缶を押すだけの労働」があります。敵に町が占拠され、町民は奴隷のように働かされている。そこに出てくるのがドラム缶です。町民は命令により、ただただドラム缶を押し、それをまた自分で押して元の場所に戻す。町民の体力を削ぐと共に、無意味な行為を強いることで心も折るという目的があるようです。イベントが進み、町が解放されても、町民がたまに懐かしんでドラム缶を押しに来る、というエピソードも含めて、メタルマックスでは印象深いイベントとなっています。
で、そのゲームをやってて思ったんです。「これ嫌がらせになるか?」と。
町民に酷いことをしている。その表現としてドラム缶押しが採用されたんでしょうけど、私が占拠された町へ放り込まれたとして、体力はともかく心が折れる自分が想像できないんです。絶対に毎日のタイムを心の中で測定してベストの記録が出たら喜んじゃうでしょうし、なるべく力を使わない運び方の開発をワクワクしながら見つけるに違いありません。
ゲームには登場しませんけど、自分で掘った穴を自分で埋める、みたいな心を折る系の拷問も同じです。そりゃあ、そういうことをされる立場ならばロクなご飯を食べれないでしょうから、体力的にしんどいとは思うんです。でも、心は別にって感じです。新しい掘り方の開発は楽しんでやるでしょうし、日によって土の性質が微妙に違うな、みたいな調査をひとりで勝手にやり始めて喜ぶことでしょう。掘ったらたまに出てくる土中の小動物なんて、それこそ一大イベントです。
そういう目が輝いているやつは別の拷問に回されるんだと思います。もし、その日が来た時のために、無気力な表情や全てを諦めたような濁った目をいつでもできるようにしておきたい所存です。
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