大海明日香
散文詩/自由詩まとめ。
雑記/エッセイ まとめ。
発光したい、発行したい、発酵したい、 ビョウインには行かない、 ふくらんでいくからだを空にして、殻にして、 いのち以外のすべてを詰め込みたい。 波のように流れる胸に…
終わらないで (ぜんぶ終わってしまえ) 夕暮れが嫌いなのは同族嫌悪で、カップラーメンは星になる。 3分待っても消えない怒りはこのまま一生残るのかもしれ…
沈みかけのままずっと漂っている船みたいな家を出てから生活が自分の腕の中にふらっとやってきてくれたような気がして、 どうか離れていかないでねと抱きしめたり世話を焼…
心臓にまで染み込んでいる煙草の匂いが未だにどんな匂いか分からない、わたしは獣じゃない、かといって魔女でもない、 いつか魔女にあったとき、その甘い香りでそのことに…
いっちょ前に健やかなふりをして白湯を飲むところから1日は始まる、 100円ショップで100円じゃなかったキラキラのマグカップは大きさもちょうど良くて、レンジに入れても大…
電波が悪くて時々 ギタリストが演奏を止める サブスクってビスケットみたいで 美味しそう 軽くて あたしも月500円 払ってくれるひとがいれば それなりの愛をあげるの…
雪が降ってるね、降るたびに言ってるけどさ、雪が降ることをもう喜べなくなって哀しいね。 でも雪がとけたら春が来るって、それだけはずっと忘れないでいたいね、 別に好き…
ひらく とじる 心臓のあまいかおりがする 血液のにがいかおりがする 記憶は血管を流れるから 怪我をするたび さらさら滲み出ていく どうでもいいことから順…
自分の声を嫌いになりそうだったら朗読をしたり歌をうたってみたりするし、自分のへたくそな字を嫌いだから手書きで自己顕示欲を満たしてみたりする、 反骨精神の塊みたい…
幸福の重さを上手に測れない 体重計は壊れていてほしい はじめていくカフェの小さなテーブルに飾られた もっと小さなシェットランドシープドッグに 知らない街の写真を…
すれ違った高校生から嗅いだことのある香水の匂いがした、 わたしも文化祭でバンドを組んで歌いたかった、100人に1人くらいは知ってるような曲を歌って、イントロが鳴った…
突然、わけのわからないことで死んでしまう以外に、あたしがきみを泣かせる方法なんてあるの。 きみが死ぬことをかなしむために生きているのではなくてあたしが死ぬ…
逃避を幸福と呼ぶのをやめたくて、夜な夜なナイフを研ぐことだけが日課になる。 刺したいひとたちはみんなみんなあたしのことを知らない、だからまだ太陽は昇ら…
蹴らなかったガードレールはどうせわたしが蹴ったって曲がりも歪みもしないガードレールで、だから蹴らなかったわけじゃないけど、だから蹴らなくてもよかった。 (怒らな…
好きなひとと暮らすようになれば家の中でもかわいくいることをもう少し楽しめるようになるだろうか、 お気に入りの自分でいることは自分の機嫌を取る方法のひとつでもあ…
死ぬタイミングを間違えなければ永遠になれるから焦らなくていいよ、 永遠が君のかたちになることはないけれど、君が永遠のかたちになることはできるから焦ることないよ…
2024年5月3日 23:30
発光したい、発行したい、発酵したい、ビョウインには行かない、ふくらんでいくからだを空にして、殻にして、いのち以外のすべてを詰め込みたい。波のように流れる胸に耳をつけると、いつでもわたしの誕生日を祝う歌が聴こえる、うるさい、うるさいな、耳をぎゅっとふさいだのは、君以外のほとんどと手をつなぎたくないからだった。 信号が赤になったときじゃなくて、青になったときに駄目になるんだ
2024年4月4日 22:34
終わらないで(ぜんぶ終わってしまえ) 夕暮れが嫌いなのは同族嫌悪で、カップラーメンは星になる。3分待っても消えない怒りはこのまま一生残るのかもしれないけれど、簡単にわたしの言うことを聞くような感情はこんな世界ではどうせ生きていられない、 淘汰、わたしを殺そうとする獣とわたしだけが適応する地獄、眠りたくないことと起きたくないことは少しも同じじゃないのに、紺色のカーテ
2024年3月19日 23:33
沈みかけのままずっと漂っている船みたいな家を出てから生活が自分の腕の中にふらっとやってきてくれたような気がして、どうか離れていかないでねと抱きしめたり世話を焼いたりしてるあいだに時間が流れていってしまうね、最近はずっと、近頃読んでもいないのによだかの星のことばかり思い出すよ、よだかにも、鳥たちにも、太陽にも、星にも、誰にもなれないような、誰のことも分からないような物語、だけどきっと、どこか
2024年3月6日 22:17
心臓にまで染み込んでいる煙草の匂いが未だにどんな匂いか分からない、わたしは獣じゃない、かといって魔女でもない、いつか魔女にあったとき、その甘い香りでそのことにきっと気づいてしまう、それがかなしい。 無花果をゆっくり食べる心臓に甘い匂いが染み込むように 指の先にまで流れている激情の炎のことを血液と言うのなら、わたしはやっぱり悪魔の子なのかもしれなかった、それならそのほうがずっとよ
2024年2月21日 23:26
いっちょ前に健やかなふりをして白湯を飲むところから1日は始まる、100円ショップで100円じゃなかったキラキラのマグカップは大きさもちょうど良くて、レンジに入れても大丈夫だから気に入っている。イチゴ柄のパジャマを引きずったままねだると、こいびとが食べていたピーナツクリームのコッペパンを3分の1くらいちぎって渡してくれた。やわらかい甘さが心地いい、このあいだ食べた紅茶味のフレンチトースト、お
2024年2月20日 23:57
電波が悪くて時々 ギタリストが演奏を止めるサブスクってビスケットみたいで 美味しそう 軽くてあたしも月500円 払ってくれるひとがいればそれなりの愛をあげるのにそれなりの生活でそれなりに生きていくのにそれなりに足りる愛を 穴の空いたバケツをテープで止める日々に嫌気がさしたらバケツをかぶって歌いたい反響する自分の声だけ聞いてたら今日はよく眠れる気がする魔法陣を
2024年2月5日 23:20
雪が降ってるね、降るたびに言ってるけどさ、雪が降ることをもう喜べなくなって哀しいね。でも雪がとけたら春が来るって、それだけはずっと忘れないでいたいね、別に好きじゃない春、特別じゃない春、わたしのものにならない春が。 上手に話もできないのに、上手に書くこともできなかったら、上手に詩にしてしまえなかったら、わたしの胸のなかの水はそのうち淀んで濁って生き物の住めない場所になってしまうんじゃな
2024年2月1日 20:44
ひらく とじる 心臓のあまいかおりがする血液のにがいかおりがする 記憶は血管を流れるから怪我をするたびさらさら滲み出ていくどうでもいいことから順番にどうでもいいことはわたしのことがどうでもよくて忘れたいことはわたしのことをくるしめたいからわたしが記憶をしまうとき罰として窓のない部屋に放り込んだから ひらく とじる 心臓は帰り道
2024年1月20日 12:34
自分の声を嫌いになりそうだったら朗読をしたり歌をうたってみたりするし、自分のへたくそな字を嫌いだから手書きで自己顕示欲を満たしてみたりする、反骨精神の塊みたいな性分とは反対にこころもからだもぽんこつのがらくたみたいな造りになっちゃって、でもわたしは精工で完璧で傷ひとつない高級なおもちゃよりぽんこつのがらくたみたいなおもちゃが好きだよ、今日も信号は自分の前でばかり点滅するような気がするし、靴
2024年1月15日 21:15
幸福の重さを上手に測れない体重計は壊れていてほしいはじめていくカフェの小さなテーブルに飾られたもっと小さなシェットランドシープドッグに知らない街の写真を見せてここが故郷なのとずっと嘘の話がしたい (冬になるとあたりいちめん雪が降ってそれが溶けるまでわたしたちは眠るんだよ) 淡い異国の街で産まれたことになって優しいだけのホットケーキを食べる毎日こうしていればシ
2023年12月12日 20:50
すれ違った高校生から嗅いだことのある香水の匂いがした、わたしも文化祭でバンドを組んで歌いたかった、100人に1人くらいは知ってるような曲を歌って、イントロが鳴った瞬間に顔を上げた数人のひとのこと、仲良くはならないまま特別にしたかった、特別だと思ってほしかった。わたしのしたかったは全部、後悔でも憧憬でもなくて渇望です、冬の空気に触れた肌の感想なんかよりずっと、ずっと、喉が乾いています。
2023年11月19日 20:38
突然、わけのわからないことで死んでしまう以外に、あたしがきみを泣かせる方法なんてあるの。 きみが死ぬことをかなしむために生きているのではなくてあたしが死ぬことをきみにかなしんでほしいから生きているだけだって、気づいてしまった日の海が穏やかに凪いでいる。 本物の灯台を見たことがないってこと、誰にも言えないまま皮膚はゆっくりと乾いていく。それなのにお腹の中の海にぽつんと建った灯台はやけに鮮
2023年11月4日 22:46
逃避を幸福と呼ぶのをやめたくて、夜な夜なナイフを研ぐことだけが日課になる。 刺したいひとたちはみんなみんなあたしのことを知らない、だからまだ太陽は昇らないでほしい、なのにいつも不躾に空は明るくなって、あたしは終点に近づいていくから、降りる駅が決まっていないことに焦りだす。 自分が乗る列車のことを環状運転だと思っているひととは多分仲良くなれない、仲良くなりたくないの間違い
2023年10月25日 20:08
蹴らなかったガードレールはどうせわたしが蹴ったって曲がりも歪みもしないガードレールで、だから蹴らなかったわけじゃないけど、だから蹴らなくてもよかった。(怒らないで、)意味のないものを排除したとき、わたしの庭は更地になる、(焦らないで、)寝転がって部屋の隅の埃を見つけたとき、死神だけがわたしを抱きしめたがる、(祈らないで、)はつ恋のひと以外を信仰したとき、わたしはつまらない罪人になる、
2023年10月14日 23:33
好きなひとと暮らすようになれば家の中でもかわいくいることをもう少し楽しめるようになるだろうか、お気に入りの自分でいることは自分の機嫌を取る方法のひとつでもあるのに、どこにも行かないのにメイクするのもすぐに食べ物をこぼしたりどこかへ引っ掛けたりするくせに好きな洋服を着るのも、それはそれでMPが削れていくから難しい、歯を磨いたりお風呂に入るのさえ億劫なの、わたしだけじゃないって教えてくれるイン
2023年10月4日 23:52
死ぬタイミングを間違えなければ永遠になれるから焦らなくていいよ、永遠が君のかたちになることはないけれど、君が永遠のかたちになることはできるから焦ることないよ。 永遠は、世界一可愛くて世界一嫌いなあの子のかたちともまったく似ておらず、液体のふりをしてふくよかな土のなかに決して染み込まずに寝そべっている。金木犀の木の下に埋まっているのは死体ではなくて永遠で、だから代替できない香りがする