大海明日香

愛と生と性とふしぎを詩だの短歌だのにする人

大海明日香

愛と生と性とふしぎを詩だの短歌だのにする人

マガジン

  • 深夜、堕落したブルーライト、ぼくら勝手に孤独になって輪廻。

    散文詩/自由詩まとめ。

  • そらをとべないぼくたちの

    雑記/エッセイ まとめ。

記事一覧

ドライブ・マイ・シー

発光したい、発行したい、発酵したい、 ビョウインには行かない、 ふくらんでいくからだを空にして、殻にして、 いのち以外のすべてを詰め込みたい。 波のように流れる胸に…

2

アンガーマネジメント

  終わらないで (ぜんぶ終わってしまえ)       夕暮れが嫌いなのは同族嫌悪で、カップラーメンは星になる。 3分待っても消えない怒りはこのまま一生残るのかもしれ…

大海明日香
1か月前
5

319羽目の名前もない鳥よ

沈みかけのままずっと漂っている船みたいな家を出てから生活が自分の腕の中にふらっとやってきてくれたような気がして、 どうか離れていかないでねと抱きしめたり世話を焼…

大海明日香
1か月前
5

あくまのこ

心臓にまで染み込んでいる煙草の匂いが未だにどんな匂いか分からない、わたしは獣じゃない、かといって魔女でもない、 いつか魔女にあったとき、その甘い香りでそのことに…

大海明日香
1か月前
4

ひとりとひとりのふたりぐらし

いっちょ前に健やかなふりをして白湯を飲むところから1日は始まる、 100円ショップで100円じゃなかったキラキラのマグカップは大きさもちょうど良くて、レンジに入れても大…

大海明日香
2か月前
9

生まれ変わったらバンドを組もう

  電波が悪くて時々 ギタリストが演奏を止める サブスクってビスケットみたいで 美味しそう 軽くて あたしも月500円 払ってくれるひとがいれば それなりの愛をあげるの…

大海明日香
2か月前

0205個目のセーブポイント

雪が降ってるね、降るたびに言ってるけどさ、雪が降ることをもう喜べなくなって哀しいね。 でも雪がとけたら春が来るって、それだけはずっと忘れないでいたいね、 別に好き…

大海明日香
2か月前
6

思い出せない花の蜜の味

  ひらく   とじる   心臓のあまいかおりがする 血液のにがいかおりがする   記憶は血管を流れるから 怪我をするたび さらさら滲み出ていく どうでもいいことから順…

大海明日香
3か月前
4

1月18日の承認欲求

自分の声を嫌いになりそうだったら朗読をしたり歌をうたってみたりするし、自分のへたくそな字を嫌いだから手書きで自己顕示欲を満たしてみたりする、 反骨精神の塊みたい…

大海明日香
3か月前
7

雪解け水のシロップ

  幸福の重さを上手に測れない 体重計は壊れていてほしい はじめていくカフェの小さなテーブルに飾られた もっと小さなシェットランドシープドッグに 知らない街の写真を…

大海明日香
3か月前
5

-1212℃の体育館で

すれ違った高校生から嗅いだことのある香水の匂いがした、 わたしも文化祭でバンドを組んで歌いたかった、100人に1人くらいは知ってるような曲を歌って、イントロが鳴った…

大海明日香
4か月前
4

どれだけ泣いても海はできません

突然、わけのわからないことで死んでしまう以外に、あたしがきみを泣かせる方法なんてあるの。     きみが死ぬことをかなしむために生きているのではなくてあたしが死ぬ…

大海明日香
5か月前
7

1104回目の朝はあのカフェでモーニングを食べようね

  逃避を幸福と呼ぶのをやめたくて、夜な夜なナイフを研ぐことだけが日課になる。      刺したいひとたちはみんなみんなあたしのことを知らない、だからまだ太陽は昇ら…

大海明日香
6か月前
3

まだころしてないだけ

蹴らなかったガードレールはどうせわたしが蹴ったって曲がりも歪みもしないガードレールで、だから蹴らなかったわけじゃないけど、だから蹴らなくてもよかった。 (怒らな…

大海明日香
6か月前
9

冷えた水と1014錠目のサプリ

  好きなひとと暮らすようになれば家の中でもかわいくいることをもう少し楽しめるようになるだろうか、 お気に入りの自分でいることは自分の機嫌を取る方法のひとつでもあ…

大海明日香
6か月前
6

金木犀は永遠の香り

  死ぬタイミングを間違えなければ永遠になれるから焦らなくていいよ、 永遠が君のかたちになることはないけれど、君が永遠のかたちになることはできるから焦ることないよ…

大海明日香
7か月前
5

ドライブ・マイ・シー

発光したい、発行したい、発酵したい、
ビョウインには行かない、
ふくらんでいくからだを空にして、殻にして、
いのち以外のすべてを詰め込みたい。
波のように流れる胸に耳をつけると、
いつでもわたしの誕生日を祝う歌が聴こえる、
うるさい、
うるさいな、
耳をぎゅっとふさいだのは、
君以外のほとんどと手をつなぎたくないからだった。
 
 
信号が赤になったときじゃなくて、
青になったときに駄目になるんだ

もっとみる

アンガーマネジメント

 
終わらないで
(ぜんぶ終わってしまえ)
 
 
 
夕暮れが嫌いなのは同族嫌悪で、カップラーメンは星になる。
3分待っても消えない怒りはこのまま一生残るのかもしれないけれど、簡単にわたしの言うことを聞くような感情はこんな世界ではどうせ生きていられない、
 
 
淘汰、
わたしを殺そうとする獣とわたしだけが適応する地獄、
眠りたくないことと起きたくないことは少しも同じじゃないのに、紺色のカーテ

もっとみる

319羽目の名前もない鳥よ

沈みかけのままずっと漂っている船みたいな家を出てから生活が自分の腕の中にふらっとやってきてくれたような気がして、
どうか離れていかないでねと抱きしめたり世話を焼いたりしてるあいだに時間が流れていってしまうね、
最近はずっと、近頃読んでもいないのによだかの星のことばかり思い出すよ、
よだかにも、鳥たちにも、太陽にも、星にも、誰にもなれないような、誰のことも分からないような物語、
だけどきっと、どこか

もっとみる

あくまのこ

心臓にまで染み込んでいる煙草の匂いが未だにどんな匂いか分からない、わたしは獣じゃない、かといって魔女でもない、
いつか魔女にあったとき、その甘い香りでそのことにきっと気づいてしまう、それがかなしい。
 
 
無花果をゆっくり食べる心臓に甘い匂いが染み込むように
 
 
指の先にまで流れている激情の炎のことを血液と言うのなら、わたしはやっぱり悪魔の子なのかもしれなかった、それならそのほうがずっとよ

もっとみる
ひとりとひとりのふたりぐらし

ひとりとひとりのふたりぐらし

いっちょ前に健やかなふりをして白湯を飲むところから1日は始まる、
100円ショップで100円じゃなかったキラキラのマグカップは大きさもちょうど良くて、レンジに入れても大丈夫だから気に入っている。

イチゴ柄のパジャマを引きずったままねだると、こいびとが食べていたピーナツクリームのコッペパンを3分の1くらいちぎって渡してくれた。
やわらかい甘さが心地いい、このあいだ食べた紅茶味のフレンチトースト、お

もっとみる

生まれ変わったらバンドを組もう

 
電波が悪くて時々 ギタリストが演奏を止める
サブスクってビスケットみたいで
美味しそう 軽くて
あたしも月500円
払ってくれるひとがいれば
それなりの愛をあげるのに
それなりの生活で
それなりに生きていくのに
それなりに足りる愛を
 
 
穴の空いたバケツを
テープで止める日々に
嫌気がさしたら
バケツをかぶって歌いたい
反響する自分の声だけ聞いてたら
今日はよく眠れる気がする
魔法陣を

もっとみる

0205個目のセーブポイント

雪が降ってるね、降るたびに言ってるけどさ、雪が降ることをもう喜べなくなって哀しいね。
でも雪がとけたら春が来るって、それだけはずっと忘れないでいたいね、
別に好きじゃない春、特別じゃない春、わたしのものにならない春が。
 
 
上手に話もできないのに、上手に書くこともできなかったら、上手に詩にしてしまえなかったら、わたしの胸のなかの水はそのうち淀んで濁って生き物の住めない場所になってしまうんじゃな

もっとみる

思い出せない花の蜜の味

 
ひらく
 
とじる
 

心臓のあまいかおりがする
血液のにがいかおりがする
 
記憶は血管を流れるから
怪我をするたび
さらさら滲み出ていく
どうでもいいことから順番に
どうでもいいことは
わたしのことがどうでもよくて
忘れたいことは
わたしのことをくるしめたいから
わたしが記憶をしまうとき
罰として
窓のない部屋に放り込んだから
 
 
 
ひらく
 
とじる
 
 
心臓は
帰り道

もっとみる

1月18日の承認欲求

自分の声を嫌いになりそうだったら朗読をしたり歌をうたってみたりするし、自分のへたくそな字を嫌いだから手書きで自己顕示欲を満たしてみたりする、

反骨精神の塊みたいな性分とは反対にこころもからだもぽんこつのがらくたみたいな造りになっちゃって、でもわたしは精工で完璧で傷ひとつない高級なおもちゃよりぽんこつのがらくたみたいなおもちゃが好きだよ、

今日も信号は自分の前でばかり点滅するような気がするし、靴

もっとみる

雪解け水のシロップ

 
幸福の重さを上手に測れない
体重計は壊れていてほしい
はじめていくカフェの小さなテーブルに飾られた
もっと小さなシェットランドシープドッグに
知らない街の写真を見せて
ここが故郷なのと
ずっと嘘の話がしたい
 
 
(冬になるとあたりいちめん雪が降って
それが溶けるまでわたしたちは眠るんだよ)
 
 
淡い異国の街で産まれたことになって
優しいだけのホットケーキを食べる
毎日こうしていれば

もっとみる

-1212℃の体育館で

すれ違った高校生から嗅いだことのある香水の匂いがした、
わたしも文化祭でバンドを組んで歌いたかった、100人に1人くらいは知ってるような曲を歌って、イントロが鳴った瞬間に顔を上げた数人のひとのこと、仲良くはならないまま特別にしたかった、
特別だと思ってほしかった。
わたしのしたかったは全部、後悔でも憧憬でもなくて渇望です、
冬の空気に触れた肌の感想なんかよりずっと、ずっと、喉が乾いています。
 

もっとみる

どれだけ泣いても海はできません

突然、わけのわからないことで死んでしまう以外に、あたしがきみを泣かせる方法なんてあるの。
 
 
きみが死ぬことをかなしむために生きているのではなくてあたしが死ぬことをきみにかなしんでほしいから生きているだけだって、気づいてしまった日の海が穏やかに凪いでいる。 
本物の灯台を見たことがないってこと、誰にも言えないまま皮膚はゆっくりと乾いていく。
それなのにお腹の中の海にぽつんと建った灯台はやけに鮮

もっとみる
1104回目の朝はあのカフェでモーニングを食べようね

1104回目の朝はあのカフェでモーニングを食べようね

 
逃避を幸福と呼ぶのをやめたくて、夜な夜なナイフを研ぐことだけが日課になる。
  
 
刺したいひとたちはみんなみんなあたしのことを知らない、だからまだ太陽は昇らないでほしい、なのにいつも不躾に空は明るくなって、あたしは終点に近づいていくから、降りる駅が決まっていないことに焦りだす。
 
 
 
自分が乗る列車のことを環状運転だと思っているひととは多分仲良くなれない、
仲良くなりたくないの間違い

もっとみる

まだころしてないだけ

蹴らなかったガードレールはどうせわたしが蹴ったって曲がりも歪みもしないガードレールで、だから蹴らなかったわけじゃないけど、だから蹴らなくてもよかった。

(怒らないで、)
意味のないものを排除したとき、わたしの庭は更地になる、
(焦らないで、)
寝転がって部屋の隅の埃を見つけたとき、死神だけがわたしを抱きしめたがる、
(祈らないで、)
はつ恋のひと以外を信仰したとき、わたしはつまらない罪人になる、

もっとみる

冷えた水と1014錠目のサプリ

 
好きなひとと暮らすようになれば家の中でもかわいくいることをもう少し楽しめるようになるだろうか、
お気に入りの自分でいることは自分の機嫌を取る方法のひとつでもあるのに、どこにも行かないのにメイクするのもすぐに食べ物をこぼしたりどこかへ引っ掛けたりするくせに好きな洋服を着るのも、それはそれでMPが削れていくから難しい、
歯を磨いたりお風呂に入るのさえ億劫なの、わたしだけじゃないって教えてくれるイン

もっとみる

金木犀は永遠の香り

 
死ぬタイミングを間違えなければ永遠になれるから焦らなくていいよ、
永遠が君のかたちになることはないけれど、君が永遠のかたちになることはできるから焦ることないよ。
 
 
永遠は、世界一可愛くて世界一嫌いなあの子のかたちともまったく似ておらず、液体のふりをしてふくよかな土のなかに決して染み込まずに寝そべっている。
金木犀の木の下に埋まっているのは死体ではなくて永遠で、だから代替できない香りがする

もっとみる