どれだけ泣いても海はできません

突然、わけのわからないことで死んでしまう以外に、あたしがきみを泣かせる方法なんてあるの。
 
 
きみが死ぬことをかなしむために生きているのではなくてあたしが死ぬことをきみにかなしんでほしいから生きているだけだって、気づいてしまった日の海が穏やかに凪いでいる。 
本物の灯台を見たことがないってこと、誰にも言えないまま皮膚はゆっくりと乾いていく。
それなのにお腹の中の海にぽつんと建った灯台はやけに鮮烈なんだねって、
唯一のきみにそう言われるためだけに内緒にしている、別に誰に知られたって波のひとつも立ちやしない、くだらない、あたしだけの秘密たちへ。
 
 
涙の中でも泳げますか、生きられますか、
海がどこにでもあることを知っているから、海のない街で今日も丸まって深いところに沈んでみたりできるんですか、
それとも、生活に追われて、海の瞬きを忘れてしまったのですか。
 
熱帯魚みたいに鮮やかな服を着ていれば誰かが水槽で飼ってくれるかもしれない、と、誰も飼ってくれないことが分かっているから安心して冗談ばかりぽこぽこと吐いています、
きみにも誰にも飼われたいと思ったことなどありません、
そんなことになるくらいならあのクジラに飲み込まれてしまえ、と思いながら、クジラの胃袋を食い破る夢ばかり見ています、
悪夢を見た朝、泣いたことは、ありますか。






生活になるし、だからそのうち詩になります。ありがとうございます。