大海明日香

愛と生と性とふしぎを詩だの短歌だのにする人

大海明日香

愛と生と性とふしぎを詩だの短歌だのにする人

マガジン

  • 深夜、堕落したブルーライト、ぼくら勝手に孤独になって輪廻。

    散文詩/自由詩まとめ。

  • そらをとべないぼくたちの

    雑記/エッセイ まとめ。

最近の記事

アンガーマネジメント

  終わらないで (ぜんぶ終わってしまえ)       夕暮れが嫌いなのは同族嫌悪で、カップラーメンは星になる。 3分待っても消えない怒りはこのまま一生残るのかもしれないけれど、簡単にわたしの言うことを聞くような感情はこんな世界ではどうせ生きていられない、     淘汰、 わたしを殺そうとする獣とわたしだけが適応する地獄、 眠りたくないことと起きたくないことは少しも同じじゃないのに、紺色のカーテン、 ベッドルームはいつも夜みたい、 好きなぬいぐるみだけを集めて動物園を作りた

    • 319羽目の名前もない鳥よ

      沈みかけのままずっと漂っている船みたいな家を出てから生活が自分の腕の中にふらっとやってきてくれたような気がして、 どうか離れていかないでねと抱きしめたり世話を焼いたりしてるあいだに時間が流れていってしまうね、 最近はずっと、近頃読んでもいないのによだかの星のことばかり思い出すよ、 よだかにも、鳥たちにも、太陽にも、星にも、誰にもなれないような、誰のことも分からないような物語、 だけどきっと、どこかにわたしがいるんだろうなと思う物語、 童話を書きたかった、わたしはあなたを救えな

      • あくまのこ

        心臓にまで染み込んでいる煙草の匂いが未だにどんな匂いか分からない、わたしは獣じゃない、かといって魔女でもない、 いつか魔女にあったとき、その甘い香りでそのことにきっと気づいてしまう、それがかなしい。     無花果をゆっくり食べる心臓に甘い匂いが染み込むように     指の先にまで流れている激情の炎のことを血液と言うのなら、わたしはやっぱり悪魔の子なのかもしれなかった、それならそのほうがずっとよかった。 あのひとは魂ごと差し出してもなにも叶えてくれない、ならせめて、わたしと

        • ひとりとひとりのふたりぐらし

          いっちょ前に健やかなふりをして白湯を飲むところから1日は始まる、 100円ショップで100円じゃなかったキラキラのマグカップは大きさもちょうど良くて、レンジに入れても大丈夫だから気に入っている。 イチゴ柄のパジャマを引きずったままねだると、こいびとが食べていたピーナツクリームのコッペパンを3分の1くらいちぎって渡してくれた。 やわらかい甘さが心地いい、このあいだ食べた紅茶味のフレンチトースト、おいしかったな。また買いにいこう。 ぼーっと考え事ばかりしているから、カフェオレに

        アンガーマネジメント

        マガジン

        • 深夜、堕落したブルーライト、ぼくら勝手に孤独になって輪廻。
          207本
        • そらをとべないぼくたちの
          146本

        記事

          生まれ変わったらバンドを組もう

            電波が悪くて時々 ギタリストが演奏を止める サブスクってビスケットみたいで 美味しそう 軽くて あたしも月500円 払ってくれるひとがいれば それなりの愛をあげるのに それなりの生活で それなりに生きていくのに それなりに足りる愛を     穴の空いたバケツを テープで止める日々に 嫌気がさしたら バケツをかぶって歌いたい 反響する自分の声だけ聞いてたら 今日はよく眠れる気がする 魔法陣をいくつ描いても 喚べない悪魔の名前を忘れたい     生まれ変わったらバンドを組

          生まれ変わったらバンドを組もう

          0205個目のセーブポイント

          雪が降ってるね、降るたびに言ってるけどさ、雪が降ることをもう喜べなくなって哀しいね。 でも雪がとけたら春が来るって、それだけはずっと忘れないでいたいね、 別に好きじゃない春、特別じゃない春、わたしのものにならない春が。     上手に話もできないのに、上手に書くこともできなかったら、上手に詩にしてしまえなかったら、わたしの胸のなかの水はそのうち淀んで濁って生き物の住めない場所になってしまうんじゃないかと怖くなる。 天気が良くないと大抵調子も良くなくて、自分の機嫌をとるために

          0205個目のセーブポイント

          思い出せない花の蜜の味

            ひらく   とじる   心臓のあまいかおりがする 血液のにがいかおりがする   記憶は血管を流れるから 怪我をするたび さらさら滲み出ていく どうでもいいことから順番に どうでもいいことは わたしのことがどうでもよくて 忘れたいことは わたしのことをくるしめたいから わたしが記憶をしまうとき 罰として 窓のない部屋に放り込んだから       ひらく   とじる     心臓は 帰り道に千切ったはなびらに似ている 花占いをはじめたひとは きっとその日 いやなことが

          思い出せない花の蜜の味

          1月18日の承認欲求

          自分の声を嫌いになりそうだったら朗読をしたり歌をうたってみたりするし、自分のへたくそな字を嫌いだから手書きで自己顕示欲を満たしてみたりする、 反骨精神の塊みたいな性分とは反対にこころもからだもぽんこつのがらくたみたいな造りになっちゃって、でもわたしは精工で完璧で傷ひとつない高級なおもちゃよりぽんこつのがらくたみたいなおもちゃが好きだよ、 今日も信号は自分の前でばかり点滅するような気がするし、靴擦れした足はまだぜんぜん痛いけど、 だいじょうぶ、お洒落な美容室で髪を切ったり、

          1月18日の承認欲求

          雪解け水のシロップ

            幸福の重さを上手に測れない 体重計は壊れていてほしい はじめていくカフェの小さなテーブルに飾られた もっと小さなシェットランドシープドッグに 知らない街の写真を見せて ここが故郷なのと ずっと嘘の話がしたい     (冬になるとあたりいちめん雪が降って それが溶けるまでわたしたちは眠るんだよ)     淡い異国の街で産まれたことになって 優しいだけのホットケーキを食べる 毎日こうしていれば シロップ漬けのくだものみたいに こころまで柔らかくなれるだろうか 柔らかいままでい

          雪解け水のシロップ

          -1212℃の体育館で

          すれ違った高校生から嗅いだことのある香水の匂いがした、 わたしも文化祭でバンドを組んで歌いたかった、100人に1人くらいは知ってるような曲を歌って、イントロが鳴った瞬間に顔を上げた数人のひとのこと、仲良くはならないまま特別にしたかった、 特別だと思ってほしかった。 わたしのしたかったは全部、後悔でも憧憬でもなくて渇望です、 冬の空気に触れた肌の感想なんかよりずっと、ずっと、喉が乾いています。     最近は年明けのお引っ越しのためになんとか生活をしています、 荷造りは全然進ん

          -1212℃の体育館で

          どれだけ泣いても海はできません

          突然、わけのわからないことで死んでしまう以外に、あたしがきみを泣かせる方法なんてあるの。     きみが死ぬことをかなしむために生きているのではなくてあたしが死ぬことをきみにかなしんでほしいから生きているだけだって、気づいてしまった日の海が穏やかに凪いでいる。  本物の灯台を見たことがないってこと、誰にも言えないまま皮膚はゆっくりと乾いていく。 それなのにお腹の中の海にぽつんと建った灯台はやけに鮮烈なんだねって、 唯一のきみにそう言われるためだけに内緒にしている、別に誰に知ら

          どれだけ泣いても海はできません

          1104回目の朝はあのカフェでモーニングを食べようね

            逃避を幸福と呼ぶのをやめたくて、夜な夜なナイフを研ぐことだけが日課になる。      刺したいひとたちはみんなみんなあたしのことを知らない、だからまだ太陽は昇らないでほしい、なのにいつも不躾に空は明るくなって、あたしは終点に近づいていくから、降りる駅が決まっていないことに焦りだす。       自分が乗る列車のことを環状運転だと思っているひととは多分仲良くなれない、 仲良くなりたくないの間違いでしょって、笑ってくれる、あたしが仲良くなりたかったひと、 世界には、好きなひと

          1104回目の朝はあのカフェでモーニングを食べようね

          まだころしてないだけ

          蹴らなかったガードレールはどうせわたしが蹴ったって曲がりも歪みもしないガードレールで、だから蹴らなかったわけじゃないけど、だから蹴らなくてもよかった。 (怒らないで、) 意味のないものを排除したとき、わたしの庭は更地になる、 (焦らないで、) 寝転がって部屋の隅の埃を見つけたとき、死神だけがわたしを抱きしめたがる、 (祈らないで、) はつ恋のひと以外を信仰したとき、わたしはつまらない罪人になる、 (泣かないで、) わたし虹なんか見たくない。 安い靴の底に溜まった泥が落ちな

          まだころしてないだけ

          冷えた水と1014錠目のサプリ

            好きなひとと暮らすようになれば家の中でもかわいくいることをもう少し楽しめるようになるだろうか、 お気に入りの自分でいることは自分の機嫌を取る方法のひとつでもあるのに、どこにも行かないのにメイクするのもすぐに食べ物をこぼしたりどこかへ引っ掛けたりするくせに好きな洋服を着るのも、それはそれでMPが削れていくから難しい、 歯を磨いたりお風呂に入るのさえ億劫なの、わたしだけじゃないって教えてくれるインターネットの中に雨は降らないから、傘をささないことを選べる人が嫌いだって話、しな

          冷えた水と1014錠目のサプリ

          金木犀は永遠の香り

            死ぬタイミングを間違えなければ永遠になれるから焦らなくていいよ、 永遠が君のかたちになることはないけれど、君が永遠のかたちになることはできるから焦ることないよ。     永遠は、世界一可愛くて世界一嫌いなあの子のかたちともまったく似ておらず、液体のふりをしてふくよかな土のなかに決して染み込まずに寝そべっている。 金木犀の木の下に埋まっているのは死体ではなくて永遠で、だから代替できない香りがするのだと思った、 永遠は適温になると土からゆっくりと起き上がって伸びた髪を切る、

          金木犀は永遠の香り

          きみのことなんか918番目に嫌い

            幸福なときはみんなみんな大好きだし、悲しいときはみんなみんなどうでもよくなるし、悔しいときにはみんなみんな嫌いになる。 身勝手なのがあたしだけじゃないって知るにはインターネットは極端で、生温くて居心地が悪いのか、地獄の釜に迷い込んだと絶望すればいいのかわからない。     大袈裟なことばかり話すけど結局大まかにはしあわせではあるのだと思うから、カネコアヤノのかみつきたい、をかわいく口ずさんでみる、 まだ足りないな、ほんと“自ら不幸にはならない”けど、だからといってこんなも

          きみのことなんか918番目に嫌い