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東京装甲少女 EPISODE0 第22話      【 祈り 】


いつ、空襲警報が出されてもおかしくない状況の中



煙が立ち込めるビルの1室で人々は、先頭にいる人物と同様に祈りを捧げていた。



先頭の人物、八雲昴は、火鉢の中で燃え盛る炎に向かい、真言を唱え手を合わせていたが、数刻後、人々の前を静かに向き手を広げ話を始めた。



八雲昴

【 何故日本が
  このような状況になったかわかりますか?
  
  そしてあなたが今このような苦難な状況に
  なってしまっているのは?
 
  それは、あなたの前世から続く不浄の罪
  そうさせているのです。

  前世からの罪は聖なるラファルムの火への
  信仰によってのみ浄化
されます。
  
  さあ、私と共にラファルムの火に祈るのです。  
  さすれば、あなたの魂は解放され、現世、
  その先も神の導きにより
  あなたは救済されるでしょう。  】



新興宗教ソロエスタ教の尊師、八雲昴は人々に、
そう告げるとまた、前を向き祈りだした。


ここ最近、この新興宗教に入信した、
久留和一正がその群衆の中にいた。


久留和一也という名前は本名では無い
本当の名前は捨てた。


久留和は、以前は小さなテキヤの頭
張っていた人物だ。
テキヤとは祭りなどの縁日で屋台を出している
人物たちの事を言う



テキヤという商いは因果なもので、
ヤクザとは違うが、
仁義や筋を通したり、屋台の場所を提供してくれる
庭場の親分さんに対して敬意を払ったり、



指定暴力団ではないので、警察も
特に商売をしていても捕まえるという
わけでもないが、常に見張られていたりと、
一般の商売人か?
と言われればまたそれも違い、
本職の人間かと言われれば、
また違うという、かと言われたら
それも違う謂わばグレーの存在というのが
適度な言葉であった。


祭りの出店というと、華やかで何か、
楽して儲けてそうに見える人も
いるのかもしれないが、
グレーで中間の存在というのは、
中々に肩身が狭く様々な事に目や
気を配れなければならないと行けなく、
何かと気苦労が絶えない商売であったりもする。


また、そこを仕切っている人物というのなら
尚更であり、
普通の人には出来ない、中々難しい労働を
している対価として考えると
堅気の商売の方が遥かに儲かり、
楽な気がするのではないか?と
疑問を持つような、そんな面倒な商売だ。


まあ、彼がこの因果な商売に付いたのにも、
名前を捨てたのにも、
色々な訳があるのだが、そのような彼にも
生活があり、
そして嫁と娘がいるのだが、どっちつかずの
渡り鳥のような単身赴任の生活で、
家には寄り付かず、ストレスによる酒癖の悪さに
嫁と娘はほとほと、呆れて離婚寸前の状態だった。


彼は、大阪府吹田市の出身で、事業で失敗し
多額の借金を背負い、その年末に関西では
身元が割れてしまうので思い切って
東京に夜逃げした。



だが、勢いで東京に来たのはいいが、
特に当てもないので数日経過しても
住む場所も働く場所も見つからない状況だった。



年の瀬も差し迫った大晦日
結局、何も変わらないまま、
年明けは自殺かホームレス、はたまた
犯罪者になるのではと言う
不安と空腹で無一文の中、呆然と行く当てもなく
街をさまよい歩いていた。

そして、いつのまにか賑やかな人や音に誘われ、
少し小ぶりな神社に誘われるように来ていた。


年越しと年明けを祝う幸せな人々
神社の参道は溢れ、それを祝うかの様に
両側に出店が並び、盛況な賑わいであった。


腹が減り、明日の日銭を稼ぐ当てもない久留和に
たこ焼きを焼く音や、やきそばのソースの匂い、
ポテトを揚げる匂いなど、様々な
美味しそうな匂いや音、見た目は目の毒だった。


無一文の久留和は、参道の一角に
沢山の人であふれかえるテントのパイプ椅子
長椅子の席に疲れたので不幸せそうに腰をかけた。



腹が減ったなと思い横に目をやると
そこは丁度、
焼きそばの屋台の後ろ側が見える席だった。


美味しそうなやきそばを、出来上がっては詰め、
出来上がっては詰める
テキヤの高齢そうな店主は冬だというのに
汗を拭いながら働く後ろ姿が見えた。



何気なく、店主の後ろ姿を見ていると
店の前で注文を受け、詰めたものを渡す
という作業もしていたが、
大量の注文をした客に、自分たちと同じ
パイプ椅子の席で待っているお客に
持っていかなければならないなど、
傍から見てもオーバーワークな状況で、
とても一人では捌けない状況だった。



数分が過ぎた頃、
その店主に対して、焼きそばが運ばれてくるのを
首を長くしたお客が、痺れを切らして
長く待たされ。

おっちゃん!やきそばまだかよ?
怒声にも近い声で遠くから叫んできた。


店主は、うるせーなという表情で、
はいよ!と愛想なく蹴散らすように
叫ぶと、
更に齷齪と焼きそばを作り詰めだした。

店主は、焼きそばを詰め終わり後ろを向き、
客の方へ行こうとすると、

前面の客からまた、注文が入り
困ったなと、頭を掻いた。


そんな時、ふと振り帰ると、

自分の後ろに、何をしているでもなく
こちらを見ている暇そうな男
こちらを見ていたのに気づいた。

高齢な店主は久留和を見つけると、



店主
【 おい、そこのあんちゃん!!あんちゃん!!
  そう!!あんただよ
  あんた!!そこの鼻が赤いあんちゃん
  悪いんだけど、
  これそこのお客さんに
  渡して
もらえねーか?  】


と久留和に
ビニール袋に沢山の焼きそばの入った袋を
あの客だと指さして
持って行ってくれとお願いした。


久留和も、忙しそうだな、程度に初め見ていた
だけで、突然、自分にお鉢が回って来て
びっくりしたが、店主の必死さもあり、

頷きながら、ビニール袋を受け取り、
焼きそばを待つ客に渡しにいった。



言われた事を済ました久留和は、
また席に座ろうとしたが、

矢継ぎ早に、あんちゃんこれも!!これもと!!
言われ仕方なしに

何度か代わりに運ぶのを手伝った。



そして、いつまでたっても座れなそうなので、
結局は

なぜか店主の横で待つことになった。


何だかわからない事に巻き込まれているなと
思いながらも

まあ、特段やることもなくフラフラしていた
だけで、腹が減るのを我慢するのにも飽きたので、

店主の指示に従った。


初めこそ、ぎこちなかったが、
ある程度経つと、久留和は配送だけでなく
自然に袋詰めや接客などそつなくこなし、
楽しそうに仕事をしていた

久留和を見て店主は微笑んだ。


結局、
何時間、無我夢中で手伝ったのかも
わからないが、
客が大分引けた頃に、
高齢の店主が


店主
【いやー、悪かったな本当に助かったよ!
 ありがとな!!
 じゃあ、手伝ってくれたコレ
 お礼な!!腹減ったろ?】


と言いながら、

店主は2パックの焼きそばとビール
そして
大入り袋を渡してきた。



久留和は我を忘れて、働いていたが、
自分が腹が減っていたのに
やっと気がついた。


そして会釈して
ガサっと勢いよく受け取ると、


大入り袋の中身も気にせず、      店主の作った焼きそばに

かぶりついた。


うまい、おいしい、と
涙を浮かべながら食べる
姿を見て店主も

たかが焼きそばとビールに大袈裟な野郎だと
笑いながらも、

これには何か事情があるのだろうと察し、

少し、久留和の腹が満たされ、
箸を進めるペースが落ちた所で、

店主は、久留和のこれまでのいきさつを聞いた。



そして、話を聞き終わると、

腕組をして、考えた素振りをすると、

少し間を置き、話始めた。


店主
【  よし!大体の事情はわかった!!
   だが俺はあんたの事気に入った!
   良ければうちに来な!  】

  



と焼きそば屋の店主こと、

このテキヤを束ねる頭の田母神

はそういった。




そういえば、

人間は、水と睡眠さえとっていれば、
たとえ食べものがなかったとしても

2~3週間は生きられるらしい、、、、、、、。


あの時のおやっさんの焼きそば

美味しかったな、、、と昔の事を
思い出しながら


久留和は、

自動遮断壁が降り出れなくなってしまった。

地下鉄に閉じ込められていた。



東京装甲少女 EPISODE0  第23話へ続く、、、、、



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