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本や映画のおはなし

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大好きな本や映画、作品にまつわる「人」のお話。
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2020年10月の記事一覧

カフェでまた、会いましょう。

カフェでまた、会いましょう。

 昨日、ずっと会いたかった韓国人の友人と3か月ぶりに再会した。彼女は同じ年で子育ての真っ最中であり、パートナーが外国人(日本人)。しかも、学生時代に抱いていた夢や経験してきた職業も似通っているという、たくさんの共通点がある女性だ。

 お互い在宅で仕事をしていたり、家事や育児で思うように時間がとれなかったりするものの、やっと先週、韓国・首都圏の「社会的距離の確保」が第1段階に引き下げられ、彼女の息

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『82年生まれ、キム・ジヨン』を語る② 私と夫に生まれた変化

『82年生まれ、キム・ジヨン』を語る② 私と夫に生まれた変化


小説の絶望感を経て、映画で描いた希望 物語の中で、キム・ジヨンは子どもを保育園に預け、再就職を目指すものの、「他人の人格が憑依して思いを語りだす」という言動が増え始め、夫の勧めで精神科を訪れる。小説は男性精神科医のカウンセリングカルテを読むような形で、淡々と物語が進んでいき、丁寧な心理描写や感情的な表現というものがほぼない。

 それはこの夏、4世代にわたる在日コリアン一家の人生を描いたミン・ジ

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『82年生まれ、キム・ジヨン』を語る① 義母と私と母の物語

『82年生まれ、キム・ジヨン』を語る① 義母と私と母の物語

 50年生まれの義母 数か月前、ソウルから車で2時間ほど離れた田舎町にある夫の実家を訪ねた時、義母がこんな話を始めたことがあった。その時私は台所に立ち、義母と一緒に昼食用のチャプチェ(韓国春雨と肉や野菜を甘辛く炒めたもの)を作っていた。

「結婚して国民学校(小学校)の教師を辞めた時、お父さんがソウルで会社に勤めていたんだけど、息子が生まれて1年経った頃、突然、実家に帰って酪農をしようと言いだして

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『魔女の宅急便』のキキが双子の母になっていた

『魔女の宅急便』のキキが双子の母になっていた

 子育てをしていると、すっかり忘れていたはずの子どもの頃の気持ちが、ふと蘇ってくることがある。

 例えば、木からポトンとドングリが落ちてきた時。そのドングリを1つずつ集めている時。落ちている枝を拾い、砂に絵を描く時。ナツメを収穫し、籠にポイっと放り投げる時。

 そうやって夢中になっている息子の背中に、幼い頃の自分を重ねながら、一緒になってワクワクしていると、ハッとする瞬間があるのだ。私は今日ま

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