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OMOI-KOMI 我流の作法 -読書の覚え-

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私の読書の覚えとして、読後感や引用を書き留めたものです。
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2020年11月の記事一覧

複雑系の意匠(中村 量空)

複雑系の意匠(中村 量空)

非線形思考 従来から興味があったので、図書館で目についた「複雑系」関係の本を読んでみました。

 「複雑系」とは、「大辞林(三省堂)」によると

多くの要素からなり、それらが相互に干渉しあって複雑に振る舞う系。
従来の要素還元による分析では捉えることが困難な生命・気象・経済などの現象に見られる。高精度の測定技術、カオス・フラクタルなどの新概念の導入、コンピュータの活用などによって新しい研究対象とな

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ジャック・ウェルチ リーダーシップ4つの条件 (ジェフリー・A・クレイムズ)

ジャック・ウェルチ リーダーシップ4つの条件 (ジェフリー・A・クレイムズ)

計画的撤退(p41より引用) 組織のエネルギーが無駄遣いされたり、不適切な方向に逸らされてしまわないようにする方法の一つは、何かを「やめる」ことだ。具体的には、もはや会社に付加価値をもたらさなくなった業務、プロセス、製品から手を引くことである。ドラッカーは、計画的撤退というコンセプトを世に広めた。組織の簡素化と同じく、これがエネルギーを解放し生産性を向上させるうえで重要な役割を演じている。

 こ

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葉隠入門(三島 由紀夫)

葉隠入門(三島 由紀夫)

「葉隠」と三島由紀夫 「武士道といふは死ぬ事と見付けたり」であまりに有名な「葉隠」です。
 その「葉隠」の三島由紀夫による入門書ということで興味を抱きました。

 本書のプロローグの中で三島は以下のように、自分にとっての「葉隠」を紹介しています。

(p8より引用) ここにただ一つ残る本がある。これこそ山本常朝の「葉隠」である。戦争中から読みだして、いつも自分の机の周辺に置き、以後二十数年間、折に

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漱石日記 (夏目 漱石)

漱石日記 (夏目 漱石)

漱石日記① 今流に言えば漱石Blogです。
 漱石の日記をそのまま収録したものなので当初から作品として意識して書かれたしたものではありません。

 完成された文芸作品とは異なりますから、したがって自ずと感じ方・楽しみ方も変わってきます。
 一冊の中に異なる時期の日記をいくつか採録されていますので、その時々たびごとの生身に近い漱石の姿を知ることができます。

 その中で「修善寺大患日記」は、伊豆修善

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代数を図形で解く(中村義作・阿邊恵一)

代数を図形で解く(中村義作・阿邊恵一)

 掛け算(a×b)は長方形の面積を表わすことを利用して、「(n+m)の2乗=4nm+(n-m)の2乗」がm×nの長方形を4畳半の畳の部屋のように敷き詰めた形で示されると「なるほど図を使ってこういうふうに表現できるのか」と素直に感心してしまいます。

 また、作図の問題としてもポピュラーではありますが、「ある数の平方根」が相似な直角三角形の辺の長さで表わされ、さらに3乗根・4乗根と次々続いて示されて

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夢を育てる(松下 幸之助)

夢を育てる(松下 幸之助)

250年先のゴール 松下幸之助氏の本は、氏があまりにも有名過ぎたこともあり、今まで一冊も読んだことがありませんでした。

 今回手にした本は、例の日本経済新聞の連載「私の履歴書」に二度にわたって掲載された述懐をまとめたものです。ご本人の手によるものなので、全編、飾らない親しみやすい語り口で綴られています。
 もちろん、「んんん・・・なるほど」と唸るようなことばが随所に見られます。

(p36より引

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代表的日本人(内村 鑑三)

代表的日本人(内村 鑑三)

代表的日本人 -西郷隆盛- 日清戦争のころ、内村鑑三が日本文化を西洋社会に紹介するために記した代表作です。

 著作の中では、5人の人物が様々な分野における「代表的日本人」として選ばれています。
 その一番手が「新日本の創設者」としての西郷隆盛です。
 特にこの章は、全著作をとおしてもかなりナショナリズム的な書きぶりが強めになっています。が、ここでは、現代でも通じる(ある意味では西郷でなくても語り

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「わからない」という方法(橋本 治)

「わからない」という方法(橋本 治)

「橋本治」流の記憶 この本も、先に紹介した「〈数学〉を読む」で薦められたものです。

(p157より引用) 暗記とは、「思考を一時的に停止させる忍耐の時間」である。「記憶する」とは、「脳が情報を自分の中に定着させる」なのであって、脳はその作業に全力を費やしている。つまり、脳がそれをしている間、情報収集はストップさせられるのである。

(p157より引用) つまり、情報の収集は無意識を動員してするも

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寺田寅彦随筆集(第1巻)(寺田 寅彦)

寺田寅彦随筆集(第1巻)(寺田 寅彦)

科学者と芸術家 先に読んだ「〈数学〉を読む」という本の中で若手の数学者の方が推薦していたので、遅ればせながら寺田寅彦氏の随筆集を読んで見ました。

 科学者としての目と随筆家としての目という「複眼思考の実践」のようにも思えますし、科学者の目を入力とし随筆家の筆を出力とした「科学と文学のコラボレーション」とも言えます。

 そういった意味では確かに一風変わった感触の著作だと思います。
 特に「芝刈り

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ダ・ヴィンチ・コード(ダン・ブラウン)

ダ・ヴィンチ・コード(ダン・ブラウン)

 最近はこの手の小説はほとんど読まなくなっているのですが、あまりの人気とそれらしいタイトルに惹かれて・・・。
 かといって買うほどでもないかと思い図書館で予約をして待つこと4ヶ月。今頃になって読んだのですが・・・

 やはりこの本は、キリスト教の歴史への興味と造詣がないと面白みは半減以下になるのでしょう。逆に関心がある読者の立場からみるとワクワクドキドキものなのかもしれません。

 小説を面白く感

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考えあう技術(苅谷剛彦・西研)

考えあう技術(苅谷剛彦・西研)

考えることの協創 社会教育学者と哲学者の「考えることの協創」です。

 議論は「教育」を題材にしています。その内容はともかくとして、バックボーンが異なる人同士の思考の展開(拡大と収斂)の様が読んでいて興味深いものです。
 「学校へ行くこと」の意味づけを憲法に謳われているいくつかの権利との関わりで考えてみるといった「新たな思考の切り口の提示」等はとても参考になります。
 また、以下のような技術論と原

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茶の本 (岡倉 覚三)

茶の本 (岡倉 覚三)

 言うまでもなく岡倉覚三(天心)の代表作です。

 解説によると「当時外国にあった著者が、故国恋しさの思いを茶事の物語によせ、英文でニューヨークの1書店から出版したもの」とのこと。

 全体の構成は体系的とは言い難く、それぞれの章の筆も、淡々としているかと思えば第6章(「花」)のようにかなり昂ぶった書きぶりになっているところもあり変化に富んでいます。
 内容は、東洋(日本)文化を西洋社会に理解させ

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教えることの復権(大村はま・苅谷剛彦/夏子)

教えることの復権(大村はま・苅谷剛彦/夏子)

 以前読んだ「知的複眼思考法」の苅谷剛彦氏の関わっている著作ということで手にとりました。

 この本を読むまでは大村はま氏については全く存じ上げなかったのですが、(本書を読んで)自らの信ずる教育方針の実践者としてすばらしい方だと思いました。
 もちろん私は教育関係の専門家ではありませんので、その教育方法等についての是非を判断する資格はありませんが、少なくとも私にとって共感できる点が数多くありました

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ブックガイド〈数学〉を読む (岩波書店編集部)

ブックガイド〈数学〉を読む (岩波書店編集部)

 普通にしていると接する機会のない本を探す「ヒント」になるのではと思い手に取りました。数学者10名の方々の書いた「ブックガイド」です。

 それぞれの方々が今までに強い影響を受けた本を紹介しています。
 学生のころに接した一冊の本が、数学の道に進むきっかけになった方もいます。また、当然のことながら数々の数学の専門書もお勧めとしてあげられています。

 いくらなんでも、さすがにこれから数学の専門書に

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